アンペール (Ampere, Andre-Marie)
アンペールという人は
フランス、リヨン近郊の裕福な商人の家に生まれる。 青年時代がフランス革命真っ只中であり、父親が恐怖政治の犠牲になる。 正規の学校で学ぶことは一度もなかったが、読書好きで記憶力に優れていたアンペールは家中の本という本を読み漁り、これにより莫大な知識を蓄えた。 少年時代に図書館で「オイラーとベルヌーイの本(ラテン語文の難解な数学書)を貸してほしい」と係員に頼み、係員を驚かせたという逸話もある。 ちなみにラテン語は2,3週間で習得してしまったらしい。
1809年、フランス科学アカデミー会員となり、27歳のとき”賭博の数学的理論に関する考察”を発表して世にでる。 優れた数学的才能の持ち主であったがそれゆえに理解してもらえず、「フランス科学アカデミーで自分の説を支持してくれたのはフーリエただ一人である」だったようだ。
アンペールの主な経歴
1820年、エルステッドの研究情報を耳にし、いち早く電磁気の研究にとりかかった。 エルステッドの実験より、磁力は電線を中心に回転方向に発生するのであれば、ニュートンの作用・反作用の法則より、電流が流れる2本の導体は互いに磁力によって力を及ぼしあわなければならない。 これが”2つの電流の相互作用について”という論文になった。右ねじの法則を決めるためには、電流の方向を決める必要がある。 電流の向きを知る術がない時代にあって、「陽電気が流れる方向を電流の方向とし、磁針の振れによって決定する」とした。 現在の電流の向きがプラスからマイナスに流れるとされているのはこれによる。2本の導体間に働く力は、電流の向きが同じ場合は反発力、電流の向きが異なる場合は吸引力であることを発見する。
1822年、2本の導体間に働く力を数学的に確立する。 導体間に働く力の大きさは相互の電流の積に比例し、導体間の距離に反比例する。
同年、等価磁殻の定理、分子電流の概念を提唱する。 電流により磁界ができて磁針が振れる。磁針の中にも電流が流れているとすれば、電流のみの吸引・反発で考えることができる。 また、円形コイルに電流を流すと棒磁石のように磁極が発生する。ソレノイドの発見である。 棒磁石のなか(分子レベルで)では円形コイルと同じような電流が流れているのではないかと考えたのだが、分子電流の概念は100年後のプランクによる量子論確立まで理解されなかった。
1827年、”実験だけから導かれる電気力学的諸現象の数学的理論”と題した論文を発表する。 土台となっている実験は次の四つである。
- 第一
- 第二
- 第三
直線導体をその長さ方向にだけ動けるようにしておき、この導体に決まった位置から電流が出入りするようにしたとき、この導体には、付近の閉電流からの影響は働かない。
- 第四
三つの円形コイルを用い、円の中心をそろえて三つのコイルを並べ、両外のコイルにそれぞれ逆向きの電流を流したとき、中央のコイルは力学的平衡を保つ。
この四つの実験から、電流の流れている導線の二つの要素の間に働く力の法則を導き出す。マクスウェルの言葉を借りれば「電気学のニュートン」というほどの成果であった。
アンドレ‐マリー・アンペール
いつも心が虚ろな様に見えたアンペールは、いかさま師を信用して大金を失ったり、黒板を消したハンカチで顔を拭いたりと、どうもぼんやりした人であったらしい。 フランス学士院では会員仲間であったナポレオン・ボナパルトだが、あのナポレオンに気がつかないということもあったようだ。 後年はフランス大学視学官を終身務め、フランス科学アカデミーの教授も務めている。
電流の単位・アンペア
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