国際原子力機関の動き
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/03 06:02 UTC 版)
「福島第一原子力発電所事故」の記事における「国際原子力機関の動き」の解説
日本国政府は3月12日、本事故について国際原子力機関(IAEA)に対して報告した。これに対し、国際原子力機関の事故・緊急センターは、日本や加盟国と24時間の連絡体制を取ることで、状況把握に努める方針を示し、日本国政府からの要請があれば、技術支援を行う用意があることを表明した。 IAEA事務局長天野之弥は、日本標準時3月13日未明、国際原子力機関の声明としては異例の日本語で、ビデオ声明を発表し、「日本の当局は必要な情報の収集と安全の確保に当たっている」と一定の評価を示したが、引き続き懸念が存在しているとの認識を示し、海水を注入して炉心を冷却するなどの一連の作業が成功することを期待すると述べた。 IAEAには、加盟国から事故に関する問い合わせが殺到し、日本標準時3月14日深夜に緊急説明会を開くことを決めた。 天野事務局長は、14日の記者会見で日本国政府から専門家チームの派遣を要請されたことを明らかにした。また、チェルノブイリ原子力発電所事故のような大事故に発展する可能性については、原子炉の構造が異なること、既に運転を停止している状態であることを指摘し、原子炉建屋の爆発についても核分裂反応によるものではなく、化学現象によるものであって、放射線量も限定的なものだ、と述べた。 しかし3月15日、天野事務局長は、日本国政府からの詳細な情報提供が滞っているため、国際原子力機関の対応が限定されてしまうと述べた。その証左として、国際原子力機関が報道機関にも後れをとっていることを明かし、日本国政府の対応の遅れに不満を示した上で迅速で詳細な情報の提供を求めた。 IAEA加盟国からも、情報提供の遅れに批判が集中した。一方、IAEAは独自に行動を開始し、天野事務局長は日本の地方自治体に配置されているものよりも高精度の国際的放射性物質監視網を持つ包括的核実験禁止条約機構(CTBTO)のティボル・トット事務局長と接見し、放射性物質監視態勢を築く意向を示し、世界保健機関(WHO)、世界気象機関(WMO)、国際連合食糧農業機関(FAO)などとも情報共有する方針も示した。 また、3月16日の記者会見で事故の状況は非常に深刻と強調して述べ、17日にも訪日して第1次情報を直接収集することを明らかにした。 3月30日、IAEAのフローリー事務次長はウィーンの本部で記者会見し、事故を起こした福島第一原発の北西約40kmにあり、避難地域に指定されていなかった福島県飯舘村について、高い濃度の放射性物質が検出されたとして、住民に避難を勧告するよう日本政府に促した。政府は当初、避難の必要性を否定していたが、4月になって飯舘村を計画的避難区域に指定した。 2015年8月31日、IAEAは2012年から世界40か国以上の専門家ら約180人が検証した、事故の最終報告書を発表した。報告書は、日本は「原子力発電は絶対安全である」との思い込みがあったため大事故につながったと批判し、各国に安全第一の文化を持つ重要性を強調している。日本の電力事業者間では、この規模の事故はあり得ないとの思い込みがはびこり、政府規制当局も疑問を持たなかったなど問題点を列挙した。長時間にわたり電力供給が停止することなどを想定外としていたことが事故の主な要因と挙げている。規制当局の責任と権限も不明確でこれも弱点となった。原子力規制委員会が新設されるなどの改革が行われ、緊急事態への備えの強化などへの評価をしている。
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