啓蒙思想の典型として
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「ヴォルテール」の記事における「啓蒙思想の典型として」の解説
同じく百科全書派の哲学者、ドゥニ・ディドロやジャン・ル・ロン・ダランベールなどとは長く良好な交流があったことはよく知られている。小説、詩、戯曲などの文学作品から、日記、多数の手紙(書簡)など、多くの著書を残した。なかでも『歴史哲学』、『寛容論』、『哲学辞典』、『哲学書簡』、『オイディプス』、『カンディード』などが代表作として知られている。 ヴォルテールの思想は啓蒙思想の典型である。彼は、人間の理性を信頼し、自由を信奉した。ヴォルテールの活動として最も有名なものは、腐敗していた教会、キリスト教の悪弊を弾劾し是正することであった。彼はその人生において多くの時間と精力を注ぎ、理神論の立場から教会を批判する。しかし、教会批判のなかで、理神論とは両立できない重大な理論上の問題を引き起こしていることを、イギリスの哲学者アルフレッド・エイヤーは著書『ヴォルテール』のなかで明らかにした。一方で、エイヤーは、そうした指摘をしつつも、「こうすることで彼の精神的勇気への私の感嘆の念は減少したりはしない」と明言している(エイヤーは、ヴォルテールの「知的誠実さ」と「精神的勇気」に「感嘆の念」をもって、敬愛している)。また、エイヤーは、著書『ヴォルテール』のなかで、「全体的な印象として、ヴォルテールの知性、いたずら好き、自信といったものは疑いないところであろう」と述べている。 同じくエイヤーは、同じ著書の中で、ヴォルテールの著した小説の一つである『ザディーグ』(1747年)を『カンディード』(1759年)(日本語訳は岩波書店から)と並べて特筆した。この作品はヴォルテールの著したなかで最も長い「哲学物語」であるが、その真意は不明瞭で読み取りにくいものであった。エイヤーは、ヴォルテールが自身の作品に担わせた哲学的なメッセージを読解しようと試み、ヴォルテールが、ドイツの哲学者であるゴットフリート・ライプニッツの示した「弁別できないものは同一」という「充足理由の原理」を認め、それを援用しながらこの小説に示される特殊な決定論的世界観を表しているとする解釈した。その点を踏まえ、エイヤーは、ヴォルテールが『カンディード』においてライプニッツ哲学が極めて手厳しく風刺されていることを参照し、この12年間のなかでヴォルテールのゴットフリート・ライプニッツに対する評価が否定的な方向へ決定的に変化しているのだろうと、その哲学観の変化を見ている。 学問的にも、思想的にも、イギリスからの大きな影響を受けている。特に哲学的には、ジョン・ロックやアイザック・ニュートンからの影響が大きい。ヴォルテールは、著書『哲学書簡』のなかで、ニュートンが微分積分学において、微分の発見に関してゴットフリート・ライプニッツに、積分の発見に関してヤコブ・ベルヌーイに先んじたとしている。またヴォルテールは、16世紀から17世紀に活躍した哲学者フランシス・ベーコンについて、『ノヴム・オルガヌム』などの著作を念頭に、「経験哲学の祖」として賞賛している。 フランスの数学者ピエール・ルイ・モーペルテュイとは、主に1730年代、ともにニュートンに敬服している者同士として非常に友好的な人間関係を築いていたが、のち、その思想的な立場の違いから敵同士となる。
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