サルビノリンAの合成
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/17 14:44 UTC 版)
「サルビア・ディビノラム」の記事における「サルビノリンAの合成」の解説
サルビノリンAの化学的全合成は2008年、NozawaらによってWieland-Miescherケトンを出発物質とした20ステップの多段階合成により達成されている。しかしながら多段階の合成であるため、現時点ではサルビア・ディビノラムからのサルビノリンA精製に比べて経済的に優れた方法ではない。ただしκ-オピオイド受容体と相互作用しない部分に官能基を導入し、難代謝性や膜透過性を付与することで、経口摂取で十分な効果が得られるより手軽なサルビノリンA派生物が市場に出回る可能性は存在する。実際、消化管の痛みを解消する目的で経口投与可能なサルビノリンAアナログ(2-O-cinnamoylsalvinorin B)の開発が進んでおり、モデルマウスでの薬効が確認されている。 現在のところサルビノリンAの官能基導入にはサルビア・ディビノラムから精製したサルビノリンAを用いたセミ合成が主流である。そしてサルビノリンAに官能基を導入することで、受容体との親和性が顕著に変化することが判明している。例えばサルビノリンAの22位にエステルを導入することで、通常のκ-オピオイド受容体に対する親和性(Ki = 6.2 ± 2.2 nM)を3倍程度高めることができる(Ki = 2.0 ± 0.3 nM)。またμ-オピオイド受容体ともある程度の親和性(Ki = 711±134 nM)を有する構造も発見されている。このことはサルビノリンAの効果を増大したり、モルヒネのターゲット受容体であるμ-オピオイド受容体を同時に刺激することで新たな幻覚症状を引き起こしたりといったドラッグデザインが可能であることを示唆している。
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