バラスト水とは? わかりやすく解説

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バラスト水

読み方:バラストすい
英語:Ballast Water

貨物船が船を安定させる目的で、重しとして積み込む。「バラスト」は「底荷の意味海水積載され目的貨物積み込む際に海中放出される

バラスト水は船が貨物降ろした港で詰まれ、再度貨物を積む港で捨てられる。これによって、本来その付近海域には生息していない外来種持ち込まれ海洋生態系影響を及ぼすことにつながると懸念されている。

東京湾増殖している北米原産貝類ホンビノスガイは、バラスト水によって運ばれたと考えられている。

国際海事機関IMO)ではバラスト水の適切な理について規定したバラスト水管理条約」(BWM条約)を2004年採択したが、批准する国が条約発効要件達しておらず、2010年現在未発効の状態にある。

バラスト‐すい【バラスト水】

読み方:ばらすとすい

積み荷重量合わせて船体安定させるために、船底タンクなどに注入する海水。→バラスト1

[補説] 荷物多くなる排出され荷物少なくなる停泊中の港の海水注入される環境異な海水域からの生物持ち込まれることもあり、生態系の破壊病原菌侵入などが問題となっている。


バラスト水

バラスト水 「バラスト水」による海洋環境への影響懸念されています。バラスト水とは無積載船舶重心安定させるために積み込む海水のことです。船舶は荷を積んでいない状態ではバランス走行性悪くなるなどの問題があるため、船底に「重し」としてバラスト水を積み込み、荷の代わりにするのです。バラスト水の中には水地域の固有の微生物細菌含まれます。そのバラスト水を世界各地排水すれば外来生物などの影響現地生態系崩れてしまう恐れがあるのです。世界では年間100トン上のバラスト水が移動してます。日本にも年間1700トンのバラスト水が外から持ち込まれ、約3億トン世界各国船舶とともに出て行きます
 このバラスト水の排水規制しようとする国際的な動きあります国際海事機関IMO)はバラスト水の規制09建造新造船から段階的に適用する方向調整進めており、いずれはすべての外航船にバラスト水の処理装置搭載することが義務けられるかもしれません。IMOはすでにバラスト水の排水基準定めており、バラスト水1立方メートル中に50マイクロメートル上の生物10以内50マイクロメートル未満10マイクロメートル上の生物は1ミリリットル当たり10個まで、さらにバクテリア数など細かく決めてます。
 船舶の「重し」となるバラスト水は海水なので積み込むのも楽で、荷を積載する港でも簡単に排水できます船舶バランスを取るための「重し」を海水以外の他の物質代替することはコスト面からも利便性からも考えづらく、規制対応するには積み込んだバラスト水に含まれる微生物細菌除去することが必要になります
 このIMO定めた排水基準沿って処理装置開発進めメーカー世界中で相次いでます。日本造船メーカー装置メーカー動きにも注目集まります日本世界有数造船大国であり、将来的には国内造られる船舶処理装置搭載しなければならなくなるからです。現在では日立プラントテクノロジー三菱重工三井造船などが実用化向けた実証試験などを始めてます。また実際に国内船主からバラスト水処理装置受注しているメーカーありますスウェーデンアルファ・ラバルABの子会社アルファ・ラバル東京都港区)はバラスト水処理装置「ピュアバラスト」を世界で48納入受注した実績持ちそのうち4台は日本の船主からだといいます

(掲載日:2009/03/30)

バラスト水

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/25 02:05 UTC 版)

バラスト水(バラストすい、英語: ballast water)とは、船舶バラスト(ballast:脚荷[1]、底荷、船底に積む重し)として用いられる水のこと。 貨物船が空荷で出港するとき、海水が積み込まれ、貨物を積載する港で船外へ排出される。

含まれている水生生物が外来種として生態系に影響を与える問題[2]から、国際条約による規制が進められている。

概要

船舶、特に貨物船は積載貨物などの重量を含めて設計されているため、空荷だと様々な支障が生じる。

  • 遭難の危険:船の重心が上がり、復原性が低下(転覆し易い)し、喫水が下がる(浮いてしまう)ため、横や横に対して不安定になる。また、外力に対する応力強度が低下する。
  • 衝突の危険:喫水が下がると船橋視界が妨げられ、自船周囲の死角域が拡大し小型船が見えなくなる。
  • 推進効率が低下:プロペラが水面近くなるので、軸動力が推進力に変換される効率が下がる。甚だしい場合は空中に露出してしまう。同じ理由でも利きにくくなる。

