協議会の設置と議論
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2015年9月3日、高尾山古墳保存と都市計画道路(沼津南一色線)整備の両立に関する協議会の第一回会合が開かれた。協議会は都市計画の専門家ら5名の委員から構成され、国土交通省、文化庁の職員がアドバイザーとして参加した。席上、まず沼津市側から高尾山古墳の学術的価値と、沼津南一色線建設の必要性について説明した。続いてこれまで沼津市が古墳と道路の両立案について検討した内容と、古墳保存と道路建設の両立が極めて困難な事情を説明した。このままではどう頑張ってみても古墳保存と道路建設の両立は不可能である。そこで沼津市側から、今まで検討してきた諸条件を見直せば打開策が得られるのでは、との提案があった。条件変更の要点は これまで制限速度60キロメートルとしていたものを、50キロメートルないし40キロメートルとする。 車線を4車線とする計画であったものを、2車線に出来ないか検討する。 上下線を分離する、歩道と車道を分離するなど、複断面の道路とすることを検討する。 これまで古墳の周溝から5メートル以上の間隔を取って道路建設を行う計画であったものを、古墳の価値を損なわない範囲で間隔を狭める等の検討を行う。 の4点であった。結局、次回の協議会では4条件を緩和するとどのような案が考えられるのか沼津市側から提示されることになり、協議会ではそれらの案について検討する運びになった。 第二回の協議会は11月19日に行われた。協議会の席で、まず沼津市側から沼津南一色線の推計交通量から判断して2車線化は困難であると説明があった。続いて高尾山古墳の移築保存について議論された。高尾山古墳は土を突き固める版築工法によって墳丘を築造している。版築で作られた墳丘の移築は日本国内ではこれまで例が無く、技術的にも困難であることが説明された。そして古墳は築造された場所でかつて営まれていた人々の活動を示す物証であり、古墳を移築した場合、その価値が大きく損なわれるとした。更に協議会にアドバイザーとして参加していた文化庁の職員からも移築した古墳は史跡の指定対象外になる、と明言され、古墳の移築は検討対象から外された。 続いて沼津市側から、前回の協議会で提出を約束していた代替案が提示された。代替案は 残存している古墳の墳丘は破壊しない。 古墳が道路部分となってしまう場合は必要な保護措置を取る。 道路建設計画変更に伴う建物補償はできる限り少なくし、特に住居の再移転は可能な限り避ける。 追加の土地買収を少なく抑える。 という条件に基づいて立案された。 代替案は全部で9つ提案された。前述のように沼津南一色線の車線は当初計画通り4車線とされ、また古墳を高架で避ける方法は制限速度を40キロメートルまで落としても墳丘の一部にかかってしまい、実現不可能であることが判明した。一方、制限速度を50キロメートルにすると、道路を古墳の東ないし西側を通す方法や墳丘の下にトンネルを通す方法が取れることがわかった。9つの案は道路を古墳の東ないし西側を通す、古墳の下にトンネルを掘る、そして上下4車線にするか、または2車線の上下線を分離して建設するという各方法の組み合わせで考案された。古墳の東側に道路を通す方法はどうしても古墳の一部に道路を通さざるを得なくなるため、道路の路盤下となる古墳部分を鉄板や発泡スチロールなどで保護した上で道路を通す計画となった。各案を比較してみるとトンネルを用いる方法はどうしても費用が高くなり、また案によっては建物補償の件数が多めとなり、また住居の再移転が必要となる案もあった。 各案はそれぞれ一長一短があると評価された。まず4車線のS字カーブで古墳西側を通す案は、建物補償と再移転が多くなることが難点とされた。また上下線ともトンネルとする案は整備費用が50億円を超えると試算され、費用の高さが問題となった。一方、古墳の東側に道路を通す案では、前述のようにどうしても古墳の一部が道路の路盤の下となってしまうことと、道路建設工事開始前は高尾山古墳の墳丘上に鎮座していて、古墳と深い繋がりがある高尾山穂見神社と熊野神社が道路によって高尾山古墳本体と分断されてしまうことが難点とされた。9つの案について協議会の委員が検討した結果、費用的に安価で建物補償と再移転が比較的少ないことから、4車線の道路で古墳の西側にT字の交差点を設ける方法が有力となった。 2016年(平成28年)2月2日、最終となる第3回目の協議会が開かれた。9つの案のうち、建物補償と再移転が多いことから墳丘西側を4車線のS字カーブで古墳を避ける方法と、費用が高額となることから4車線のトンネル案と上下2車線のトンネル案の、計3案が候補から外された。第二回の協議会と同様、4車線の道路で古墳の西側にT字の交差点を設ける方法を推奨する委員が多かったが、朝夕の通勤ラッシュ時などに交差点があることによって渋滞が発生する可能性があることや、道路が屈曲することによって衝突事故が起きる可能性が指摘された。また交差点に信号を設置する関係上、静岡県の公安委員会の了承も必要とされた。 協議会としては4車線のT字路案を候補として推薦することも考慮したが、この案は前述の交通面での懸念とともに、住宅の再移転が1件出てしまうことも問題視された。委員の中から再移転が必要となる案を協議会の推薦案とすることに強い反対があり、結局、6つの案についてそれぞれの評価をまとめた上で、5名の委員のうち3名が4車線のT字案を推薦案とすることでまとまった。 協議会の提案を受けて、栗原市長は3名の委員が推薦した4車線のT字路案を採用する意向を示し、案の実現のために必要となる県の公安委員会との協議に入った。
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