大雪山国立公園
ゆるやかな起伏が続く登山道の両側は、文字どおり花の海。ミヤマキンポウゲやシナノキンバイ、ハクサンイチゲの大群落がどこまでも続き、その間にトカチフウロやホソバウルップソウなども姿を見せる。
斜面の向こうには目指すトムラウシ山の堂々たるドームがそびえ立っている。感覚が受け入れるものだけに身をゆだねて歩を進めるうちに、人はいつか忘我の時へと誘い込まれてゆく。ここはまさにカムイミンタラ(神々の遊ぶ庭)、天上の世界である。
カムイミンタラ−神々の遊ぶ庭−
大雪山国立公園は、北海道の大屋根といわれる中央高地一帯を含む、日本最大の国立公園である。単一の山群ではなく、大雪火山群、十勝火山群など、複数の山群の集合である。
大雪火山群の主峰旭岳(2,290m)は北海道の最高峰であり、主要山岳はおおむね1,900〜2,200m前後である。山の高さは本州中部の山岳に比べて劣るが、北方にあるため気象条件は厳しく、永久凍土、構造土などの周氷河地形が見られる。また、高山植物群落の規模の大きさと種類の豊かさでも、日本屈指のところである。
大雪火山群北部は旭岳のほか北鎮(ほくちん)岳、白雲(はくうん)岳、凌雲岳、黒岳などが径6kmに達する中央火口を取り巻くように配置している。この火口底や旭岳の山腹からは今も噴気が上がっている。
これらの山のうち、層雲峡(そううんきょう)から黒岳中腹までと、旭岳温泉から姿見の池まではロープウェイやリフトがかかり、また、赤岳中腹の銀泉台まで車道があるので、高山帯の探勝はこの公園の中では最も容易である。
旭岳周辺から南部のトムラウシ山(2,141m)周辺にかけては、高根ヶ原、五色ヶ原、沼ノ原、黄金ヶ原など標高1,800mほどの広大な溶岩台地が広がる。ゆるやかな曲線を描く稜線は残雪をまとい、一帯は場所によって草原やハイマツ群落や岩礫地など多様に変化し、どこも天上的な雰囲気にあふれた世界である。
十勝火山群は大雪火山群の南西に続き、活火山十勝岳(2,077m)を中心として、オプタテシケ山から前富良野(ふらの)岳に至る、多くがいかにも火山らしい円錐形の山を連ねた山群である。南端の富良野岳は、高山植物が特に豊かである。
東大雪の山と湖、山麓の峡谷
然別(しかりべつ)火山群は大雪火山群の南東に位置する小火山群である。この地域で最もよく知られているのは然別湖である。面積3.5km2、周辺を深い森に囲まれ、山々の影を映す湖面はロマンがある。
石狩山群は石狩岳(1,966m)を中心とする非火山性の山群で、急峻な地形の山が多い。
この公園の動物としては、高山帯では寒冷な時代の遺存種であるナキウサギや、国内ではこの山域のみで繁殖が確認されているギンザンマシコ、昆虫ではウスバキチョウ、アサヒヒョウモンなどの希少種を持つ。また、山麓に広がる針葉樹の深い森には、ヒグマ、エゾシカなどの大型種をはじめ、鳥獣が多い。中でもミユビゲラは、国内ではこの地域からごくわずかな記録があるだけの幻の鳥である。
山麓には層雲峡、天人峡などの峡谷がある。特に層雲峡から大函(おおばこ)・小函(こばこ)にかけては、溶結凝灰岩の柱状節理(ちゅうじょうせつり)が延長20km以上にわたってそそり立つ断崖に、流星・銀河など幾筋もの瀑布がかかり、道内有数の景勝地として訪れる人が多い。ここを通過する国道39号線は、大雪国道と名づけられている。天人峡には羽衣の滝がある。層雲峡、旭岳、白金、十勝岳、糠平(ぬかびら)、然別湖畔など温泉地も多く、利用の基地となっている。
ナキウサギ
日本では大雪山や日高山脈など北海道の高山帯だけに生息する小型のウサギ。一部地方では標高400mほどの低地にもすむ。頭胴長12〜15cmくらいで耳は短い。
岩の多いところにすみ、岩の上でよく鳴く。夏のうちに大量の草を岩陰などに蓄え、冬に食べる。ライチョウなどと同様、氷河時代に広く分布していたものが、暖かくなって寒冷な高山帯に取り残されて生きている、遺存種である。
関連リンク
- 大雪山国立公園 (環境省ホームページ)
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