あらすじと著名な場面
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/05/25 23:29 UTC 版)
「エルサレム解放」の記事における「あらすじと著名な場面」の解説
『エルサレム解放』は、1099年の第1回十字軍によるエルサレム奪取に舞台を置き、具体的な描写は史実とかけ離れているものの、キリスト教徒騎士とムスリムとの闘い、キリスト教徒間の不和や後退、そして最終的な勝利が描かれる。第1回十字軍の最も主要な人物たちは登場するが、詩の主要部分は脇筋の恋愛譚であり、その登場人物は、タンクレーディ(ガリラヤ公タンクレード)を除き、すべて想像上の人物である。主要な女性登場人物は3人いるが、いずれもはじめはイスラム教徒であり、キリスト教騎士と恋愛関係に陥り、最後はキリスト教に改宗する。またいずれも積極的な女性で、2人は戦闘に身を投じ、残る1人は魔女である。魔術的な描写も多く、サラセン人側は、まま典型的な異教徒として描かれる。 以下には、もっとも著名で、絵画や音楽等の派生作品に多く取り上げられている場面を中心にあらすじを紹介する。 エルサレムのキリスト教徒の娘ソフロニア(Sofronia)は、ムスリムの王によるキリスト教徒虐殺を防ごうと、無実ながら罪を自首する。恋人オリンド(Olinde)は彼女を助けようと自分こそが罪人であると訴え、2人はお互いを救おうとそれぞれに王に嘆願する。そこへ女戦士クロリンダ(Clorinda)が現れ、2人を救う(カント2)。クロリンダはムスリム軍に加わるが、キリスト教騎士タンクレーディ(Tancredi)と恋に落ちてしまう(カント3)。 アンティオキアの王女エルミニア(Erminia)もまたタンクレーディを愛し、彼を助けるために自分の民を裏切る。しかし、タンクレーディがクロリンダを愛していることを知って嫉妬する。エルミニアはクロリンダの武具を盗み、タンクレーディを探して街を離れるが、クロリンダと間違われてキリスト教兵士から攻撃を受ける。森に逃げた彼女は羊飼いの一家に助けられる(カント6・7)。 夜襲の際、十字軍の塔に火を放ったクロリンダは、誤って恋人タンクレーディに殺されてしまうが、息絶える直前にキリスト教に改宗する(カント12)。エルミニアは後にアルミーダの侍女となるが、イスラム陣営を離れ、キリスト教側に転じる。エルサレム奪還後、タンクレーディが宿敵アルガンテとの決鬪で大きな傷を負うと、エルミニアは自らの髪を切ってこれでその傷を縛り、癒やす(カント19)。 一方、魔女アルミーダは、助けを求める振りをしてキリスト教陣営に入り込み、誘惑により騎士たちを分裂させる。一部の騎士は彼女とともに陣営を離れ、その魔法で動物に変えられてしまう(カント5)。アルミーダは、最強のキリスト教騎士リナルド(英語版)(Rinaldo)を誘拐する。リナルドはベルトルド(Bertoldo)の息子であり、エステ家の創始者とされる。リナルドを殺すつもりだったアルミーダは、彼を愛してしまい、大西洋に浮かぶ魔法の島へ連れ去り、骨抜きにして十字軍のことを忘れさせてしまう(カント14)。 リナルドの友人である2人の騎士カルロ(Carlo)とウバルド(Ubaldo)はゴドフロワ・ド・ブイヨンの命を受け、リナルドを探す。アシュケロンの賢者の助けを得て、二人はアルミーダの秘密の砦を発見し、果敢に攻め入って抱き合うアルミーダとリナルドを見出す。二人がリナルドにダイアモンドの鏡を与え、愛に堕ちた状態を見せると、リナルドは傷心のアルミーダを残して戦場へ戻る。アルミーダは復讐を誓い、愛の砦を破壊して、ガザのサラセン陣営に戻る(カント14〜16)。 リナルドがパレスチナに戻ると、アシュケロンの賢者は彼に楯を与え、その楯にエステ家の先祖や子孫を映し出す。リナルドは戦死したデンマーク王子スヴェンの剣をカルロから受け取り、十字軍に戻る(カント17)。これより先、十字軍が攻城兵器用の材木を切り出すのを阻止しようと、ムスリムの魔術師イスマン(Ismen)は森を魔法で守り、タンクレーディ等キリスト教騎士を撃退した(カント13)。リナルドがこの魔法を破り、攻城兵器が作られ、エルサレムは十字軍によって奪取される(カント18)。 エジプト軍が到着し、エルサレム城外で大規模な戦闘が起こる。アルミーダはリナルドを殺した者と結婚すると宣誓するが、十字軍に立ち向かう者は皆敗れる。アルミーダは自殺を試みるが、リナルドに止められる。リナルドはアルミーダにキリスト教への改宗を懇願し、彼女も受け入れる(カント20)。
※この「あらすじと著名な場面」の解説は、「エルサレム解放」の解説の一部です。
「あらすじと著名な場面」を含む「エルサレム解放」の記事については、「エルサレム解放」の概要を参照ください。
- あらすじと著名な場面のページへのリンク