さよなら運転を巡るトラブル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 04:43 UTC 版)
「さよなら運転」の記事における「さよなら運転を巡るトラブル」の解説
「鉄道ファン#鉄道ファンによる迷惑・犯罪行為」も参照 さよなら運転が開催される際にはファンなどが多く詰めかけるため、多くの鉄道事業者では駅や式典会場において記念品の販売(直接関係ない場所で販売することもある)を行うなど、一つの増収イベントと見なしている向きもある。その一方で沿線や発着駅では、駅員などにより通常を超える警備体制が敷かれることも珍しくない。また駅や沿線において著しい混雑が生じ、日常的に該当路線を利用する人や周辺住民に迷惑が及ぶこともしばしばあり、場合によってはトラブルに発展することも少なくない。 鉄道アナリストの川島令三は、最近は列車が廃止されるときに大騒ぎする「葬式鉄」と呼ばれるファンがいると指摘し、さよなら運転や定期運行のラストランを祭りに参加するような感覚で見送りに行き、良いアングルで写真を撮ろうと線路に近づいて列車を緊急停止させたり、時には周囲や駅員、警備担当者に罵声を浴びせる(いわゆる「罵声大会」)などの迷惑行為を働く者もいると言及しており、実際に鉄道事業者でも対応に苦慮しているとしている。川島自身も2015年の時点で「私自身はトワイライトエクスプレスのラストランを見に行くつもりはない。もう騒ぎは見たくない」と述べている。 こうしたことから近年は、鉄道事業者がさよなら運転などの企画実施を見合わせたり、運行終了日を予定より早める事例も見られるようになった。 2018年の東京メトロ6000系(千代田線)のさよなら運転では、多数の鉄道ファンが詰めかけ、車内で怒号が飛び交うなどの大混乱となった。東京メトロではホーム上にロープを張って乗客の通路を確保し、駅員が集まった鉄道ファンらに分散乗車を促すなど対策を取ったものの、多くのファンが運転台のある先頭車両に詰めかけたことから混乱した。鉄道ファンの一部が一般乗客に対し、罵声を浴びせたり先頭車両への乗車を妨害するなどの行為があった。怪我人こそなかったものの、乗車していた子供が泣き出したり、身の危険を感じた一般乗客が北千住駅付近で車内非常通報装置(非常停止ボタン)を押すという事態にまで至った。東京メトロの担当者は「別れを惜しんでいただくのはありがたいが、安全とマナーを守ってほしい」と語った。 なお、交友社の鉄道雑誌『鉄道ファン』の元編集者で鉄道ジャーナリストの梅原淳は、6000系ラストラン騒動を取り上げたコラムで「混乱はだれが悪いのか。東京地下鉄に改善の余地はあったのか」と書き、「最終的には指示に従わなかった鉄道ファンの責任だ」としながらも、「東京地下鉄が言うほど混雑していない」「線路に落ちて怪我人が出なかっただけでもよしとする」などと述べ、「(終点の)綾瀬駅で混乱を起こさなかった鉄道ファンの態度も褒めたい。車内での怒号については次回の検討課題にするとしよう」とコラムを締めくくっている。 このような事態を受け、東京メトロは2020年の03系(日比谷線)引退時には、イベントやさよなら運転を行わなかった。同社広報部はその理由を「千代田線の6000系電車が引退したとき、多くのお客様で車内やホームが混雑しご迷惑をおかけしたため、今回はイベントの開催を見合わせました」と説明し、「記念グッズの発売も、今のところ予定していません」と述べている。 京都大学大学院都市交通政策技術者で鉄道ライターの伊原薫は、東京メトロ03系の突然の引退について「鉄道ファンよ、恩を仇で返すな」と題したコラムを書き、「鉄道会社がこれまでに鉄道ファンのマナーを理由にイベントを見送り、それを公言することはほとんどなかった。鉄道趣味業界にとって非常に由々しき事態である」と警鐘を鳴らした。伊原はさらに他の鉄道事業者にもこうした流れが広がっていると指摘する。首都圏の鉄道会社で企画していた特別塗装の車両運行が検討段階で中止され、関係者はその理由を「イベントは鉄道会社とファンの信頼関係の上で実施できるが、ルールを守れないファンがいれば不可能となる。鉄道会社の使命である安全運行を脅かす事態が続くなら、厳しい姿勢を取らざるを得ない」と述べたという。伊原はいわゆる「葬式鉄」の暴走行為を「往来を妨害する罪や威力業務妨害に該当する犯罪行為」と厳しく批判した上で、「そんな連中は本物の鉄道ファンではないと言ったところで、鉄道会社や一般人から見たら同じ」「ファンの思いに感謝をもって応えてくれてきた鉄道会社との信頼関係を、鉄道ファンが自ら壊してはならない」と強く訴えている。 加えて2020年の新型コロナウイルス感染症の拡大以降は、さよなら運転による「葬式鉄」の集中が「三密」状態を作ることを回避するため、さよなら運転を行わず予告なく引退するケースが増加している。[要出典]
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