これらを防ぐため、船内に設けたバラストタンクに海水などを積んで重し代わりとし、船体を安定させる対策が取られている[3]

往路と復路で共に貨物を満載しない限り、バラストは必要となる。タンクに水を積む方法は、古代に使われた石などに比べると、積み降ろしが簡単で保管場所も不要、荷崩れの心配もないため、近代舟運の発達に伴い利用が拡大した。

一般にバラスト水は大型船ほど大量に必要で、例えば17万トンクラスの貨物船の場合、空船時には約5万トンのバラスト水を積載する[4]

また、船種によっても異なり、載貨重量トン数に対するバラストタンク容量は概ね、コンテナ船で30%、原油タンカーは40%、LNGタンカーでは80%に達するという。

ただし、経済価値のないバラスト水を積むことは、船の燃費を考える上ではマイナス要素であり、減らす試みは従来より為されてきた。下記の問題も後押ししノンバラスト船の研究等が進められている。

国際海事機関(IMO)によると、年間約120億トンのバラスト水が世界中を移動していると推定されている。日本は、推定1700万トンのバラスト水が海外から持ち込まれ、逆に3億トンのバラスト水を海外に排出している。

バラストタンク

海水などを注入する二重底になっている船倉をバラストタンク(Ballast tank、脚荷水倉)という[1]

生態系への影響

積み込む港と排出する港が異なるため、バラスト水に含まれる水生生物が多国間を行き来し、地球規模で生態系が撹乱されるなどの問題が生じている。

従来より船底に付着した貝類などが外来種となる例は知られていたが(例えばムラサキイガイ)、バラスト水は浮遊性生物(ヒトデなどの幼生を含む、プランクトン類)を大量に移動させる。また、経済的要請が強い船舶の高速化は、移動先での生存率を上昇させた。

バラスト水由来と見られる外来生物による影響事例として、以下があげられる。

大繁殖により人間社会に不都合が起きた時点で騒ぎとなるが、背景には生態系内のバランス変化などの下地があり、多くの種が関心をひくことなく既に定着している可能性がある。現時点で被害が顕在化していなくとも、今後の気候変動や経済活動の活発化、工業化・都市化による水質汚濁などにより繁殖条件が好転すれば、新たな被害例が生じるおそれは高い。しかし、海洋環境での外来種の研究は陸上に比べて進んでおらず、外来種による在来種への影響の把握も困難である。

規制への取り組み

当初は伝染病リスクとして注目されたが、やがて漁業・工業被害が報告され規制が検討されはじめた。現在は国際条約に基づき沿岸から200カイリ離れた場所でバラスト水を交換することで、当面の対策としている。なお、軍艦や、他国の排他的経済水域(EEZ)を航行しない船舶は適用外。

  • 1973年 IMO会議で、はじめてバラスト水による伝染病蔓延の危険性が指摘された。
  • 1988年 海洋環境保護委員会で、バラスト水被害に関するカナダの報告により、IMOにおけるバラスト水排出規則の具体的な取り組みが始まった。
  • 1997年 IMO総会で、バラスト水の規制・管理のガイドラインを採択。
  • 2004年 IMO会議で、バラスト水を積載する船舶を規制するバラスト水管理条約が採択された。
  • 2009年 新造船に対する、バラスト水処理装置の搭載義務が開始。2016年全面義務化。
バラスト水処理装置に関しては、造船会社などを中心にビジネスチャンスとして参入が図られている。IMOの審査を通過する必要があり、技術面以外でのハードルもある[5]
水不足のオーストラリアに、日本の高度下水処理水の輸出が検討された事がある[6]

脚注

  1. ^ a b 池田勝, 古今(こきん)用語撰」『らん:纜』 1998年 42巻 p.33-38, doi:10.14856/ran.42.0_33、2020年6月19日閲覧。
  2. ^ 船舶バラスト水の問題に対する取り組み 生物多様性センター
  3. ^ 生物分布の拡散―バラスト水問題 笹川平和財団海洋政策研究所
  4. ^ バラスト水問題について 日本船主協会
  5. ^ バラスト水管理条約についての情報 日本海事協会
  6. ^ 下水処理水の海外輸出可能性(バラスト水)検討活動 下水道グローバルセンター

関連項目

外部リンク



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