先頭固定競走
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/17 17:32 UTC 版)
2012年のガールズケイリン開始により、従来のルールが男子向けの「先頭固定競走(オリジナル)」となり、新たに女子向けとして「先頭固定競走(インターナショナル)」のルールも設定された。ここでは従来からのオリジナルルールを中心に記述する。 現在行われている競走は先頭固定競走と呼ばれ、スタートから残り1周半付近(ジャンが鳴る地点)までは選手と同じ型の自転車に乗った先頭誘導員(正式には先頭員というが、一般的には誘導員と呼ばれているため、以下、誘導員と表記)が選手の前を走る。選手は、333mないし335mバンクでは残り2周半のBS(バックストレッチ)ライン、400mバンクでは残り2周のHS(ホームストレッチ)ライン、500mバンクでは残り1周半のBSライン、それぞれを切るまで誘導員より前に出ることができない。これは、先頭を走ると風圧の影響を受ける上、後続の選手の動向を把握しにくくなることに配慮した制度である。特に2019年からはこのルールが厳格に適用されるようになり、実際にこれに違反した場合は失格・即日帰郷となるだけでなく、即座にあっせん保留、かつ一定期間あっせん停止の処分が下される。 また、先頭誘導員を内側から抜くことは禁止されている。主導権争いなどでうっかり先行選手が内側から追い抜いてしまった場合は失格となる。 競走で誰も誘導員をかわさなければ最終2コーナーまで誘導する。なお選手たちの発走台と違い、先頭誘導員の発走台にはロック機能は付いていないため、号砲前でもすぐ外れるようになっている。 誘導員は車券の対象ではないため、レースに出走する選手と区別する目的で、紺地に橙色のV型ラインの入ったユニフォームとトランシーバーのスピーカーが付いた ヘルメットカバーを着用する。また、誘導員のスタート位置は選手よりも25m前である。また、不正防止の観点から、誘導員は当日、レースに出走する選手たちと直接接触することがないよう、競輪場ではレースに出走する選手たちとは別の控室とバンクへの入退場口を使用する。 誘導員は大抵、そのレースが開催されている競輪場をホームバンク(練習拠点)とし、レース当日は競走に出走しない選手が行う。誘導員にも競走に応じて選手と同額の手当が支給されるため、収入が少ない成績下位のA級の選手が比較的多く務める。ただ、グランプリやGIレース決勝戦となるとS級のトップレーサー同士での戦いとなるため、誘導員もそれなりのレベルであることが求められることから誘導員はS級選手が務めており、注釈にある通り、レースによって誘導員手当の額が異なっている。通常、特別競輪で優勝歴のあるようなトップレーサーのS級選手が誘導員を務めることは極めて少ないが、地元での開設記念競輪(GIII)の決勝戦などでファンサービスを兼ねて務める例がある。 誘導員の誘導ペースは競走形態に大きく影響を与える。1990年代はラインでの作戦としてイン切りが全盛期であったため、スプリント競走のように超スローペースになることが多かった。しかし2000年代にルールが改正されると誘導ペースが高速化し、早期に誘導員を追い抜くことができなくなったこともあり、一本調子の高速レースに強い大ギアが力を発揮するようになったため、トップクラスの選手の多くが大ギアとなった。ただ上述の通り、2015年よりギア倍数は4未満へと規制されている。 誘導員となるには、誘導員試験に合格し、誘導員資格を得る必要がある。現役の競輪選手であること、かつ誘導員試験において2000mタイムトライアルで2分55秒以内が出せること(選手なら必ず出来る設定)が条件である。但し、誘導員資格の有効期間は2年間であり、資格を継続する場合は2年ごとに試験を受け直しその都度合格することが必要である。一方で、通常の競走で追走義務違反や敢闘精神欠如など悪質な失格をした場合は誘導員資格を取り消されることもあるほか、あっせん停止の処分を受けると1年間の資格停止となることもある。また、選手自らが誘導員資格の取り消しを申請する場合もある。なお、女子選手は男子とは異なる「先頭固定競走インターナショナル」ルールで競走を行っていることから「先頭固定競走オリジナル」ルールに対応できないため誘導員になることはできず、ガールズケイリンでも誘導員は全て男子選手が務めている。 なお、2014年1月より 『KEIRIN EVOLUTION』 として男子による「先頭固定競走インターナショナル」ルールの競走もGIII(開設記念競輪)の最終日に単発の企画レースとして実施されているが、同レースは2019年以降は集中開催となったため、それ以前と比べて実施される回数は大きく減少しており、2020年以降では東京オリンピックとの兼ね合いとコロナ禍の影響もあり休止している。 「先頭固定インターナショナル」ルールについてはこちらを参照のこと。 かつて特別競輪や記念競輪で行われていた3000mを超える長距離戦に値するレースでは、2人の誘導員が誘導していた。その場合、最初の誘導員はジャンが鳴る前の周回でコースを出るが、もう1人の誘導員は、ジャンが鳴り終わる頃まで誘導して、その後コースから去っていた。
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