あおぞらII
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/10 14:46 UTC 版)
あおぞらII(あおぞらツー)[1]は、近畿日本鉄道(近鉄)が1989年に導入した団体専用車両の愛称である。20100系「あおぞら」の老朽置き換えのため、特急車であった18200系からの改造により初代車両が登場した。
車両形式
18200系
オール2階建て電車であった20100系「あおぞら」は修学旅行列車や団体専用列車に使用されてきたが、老朽化の進行や冷房化が困難であるなどサービス面の陳腐化から置き換えの対象となった。同時期には京都 - 伊勢志摩間の特急(京伊特急)に使用されていた狭幅特急車18200系が特急運用を終了しており、これをベースに1989年に車体の補修と内外装の大幅変更を行い、20100系を代替する新たな団体用車両として「あおぞらII」が登場した[2][3]。
編成は2両編成5本を4両編成2本と2両編成1本に組成変更し、車両番号の変更も行われた[4]。塗装は白をベースにライトブルーの塗装に変更され、白い雲の中に「あおぞらII」と書かれたロゴマークが車両前面と側面に貼られた。貫通扉は幌カバーの設置と窓の下方への拡大が行われ、標識灯はLED化された。4両編成の中間運転台は撤去され、荷物置き場やイベントコーナーに改装されている[2]。
内装は転換クロスシートであるが、座席モケット・化粧板・床面などの内装色はパステルカラーとして1両ごとに茶系・青系で異なるものとされた[2]。座席間には大型の折り畳みテーブルも設けられ、座席を向かい合わせての利用も考慮されている[2]。
車内には音響・映像機器(AV機器)も搭載されている。各車に29インチのカラーモニタテレビとVHSビデオデッキ、音楽用カセットデッキが設けられ、利用客が持参したVHSビデオや音声カセットテープの鑑賞が可能となっている[2]。映像入力端子やAC100V電源も設置されたほか、客室のマイクジャックを利用して音声カセットテープとミキシングすることでカラオケも楽しめるようにされた[5]。
4両編成の中間運転台撤去部分に設けられたイベントコーナーの様子は、モニタテレビにより各車両に中継を流すことが可能となっている[5]。運転台には超小型ビデオカメラが設けられ、モニタテレビで前面・後面展望の様子を映すことが可能である[5]。各車両にはデジタル式の速度計が客室に設置されたほか、和式トイレの増設、冷蔵庫の設置、荷物置き場を4両編成で5箇所配置、このほか記念スタンプ台の設置も行われた[5]。
修学旅行列車や各種団体列車として使用されたが、2005年に12200系「新スナックカー」の改造車である15200系「あおぞらII」に置き換えられ、廃車となった[6]。
18400系
京都 - 伊勢志摩間の京伊特急に使用されていた狭幅特急車18400系「ミニスナックカー」は1997年より廃車が始まったが、このうち第9編成は「あおぞらII」の増備車に改造された。改造では特急マークの撤去、塗装変更などの整備が行われている。18200系と異なりAV機器の設置は行われていない。
2013年の15200系「あおぞらII」増備車(20100系「あおぞら」復刻塗装車)の改造投入により置き換えられ、同年12月に廃車となった[7]。運用終了直前の2013年10月には特急車時代の塗装が復元されていた[8]。
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特急色に復元された18400系(2013年)
15200系

18200系「あおぞらII」の老朽置き換えとサービス向上のため、2005年より12200系「新スナックカー」から改造され、形式も15200系に変更された[9]。2014年以降は15200系同士での置き換えも行われている。
愛称は「あおぞらII」を引き継ぎ、車体塗装も白に水色となった。車内はリクライニングシートとなり、トイレも和式と洋式の併設となった。
18200系の置き換え用として2005年に改造された編成は、4両編成2本と2両編成1本に組成変更されて登場した。2013年には20100系「あおぞら」の塗装を復刻した2両編成1本が増備され、18400系が置き換えられた[6]。2014年には4両編成2本が追加改造され、2005年に改造された15200系4両編成2本が置き換えられた[10]。
