宗教的使用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/10 07:30 UTC 版)
16世紀初頭にウィリアム・ティンダルが聖書を英語に翻訳した時、ティンダルはヘブライ語原書とギリシャ語原書で見られる単数と複数の区別を残そうとした。したがって、話者や受取人の相対的地位にかかわらず、ティンダルは単数にはthou、複数にはyeを一貫して使用した。そうすることによって、ティンダルはまったくの曖昧さからthouをおそらく守り、元々の意味からははっきりと異なるものとなる厳粛な空気をこの単語に与えることとなった。ティンダルの用法は欽定訳聖書にも引き継がれ、この翻訳のためによく知られ続けた。 現在もイングランド国教会における式文である1662年の『祈祷書』もまた、単数二人称を指し示すためにthouを使用している。 クエーカーは以前theeを普通の代名詞として使用していた。彼らに対するステレオタイプはtheeを主格と対格のどちらでも使うといったものである。これは、ジョージ・フォックスによるクエーカー運動の最初に始まった。フォックスはこれを「plain(平易な)speaking」と呼び、この代名詞と結び付いた平等主義的親しみを残そうと試みた。ほとんどのクエーカー教徒はこの用法を捨てている。その始まりに、クエーカー運動はイングランドの北西部、特にノース・ミッドランズ地域で特に強かった。クエーカーの会話においてtheeが維持されたことはこの歴史と関連しているかもしれない。この「plain speaking」を使用すること選択した現代のクエーカー教徒は、対応する動詞形の変化を伴わずに「thee」をしばしば使用する(例えば、is theeあるいはwas thee)。 末日聖徒イエス・キリスト教会では、敬意の印として、「thee」および「thou」を神に呼びかける時に常に、そして排他的に用いる。 多くのクルアーンの英訳、特にイスラムのアフマディーヤ教団によって編纂されたものでは、thouおよびtheeが使われている。一つの具体例はMaulvi Sher Aliによって翻訳された『The Holy Quran - Arabic Text and English translation』である。 バハイ教の聖典の英訳でも、thouおよびtheeが使われている。20世紀前半の指導者であるショーギ・エフェンデイは、元のアラビア語あるいはペルシア語から文章を翻訳する時に、元の言語における文章の詩的、隠喩的性質の一部を捕えるため、そして文章が神聖であるとする考えを伝えるために、日常会話から幾分消え去った様式を採用した。 『改訂標準訳聖書』の1946年の初版は、神への呼び掛けのためだけに代名詞thouを維持しており、その他の箇所ではyouを使用した。これは欽定訳聖書を知っている者やお祈りで詩篇やそれに似た文章を読む者にはよく知られていたであろう、親しみがあり同時に崇敬の念を表したこの響きを残そうとしたためであった。『新アメリカ標準訳聖書』(1971年)も同じ決断を下したが、1995年の改訂版では覆された。同様に、1989年の『改訂英語聖書』では1970年の『新英語聖書』に現われていたthouの全ての形が失われた。『新改訂標準訳聖書』(1989年)はthouを完全に削除しており、神への呼び掛けのために異なる代名詞を採用することは聖書翻訳におけるthouの使用の当初の意図と不一致かつ相いれないと主張している。神へ呼び掛ける時、「thou」は明確にするためと敬意を表わすためにしばしば大文字で書かれる。ギリシャ語、ヘブライ語、アラム語(聖書の言語)が神に対する呼び掛けを示すための(大文字表記といった)特別な正書法を持たないのに対して、それらの文法は名詞/代名詞の一致を一義的にすることについて英語よりも成功している[要出典]。
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