あらすじと要点解説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/17 08:32 UTC 版)
「ファニー・ヒル」の記事における「あらすじと要点解説」の解説
この小説は、題名と同じファニー・ヒルという名の登場人物をめぐる物語である。彼女は貧しい田舎娘で、貧困のために故郷を離れて街へ出ることを余儀なくされる。都会で騙された彼女は売春宿で働かされることになるが、処女を失う前に、恋に落ちたチャールズという男と連れ立って売春宿を逃げ出す。同棲をはじめて数ヵ月後、チャールズは突然父親によって国外へ送り出されることとなり、ファニーは都会で生き延びるために次の恋人を探さざるをえなくなる。 本作において特筆に値し、革新的であるとさえいえることは、クレランドの筆致が機知と教養に富んでおり、古典文学的な傍白に満ちていることである。また、ファニー自身がロクサーナやモル・フランダーズ(いずれもダニエル・デフォーによる同名のピカレスク小説の女主人公)とは違って悔悟の念を見せないという特色も挙げられる。彼女は売春宿でセックスの手ほどきを受け、搾取されているという自覚は持ちながらも後悔することはない。その上、ファニーは悪女としても振舞ってみせる。娼婦としての彼女は、最低でも貴族階級の裕福な男たちの前にしか姿を現さない。サミュエル・リチャードソンやダニエル・デフォーは屈従を強いられた女たちの物語を過去に書いており、彼らは危険でエロティックな情景が繰り広げられているのだと窺わせるに十分な視覚的描写を用いてはいるが、いずれもヒロインたちに女の喜びを得させるものではなかった。彼らはそうした状況に置かれた女主人公に一切の喜びを与えなかったが、クレランドはそれをやってのけた。
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