サルビノリンAの幻覚効果
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/17 14:44 UTC 版)
「サルビア・ディビノラム」の記事における「サルビノリンAの幻覚効果」の解説
アカゲザルを用いた動物実験でサルビノリンAは眼瞼下垂、顔面弛緩を引き起こすことが判明している。またラットにサルビノリンAを投与して5-選択反応時間課題を行わせたところ、モチベーションの低下が見られることも判明している。またラットにおいて、サルビノリンAは短期記憶には影響しないものの、空間記憶、長期記憶、エピソード記憶を損なうことが判明している。そのほかにもサルビノリンAは報酬系の主たるホルモンである細胞外ドーパミンレベルを下げることがラットを用いたin vivo実験において判明している。そしてこのドーパミンレベルの低下がサルビノリンA誘導性神経不安症を誘発していると推定されている。 ヒトにおいてもサルビノリンAは様々な精神作用が報告されている。肯定的な効果と否定的な効果を列記する。 肯定的(ないしは目的とする)効果 リラクゼーションと気分の改善 落ちついた気分になる 強烈だが短時間のサイケデリック感覚 意識の変成 極彩色の光景が見える 幻聴 夢の中にいるような感覚 思考の深化 分離感覚ないしは個人認識、リアリティの喪失 官能性および美的評価能力の向上 浮いている感覚 共感覚 自己肯定感の向上 洞察力の向上 霊的な体験 否定的(ないしは目的としない)効果 体性感覚の喪失 統合失調 取り留めのない思考 精神的疲労感、肉体的疲労感、眠気 めまい イライラ感、不安感、恐怖感、パニック感 神経不安、身体違和感 急性パラノイア 神経運動性の興奮 一時的な発話困難 記憶喪失 運動困難 大量の発汗 寒気や鳥肌 吐き気、嘔吐、腹部不快感 これらの作用はサルビノリンA摂取後1分以内に現れ、15分程度持続する。 このほかにもいわゆる幽体離脱の感覚、特定の方向に押される感覚、体がねじられたり、伸ばされたりする感覚、まわりの風景がマンガのように見える感覚などが報告されている。しかし心拍数の上昇や、血圧の上昇は観察されない。 また近年では動画投稿サイトYouTubeに サルビア・ディビノラムを使用している様子が多数投稿されている。その動画群を分析したところ、65 %が肯定的な効果を得ているのに対し、12 %は否定的な効果を得ていることが判明した。動画を投稿するかどうかは撮影者にゆだねられており、また自分自身の精神的問題をサルビア・ディビノラムの吸入によって解決しようとする利用者は、サルビア・ディビノラムの肯定的な側面を強調しがちであることを考え合わせると、かなりの割合で否定的な効果が'サルビア・ディビノラムによってもたらされていると考えられる。 インターネット上にはサルビア・ディビノラムの危険性を明確に示す科学的データが少ないことを逆手にとって、サルビア・ディビノラムの使用は安全であると主張するサイトも存在する。しかし実際には複数の事故例が報告されている。例としてはサルビア・ディビノラムと大麻の使用歴がある15歳の少年が、急性のパラノイア症状、思考阻害、既視感によって緊急搬送され、その後3日間症状が継続した例やサルビア・ディビノラムの吸入直後に急性パラノイアに襲われた21歳の男性が、病院への緊急搬送中に車両から飛び降りるといった例が報告されている。さらにサルビア・ディビノラムの慢性毒性についての報告例は少ないながらも存在しており、一日あたりサルビア・ディビノラムのタバコを3~5本、4ヶ月程度連用した51歳の白人女性が、消化管の不快感から嘔吐、下痢を訴えたという報告もある。 また一般的にκ-オピオイド受容体アゴニスト系の薬物は依存性が低いものの、サルビノリンA は肯定的効果が摂取量と比例するのに対して、否定的効果が摂取量とあまり比例しないという特徴から、利用者は摂取量を増大させがちであるという指摘もなされている。
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