カーメル山の最終的な制圧と火災
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/13 22:20 UTC 版)
「ウェーコ包囲」の記事における「カーメル山の最終的な制圧と火災」の解説
カーメル山の施設裏手に到着したM728戦闘工兵車 教団施設から立ち上る煙 ほぼ完全に炎に包まれた教団施設 焼け落ちたマウント・カーメル・センターの残骸 新たに着任したジャネット・リノ司法長官は、状況が悪化しており子供たちが教団施設内で虐待されているとの報告を受けて、FBI人質救助チームによる急襲制圧の勧告を承認した。リノはクリントン大統領にFBIの主張を通した。1985年4月にアーカンソー州で行なわれた極右武装組織 (The Covenant, the Sword, and the Arm of the Lord) に対する包囲(無期限の封鎖で誰も落命せずに終わった)を思い出して、クリントン大統領はブランチ・ダビディアンに対して同様の戦術を提案した。リノは、FBI人質救助チームが待機にうんざりしている、包囲には週に100万ドルの費用がかかる、ブランチ・ダビディアンはさらに長期間持ちこたえられる、そして児童虐待や集団自殺の可能性が差し迫っている、と反論した。後にクリントンは「最終的には、そうすることが正着だと思うなら君のほうで進めてくれたまえ、と彼女に伝えました」と述懐した。以後の数ヶ月で、ジャネット・リノが最終的なガス攻撃を承認した理由は、コレシュが子供たちを性的に虐待したり赤ちゃんを殴っているという最初の主張(FBI人質救助チームが彼女に語ったものだが、後に同チームは包囲時における児童虐待の証拠を否定した)から、リンダ・トンプソンの「合衆国の組織化されていない民兵」が「コレシュを助けるか彼を攻撃するために」ウェーコに向かっているという主張に変化した。 1993年4月19日に制圧が実施された。ブランチ・ダビディアンは重武装していたので、FBI人質救助チームの武器には50口径ライフルやM728戦闘工兵車(CEV)が含まれていた。CEVは爆発物を使用して教団施設の壁に穴を開け、催涙ガスを送り込み、ブランチ・ダビディアンを傷つけることなく強制的に追い出そうとした。記載された計画では、プレッシャーを高めるために2日にわたってガスの量を増やすことを求めていた。公式には、武装制圧は実施されなかった。武装制圧するつもりはないので車両に発砲しないようブランチ・ダビディアンに伝えるために、拡声器が使用された。FBIによると、人質救助チームの工作員は向けられた銃撃への反撃を許可されていたが、4月19日に連邦捜査官による発砲は無かった。ブランチ・ダビディアン側が幾度か発砲した時、FBI人質救助チームの対応は使っているガスの量を増やしただけだった。 6時間以上経った後、建物を去ったブランチ・ダビディアン信者はおらず、代わりに建物内の地下コンクリートブロック部屋に避難したり、ガスマスクを使用した。正午ごろ、建物の異なる3か所で火災がほぼ同時に発生し、急速に広がった。燃え上がる映像がテレビで生中継された。政府は、この火災がブランチ・ダビディアンによって故意に開始されたとの見解である。ブランチ・ダビディアンの一部生存者は、火災がこの制圧によって偶発的または故意に始まったとの見解である。 火事の間に建物を出たのはわずか9人だった。残りのブランチ・ダビディアン信者は、子供たちを含めて、瓦礫で生き埋めになったか窒息死した。炎が建物を巻き込むにつれて、煙や一酸化炭素の吸入ほかの原因によって大勢が死亡した。FBIによると、スティーブ・シュナイダー(コレシュ一番の側近)がコレシュを射殺し、その後自らを撃って自殺した。全部で76人が死亡した。大量の遺体と武器と弾薬が、地下室の保管庫で発見された。テキサス・レンジャーズの放火捜査官報告書は、居住者の多くが内部からの脱出を拒否したか、脱出が選択肢にならなくなるまで退去を拒否したと仮定している。また、建物西端の破壊工作による構造的な破片がトンネルを通る脱出可能なルートを妨げた可能性についても言及している。火災安全工学の専門家による独立した調査では、教団施設の住民は本人たちが望むなら火災から逃れるのに十分な時間があったと結論づけた。 遺体の検死は、貯蔵室の落下したコンクリートの壁の下で発見された一部の女性と子供が脳挫傷で死亡したことを明らかにした。痙攣死のポーズで固まったように見える子供たちの検死写真はシアン化物中毒と一致するもので、CSガスの燃焼で生じる結果の1つである[信頼性要検証]。検死記録はまた、コレシュを含む少なくとも20人ブランチ・ダビディアンと14歳未満の子供5人が撃たれたことを示している。3歳の幼児は胸を刺されていた。検死官は、これらの死が逃げ道なしで火災に閉じ込められたブランチ・ダビディアンによる慈悲の殺害だと考えた。米司法省特別顧問局 (United States Department of Justice Office of Special Counsel) の専門家は、銃弾による傷の多くは「明白な自殺、合意の処刑(死の幇助)、あと可能性は低いが強制的処刑による自死を裏付けている」と結論づけた。
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