包括的統制の段階 (1967–1982)
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「社会的市場経済」の記事における「包括的統制の段階 (1967–1982)」の解説
1960年代半ば、民主社会主義による経済政策・社会福祉政策の構想が、経済秩序の形態に影響を与えるという社会的市場経済の第二段階が始まった。このような形態もまた、一般的な意見では社会的市場経済の概念と結びついているとされている。大きな意味をもったのは、1967年の安定化法(ドイツ語版)である。この法律によって、政策転換が起こり、積極的な景気刺激策(ドイツ語版)が行われるようになった。当時の経済大臣であるカール・シラー(ドイツ語版)は、これを「経過政策基本法」と呼び、カルテル法による「秩序政策基本法」を補正するものであるとした。彼はこれを「フライブルク学派の要求とケインズ主義のメッセージを共生させる」と考えていた。実際には、包括的統制(ドイツ語版)というポスト・ケインズ主義(ドイツ語版)的構想によって、景気の不安定性を恒常的に和らげられることになった。この構想は、さしあたり雇用政策的には成功を収めた。完全雇用が復活し、1970年代半ばまで維持されることになった。しかし貨幣の安定性という問題が、ますます注目されるようになった。1970年代のオイルショックは、輸入価格のインフレによって価格上昇圧力を強めた。1970年代以降、経済成長も世界的に冷え込んだ。そのことによって、景気の正確な統制はますます困難になっていった。そうこうしているあいだに、景気の不安定性を完全に沈めようとするこの構想は、ますます時代遅れのものと見なされるようになった。しかしポストケインズ主義的な財政政策による景気刺激策は、現在でも多くの人々にとっては、重大な経済危機(例えば、2007年からの経済危機)という「ケインズ主義的状況」では必要だと考えられている。というのも、マネタリズム的な金融政策とビルト・イン・スタビライザーは、流動性の罠がある状況では限界に行き当たるからである。また安定化法によって決定した、経済バランスをとるのに必要な条件に注視し、魔法の四角形(ドイツ語版)で経済政策を調整するという経済政策上の目標設定は、今日でも変わらずに残り続けている。 1976年の共同決定法(ドイツ語版)では、1952年の経営組織法(ドイツ語版)よりも拡大した共同決定権が導入された。2,000人以上の企業とコンツェルンの場合、出資者の代表者と企業の代表者に対して、これらと対等な権限をもった監査が割りふられるようになった。投票が同数の場合には、(雇用者側が設置した)監査役会長の票によって議決が取られる。共同決定法は、株主だけでなく、従業員の利害をも聞き入れさせることで、労働世界のヒューマニズム化に貢献しなければならない。当初からドイツにおける共同決定は、取引コストを減少させることを目的にしていた。取引コストが企業内において減少するほど、信頼に満ちた共同労働の可能性が高まるが、他方で取引コストが高くなればなるほど、共同労働は、形式的規制と強制措置に頼らなければ可能ではなくなる。長期間にわたる安定的でコンフリクトの少ない労働関係によって、企業は長期間にわたって従業員の教育とスキルアップに投資することができるようになるのである。このことは、ポスト工業社会や知識社会といった非物質的な価値創造が急速に高まるなかで、企業が成功する条件のひとつになっていった。というのも、非物質的な価値創造が依拠しているのは専門知識だからであり、それは簡単には代替できず、その移転をコントロールすることも容易ではないである。同時に企業は、コストのかかる設備投資をさらに多くするよう取り組まなければならない。このことが、オイルショックによって構造転換が生じた時代のなかで、ますドイツの立ち位置を決定するものであった。非物質的生産活動と分業体制は、取引コストを根本的に高めるが、それを持続的に進展させることで、共同決定という制度は実際にもよい結果をもたらした。ユルゲン・シュレンプ(ドイツ語版)によれば、短期間での利潤最大化は、未来に必要な投資をする負担になるので阻止するというドイツモデルのひとつが共同決定なのである。 社会福祉政策において、社会福祉国家のさらなる拡充が生じた。1972年の年金改革によって、自営業者や学生、主婦、農民、障害者を含めた住民の大部分を保証できるようになった。批判者は、この政策が保険料の支払額をさらに低下させ、保証の中身を薄めてしまうと見ている。
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