ウサーマ・ビン・ラーディン殺害作戦
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「ウィリアム・マクレイヴン」の記事における「ウサーマ・ビン・ラーディン殺害作戦」の解説
詳細は「ウサーマ・ビン・ラーディンの殺害」を参照 マクレイヴンが対テロ戦争において指揮した特殊作戦の中でも、最大級の戦果を挙げたのが2011年5月2日(アメリカ東部夏時間では5月1日)に実行されたウサーマ・ビン・ラーディン殺害作戦である。 マクレイヴンは同年2月に、当時のレオン・パネッタCIA長官(のちに国防長官)からバージニア州ラングレーのCIA本部に呼び出され、その際にビン・ラーディンが潜伏していたパキスタン・アボッターバードの邸宅に関する情報を知らされるとともに、軍による攻撃作戦の立案を始めたという。 情報を受けたマクレイヴンは、作戦立案担当者やCIAとの検討の結果、3つの作戦案をオバマ大統領や政権首脳に提示した。第1案はB-2ステルス爆撃機あるいはトマホーク巡航ミサイルによりアボッターバードの当該邸宅を空爆する案(報道によれば2000ポンド級の爆弾を32発投下する案)、第2案はヘリコプターを用いてアメリカ軍特殊部隊により急襲する案、第3案はパキスタン軍の協力・支援を得て共同で攻撃する案であった。このうち第3の選択肢であるパキスタン軍との共同作戦案は、パキスタン側にビン・ラーディン側に通ずる者(協力者・内通者)の存在を疑っていた政権首脳の「攻撃目標(ビン・ラーディン)に(パキスタン側が)警告しかねない」との懸念から排除された。次に第1案(空爆案)と第2案(ヘリ急襲案)の比較・検討がなされた。ゲーツ国防長官などは、ヘリによる急襲作戦はリスクが高く、1980年に実行されたイランアメリカ大使館人質事件人質救出作戦が失敗したこと、あるいは1993年のモガディシュの戦闘の際に多数の人的損失が出たことを想起させるため、得策とは言えないとして反対し、第1案を支持した。また、ヘリ急襲案の場合には、万が一作戦が失敗に終わった場合にはパキスタンとの関係悪化も懸念された。しかし、爆撃案では直接戦闘が回避されるため米兵へのリスクは軽減されるものの、万が一ビン・ラーディンの殺害に成功したとしてもその遺体確認が困難になる、爆撃の精度等によっては民間人に多数の死傷者が出る恐れがある、などの欠点が想定された。オバマ大統領は結局第2案を選択し、作戦準備などについてゴーサインを出した。作戦を行うチームにはJSOC隷下の部隊であるDEVGRUから20人程度のSEALが選ばれ、綿密に作戦計画の確認と訓練が行われた。また、戦闘要員の輸送に用いるヘリは、「ナイト・ストーカーズ」の通称で知られる陸軍第160特殊作戦航空連隊が操縦を担当することとなった。作戦決行が最終的に決定されたのは、作戦実行2日前の4月29日(金曜日)のことで、オバマ大統領が最終ブリーフィングを受けてから16時間後にゴーサインを出した。この翌日、オバマ大統領はホワイトハウス記者団との夕食会に向けたリハーサルの合間にマクレイヴンに電話をし、幸運を祈る(=作戦の成功を祈る)旨の言葉をかけたという。 作戦決行時、マクレイヴンは指揮官としてアフガニスタンから部隊の指揮に当たるとともに、オバマ大統領などが状況を見守るホワイトハウスのシチュエーション・ルーム(危機管理室)や、同様にパネッタ長官が状況を見守るCIA本部との中継回線を通じ、政権首脳への状況説明にもあたった。作戦は、ホバリング中のUH-60 ブラックホーク(ステルス改修型)がトラブルを起こして墜落するというトラブルが途中発生したものの、作戦はビン・ラーディンと思われる人物の殺害と遺体の回収(さらには遺体とは別に骨髄も回収した)に成功するとともに、懸念されたパキスタン軍による探知・追跡にもあうことなく終了した。のちに身長など身体的特徴の確認、さらにはDNA型鑑定によりビン・ラーディン本人と確認され、作戦の真のターゲットであるビン・ラーディンの殺害に成功したことが明らかになった。これは、アメリカを中心とする諸国が2001年9月11日の同時多発テロ事件以降展開してきた対テロ戦争の中でも最大級の戦果となった。 この成功もあり、指揮官だったマクレイヴンは一躍時の人となった。タイム誌が選ぶ2011年のパーソン・オブ・ザ・イヤーでは、「抗議活動(デモ)参加者」(The Protesters)に次ぐ次点(runner-up)につけた。
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