使用方法と注意点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 22:49 UTC 版)
圧力鍋を用いた調理は基本的に、加熱・加圧・蒸らし・減圧の、計4つの段階がある。加熱して圧力調整用のおもりが蒸気で動き始めるまでの時間が加熱時間、そのあとやや火力を絞って、圧力をかけ続けるのを加圧時間、加熱を終えて放置するのを蒸らし時間と呼ぶことが多い。そして最後の工程が圧力調整弁のおもりを外すなどして、圧力を逃がす減圧作業となる。通常これら4つの工程を足したものが調理時間とされ、キッチンタイマーなどで計りながら調理を進めていく場合と、電気式など自動制御される場合がある。 調理後に弁を操作して減圧を始める際、止まっていた沸騰が圧力の低下とともに再開して蒸気が発生することもあるので、減圧中の弁から噴出する蒸気でやけどしないよう、取り扱いには注意が必要となる。蓋を開ける際には、十分に減圧して圧力を開放できていないと、高温の内容物が蓋ごと上方に噴出して室内に勢いよく飛び散り、高温の蒸気や高温の飛散した食品を体に浴びてやけどしたり、蓋が激しい勢いで体にぶつかって大怪我をする可能性がある。このため、内圧が高い間は蓋を開くハンドルにロックがかかるなどの安全機構が付いている。早く圧力を開放するには鍋に水をかける方法があるが、安全弁から汁などが吹き出す可能性がある。鍋を水につけて冷やす方法もあるが、ステンレス製のものは熱伝導の関係から鍋底などを歪ませる可能性もある。また、鍋と蓋の隙間にあるパッキンは消耗品で、これが劣化すると蒸気が噴出したり蓋が吹き飛ぶ危険性がある。 以上のように圧力鍋の取り扱いには特に注意すべき事項が存在する。日本では鍋一般が家庭用品品質表示法の適用対象となっており雑貨工業品品質表示規程で取扱い上の注意の表示義務が定められているが、特に圧力鍋については表示すべき事項を追加して定めている。 調理の原理上、加圧のために十分な水分と空間(すなわち空気)が鍋の中になければならない。このため、豆類など水分を吸収してふくれるものは入れる量に気をつけなければいけない。日本の雑貨工業品品質表示規程では「なべに三分の二(ただし、豆類にあっては三分の一)以上内容物を入れて使用しない旨」を表示義務としている。また、牛乳のように加熱すると泡立って膜を形成して吹きこぼれやすくなる食材や、カレーやシチューなどの粘性が高い食材、練り物が大きく膨らむおでんなどは、蒸気の通り道を塞いだり、流れを妨げて安全弁の動作を狂わせ、内部の圧力を異常に高くしてしまう危険性があるため、取扱説明書に従った注意が必要である。日本の雑貨工業品品質表示規程では特に「重曹を直接入れる料理をしない旨」と「多量の油を入れて使用しない旨」を表示義務としている。 このほか日本の雑貨工業品品質表示規程では「加熱状態では衝撃を与えない旨」及び「使用中又は使用後は無理にふたを開けない旨」を表示義務としている。 予め蒸気を逃がす弁の清掃などの手入れを行って、常に蒸気の通り抜けを正常に保っておく必要もある。 以上のように危険性もある調理器具であることから、日本国内において販売されている家庭用圧力鍋は消費生活用製品安全法の特定製品(国の定める技術基準への適合をメーカーや輸入業者が保証する製品)に2000年10月から指定されており、PSCマークを付けた製品でなければ日本で販売することはできない。それでも圧力鍋起因の事故が発生しており、2000年以降2009年時点の累計で死者1人、重傷11人、軽傷22人が出ているため、経済産業省は圧力鍋・釜に新たな安全規制を2010年9月に設ける方針とした。
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