リンパマッサージ
リンパマッサージとは?
体内に存在するリンパ液の流れを活性化させることによって、むくみの解消や免疫力などが向上するといわれているマッサージのこと。美容を目的としたエステサロンやマッサージ店で「やさしくなでるような」マッサージとして施術されるものを指すことが多い。店舗によっては、老廃物の排出を促進させるようなデトックス効果をはじめ、肩こりや冷え性の解消、目の下のたるみなど加齢におる顔の症状の改善などが謳われていることもある。
リンパマッサージの効果
「リンパマッサージ」は、もともとは「リンパドレナージ」と呼ばれる医学的なマッサージが元になっているとされている。 通常、医学的に行われる「リンパドレナージ」は、リンパ管切除などのがんの手術によってリンパ管に回収されなくなったリンパ液が、一定の箇所に溜まることによって発生する体のむくみを改善させるために行われる。また、運動による膝の使い過ぎや体重増加、あるいは関節リウマチや痛風などによって引き起こされる「ベーカー嚢腫」に対しても、「リンパドレナージ」を行う場合がある。 「ベーカー嚢腫」は、膝の裏にある関節液を含んだ滑液包が炎症を起こすことによって膨らむ症状で、関節液の分泌量が多くなると滑液包に過剰な関節液が溜まることになる。 このため、該当部位のリンパをマッサージすることによって症状の改善を促す施術である。 なお、「ベーカー嚢腫」へのリンパマッサージは専門的な医療行為であるため、整骨院や接骨院などの病院で実施してもらうことになる。
このような医学的な「リンパドレナージ」の概念を広げ、サロンやエステなどの業界に取り入れられたものが、美容を目的としたいわゆる「リンパマッサージ」と呼ばれるものである。 ちなみに、エステサロンなどではリンパマッサージの効果について、「老廃物を排出しやすくするデトックス効果」や「体の部位のむくみの解消」、「冷え性の改善」、「免疫力アップ」などをかかげている店舗が多い。
また、リンパマッサージが効果を発揮するメカニズムは、単純にリンパ液がより循環しやすくなることでこれらの効果が期待できるとするものや、マッサージによってリンパが活性化することでタンパク質のアルブミンの濃度が高まり、結果として免疫力が高まるとするものなどがある。
リンパマッサージのやり方
エステサロンで行われる、いわゆる「リンパマッサージ」のやり方としては、まずは、リンパ節を特定することから始まる。 代表的なリンパ節としては、鎖骨にある鎖骨リンパ節、脇の下にある腋下リンパ節、足の付け根にある鼠径リンパ節などがある。 次に、リンパの流れには、体の末端から心臓に向かうという方向があるため、リンパが流れる方向に沿ったやり方でマッサージを行っていく。 具体的には、下〜上・外側〜内側という方向で行うのが望ましいとされている。 また、マッサージの仕方としては、強い圧で押すのではなく、やさしくなでる程度の力でゆっくりと行うのが基本とされている。一方で、リンパ浮腫のような症状がある場合には、セルフマッサージは自分の判断で行わないことが推奨されている。 「国立がん研究センター」によるとリンパ浮腫を「予防する」という観点で、特に下記4つが重要であることが明記されている。
・適度な運動は、リンパ浮腫の予防になるため、普段の生活の中でも体を動かすことを心がける
・セルフマッサージは自己判断で行わないで、担当医や看護師に相談する
・椅子に長時間座るときは、脚をのせる台を置いて、脚を高くする
・就寝時、疲れやむくみを感じるときは、腕や脚を少し高くして休む
参考リンク
国立研究開発法人国立がん研究センター:がん情報サービス
リンパマッサージによる死亡事故
2010年にフジテレビ系列で放映された「ホンマでっか!?TV」の番組内にて、首のリンパを両方同時にマッサージすると突然死の危険性があるという内容が、出演していた医療評論家の発言としてあったとされる。ちなみに、消費者庁が平成29年(2017年)に行った調査によれば、「整体」・「カイロプラクティック」・「リラクゼーションマッサージ」などの法的な資格制度がない医業類似行為の手技による施術で発生した事故の情報が、1483件寄せられている。(平成21年9月1日から平成29年3月末までの登録分)。 このなかで、リンパマッサージによって死亡したという事例はないものの、治療期間が1か月以上となる神経・脊髄の損傷等の事故は240件発生している。
参考リンク
消費者庁:法的な資格制度がない医業類似行為の手技による施術は慎重に
リンパマッサージを続けるとどうなる?
多くのエステサロンなどの説明では、リンパマッサージを続けた結果、下記などの効果・効能が期待できるとされている。・リンパの流れが活性化することで、むくみが改善する
・リンパの流れが活性化することで老廃物が排出される。この意味でリンパマッサージを続けるとデトックス効果が期待できる
・マッサージによって血行が良くなり、結果として代謝が改善する
・基礎代謝がよくなることで消費カロリーが増える。これによってダイエット効果(痩せる効果)が期待できる
・肌に直接マッサージが行われることで肌の血行がよくなる。つまりリンパマッサージを続けると肌の状態が改善される
・リンパマッサージを顔に行うことで、目の下のたるみなど加齢による顔の症状が改善する
・マッサージによりリンパの流れが活性化されることで、リンパ液中のアルブミンの量が増え、ナチュラルキラー細胞に作用しその量を増やす
・ナチュラルキラー細胞が増えることによって、リンパマッサージを続けた結果として免疫力が高まる
なお、医学的に施術される「リンパドレナージ」が、「リンパ浮腫」による局所的なむくみの解消に効果的であるということが実証されているのに対して、美容サロンやエステなどで行われる「リンパマッサージ」のやり方や効果は、必ずしも医学的に立証・検証されているものではない場合もあるため、留意が必要であるとされる。
リンパマッサージの資格
リンパマッサージの資格については美容目的と医療目的で資格が大きく異なる。また、医療目的の場合は国家資格の取得が前提となっている場合も多い。 美容やエステのための「リンパマッサージ」の資格としては、民間資格として下記などがある。・オリエンタルリンパドレナージュセラピスト(インターナショナル美容鍼灸協会)
・リンパケアセラピスト(一般財団法人 日本能力開発推進協会)
・リンパリファインセラピスト(国際セラピスト支援振興協会・グローバルボディケア総合学院)
・JBTA認定リンパドレナージュセラピスト(日本美容セラピスト協会)
医療用「リンパドレナージュ」の資格種類としては下記などがある。 なお、資格取得の条件として、医師・正看護師・理学療法士・作業療法士・あん摩マッサージ指圧師などの国家資格の有資格者を対象としているなど、エステでの「リンパマッサージ」の資格とは大きく異なる。
・ICAA リンパドレナージセラピスト
・リンパ浮腫セラピスト
・医療リンパドレナージセラピスト
メンズエステ・メンエスでのリンパマッサージ
男性向けの性的なリラクゼーションマッサージ(メンズエステ。いわゆるメンエス)や「チャイエス」では、オプションとして「リンパマッサージ」というコースが存在することがある。 いわゆる「(男性として)元気になる」マッサージとして説明されることが多く、「性的なマッサージ」・「エロいマッサージ」などの意味と誤解されることもあるが、実際は、鼠径部のリンパ節付近の際どい部分を中心としたマッサージを指すことが多い。 なお、指圧をメインとしたチャイエスなどでは、リンパマッサージについても指圧のようなやり方で行われることがあり、痛い場合もあるので注意が必要である。- リンパマッサージのページへのリンク