2021年からは80000系「ひのとり」の増備で余剰となった12200系の中から2両編成4本が15200系に改造され、従来の15200系4本が置き換えられた[10]。
12200系

80000系「ひのとり」の増備で余剰となった12200系のうち、12249Fは2021年に従来の塗装や設備・車両形式のまま「あおぞらII」に転用された。鉄道ファンからは「スナックカー」と「あおぞら」を掛け合わせて「スナぞら」と通称された[10]。12249Fは2023年に廃車となっている。
出典
- ^ 近鉄の団体専用列車 あおぞらII
- ^ a b c d e 「新しい団体用車両 近鉄18200系あおぞらII」『鉄道ファン』1989年12月号、p.72
- ^ 三好好三『近鉄電車』p.51
- ^ 三木理史「私鉄車両めぐり 146 近畿日本鉄道」『鉄道ピクトリアル』1992年12月臨時増刊号、pp.260-261
- ^ a b c d 「新しい団体用車両 近鉄18200系あおぞらII」『鉄道ファン』1989年12月号、p.73
- ^ a b 「近鉄15200系 復刻塗装車両」『鉄道ファン』2013年9月号、pp.64-65
- ^ 三好好三『近鉄電車』p.52
- ^ 11月30日(土)に引退する18400系車両の引退イベントを実施! 近畿日本鉄道、2013年10月4日
- ^ 「近畿日本鉄道15200系」『鉄道ファン』2006年2月号、pp.114-115
- ^ a b c 近鉄特急53年目の「再デビュー」も 歴代特急最大勢力12200系の改造車たち 「スナぞら」って? 乗りものニュース、2022年7月13日(2025年6月10日閲覧)
参考文献
- 三好好三『近鉄電車 大軌デボ1形から「しまかぜ」「青の交響曲」まで100年余りの電車のすべて』(JTBキャンブックス)、JTBパブリッシング、2016年。ISBN 978-4-533-11435-9
- 「新しい団体用車両 近鉄18200系あおぞらII」『鉄道ファン』1989年12月号、交友社、pp.72-73
- 「近畿日本鉄道15200系」『鉄道ファン』2006年2月号、交友社、pp.114-115
- 「近鉄15200系 復刻塗装車両」『鉄道ファン』2013年9月号、交友社、pp.64-65
- 三木理史「私鉄車両めぐり 146 近畿日本鉄道」『鉄道ピクトリアル』1992年12月臨時増刊号、電気車研究会。pp.227-265
関連項目
外部リンク
- 18200系 あおぞらII - 近畿日本鉄道
あおぞらII
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/26 17:20 UTC 版)
「近鉄18400系電車」の記事における「あおぞらII」の解説
第9編成は1997年(平成9年)に団体専用車に用途変更され、18200系「あおぞらII」と同様の塗装変更を施し、特急標識・方向板差し・側面方向幕を撤去した。18200系と異なり「あおぞらII」のロゴは省略されているが、近鉄公式ホームページで「あおぞらII」であると明言されている。車内は新造以来の偏心回転式リクライニングシートのままであり、転換クロスシートの18200系に対して座席設備では優位であったが、内装も特急車時代のままで維持されており、更新工事は実施されていないオレンジ系の座席モケットで木目調の化粧板であり、デッキも設けられていない。2013年(平成25年)時点の近鉄車両の中でこの組み合わせの内装を備えるのは本編成のみであった。 電算記号は「K09」から「PK09」に変更され、所属検車区も西大寺検車区から明星検車区へ変更された。団体列車として18200系と共用で運用され、繁忙期に6両編成2本での運転を可能とした。2000年(平成12年)の基本編成の全廃以降も残存し、2006年(平成18年)3月の18200系引退以降は15200系の増結用として運用されていた。 2013年(平成25年)11月30日、15200系15204編成 (PN04) の追加投入により引退し、同年12月24日付で廃車された。引退に際し、特急車時代の塗装に復元された。 廃車後は先頭部のみ高安検車区内に保存され、2014年(平成26年)のきんてつ鉄道まつりより一般公開が行われている。なお、この先頭部は復刻塗装の状態のままとなっている。
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