制式化まで
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/28 16:13 UTC 版)
FCS-3の開発の端緒は、1980年代の五三中期業務見積りから五六中期業務見積りの時期にまでさかのぼる。この時期、海上自衛隊は、初の汎用護衛艦としてはつゆき型(52DD)の整備を進めていたが、その対空戦闘システムは、主として下記のようなサブシステムから構成されていた。 OPS-14対空レーダー OYQ-5戦術情報処理装置 81式射撃指揮装置(FCS-2) シースパローIBPDMS この系譜はその後、OPS-14をOPS-24 3次元レーダーに、OYQ-5をOYQ-6/7に更新したあさぎり型に発展するが、既にこの構成では、特に対空戦闘能力の面で限界があることが明らかになっていた。すなわち、対空レーダーで探知した目標情報を戦術情報処理装置に入力する過程と、戦術情報処理装置での情勢判断・意思決定後に目標情報を射撃指揮装置に入力する過程がオペレータによる手動処理であり、さらに意思決定過程の大部分も人間に頼っていたため、対応時間の短縮が困難となっていた。 FCS-3は、1つのレーダーで捜索と追尾を同時に行うとともに、新世代の戦術情報処理装置との連接に対応することで、これらの問題を克服した新世代の個艦防空システムとして開発された。技術研究本部は1983年より部内研究を開始、昭和61年度より3年に渡って研究試作を行ない、Cバンドで動作するアクティブ・フェーズドアレイ・アンテナを作製して陸上試験を実施した。この陸上試作機は1面の旋回式アンテナを使用しており、試験の便の関係で航空自衛隊の御前崎分屯基地に設置されて試験が行われ、多目標追尾やシークラッターなどのデータが収集された。 その成果をもとに、1990年(平成2年)より実艦への搭載を前提としたアンテナの開発試作を開始し、これを試験艦「あすか」に搭載して、5年間に渡って技術・実用試験が実施された。海上試験では、航空機(F-15J、T-4)を用いた接近・交差運動を行う高機動目標に対する探知追尾性能および多目標追尾性能、曳航標的を用いた小型・低高度目標の探知追尾性能、5インチ砲弾と同一形状のレーダー標的であるTRAP(Target Radar Augmented Projectile)弾を用いた超小型・超音速目標の探知追尾・対処性能を確認した。同艦には短SAMが装備されておらず、ミサイルの実発射までの試験はできなかったが、ミサイル発射信号の送出までの一連のシーケンスが確認された。特に小型・低高度目標の探知追尾性能では予想を上回る好成績を収めたとされる。 そして2000年(平成12年)、00式射撃指揮装置として制式化された。最大捜索距離は200キロ以上、最大追尾目標数は300個程度とされていた。
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