Visual Basic
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/30 08:00 UTC 版)
概要
Visual Basicは、同じくマイクロソフトによって開発されていたQuickBASICを拡張・発展させたものである。
汎用プログラミング言語としてのVB
汎用プログラミング言語としてのVBは、QuickBASIC同様、構造化プログラミングのパラダイムを取り入れたBASICである。1970年代から1980年代にかけて広く使われていた、構造化以前のBASIC(行番号やGOTO文を用いるスタイル)とは大きく異なっている。加えてオブジェクト指向に近い概念も取り入れられている。
VB4でクラスモジュール機構が導入された。VB5でインターフェイスの実装 (Implements) を利用したポリモーフィズムが導入された[3]。ただしバージョン6.0時点では、C++やJavaといった言語と比較して、オブジェクト指向プログラミングのための機能が十分には搭載されておらず、特にクラスの継承(実装継承)に相当する機能がなかった。なお、後継のVB.NETでは完全なクラスベースのオブジェクト指向の機能が搭載された。
統合開発環境としてのVB
統合開発環境 (IDE) としてのVBは、主にグラフィカルユーザーインターフェイス (Graphical User Interface, GUI) を持つアプリケーションソフトウェアを効率的に開発するための視覚的プログラミング環境である。基本的にコンソールアプリケーションの開発は想定されていない[注釈 1]。
VBでは、まずGUIデザイナー画面において視覚的表示されるフォーム(ウィンドウ)上に、ボタンやテキストボックスなど、「コントロール」と呼ばれるあらかじめ用意された各種のGUI部品(ウィジェット)を、マウスによるドラッグ&ドロップなどを用いて配置する。このデザイナー上で確認できる表示結果は、GUIアプリケーションが実際に起動されたときの結果に近いものとなる(WYSIWYG)。次に、それらのGUI部品において、マウスでクリックされたり、テキスト内容などのプロパティが変更されたり、といった「イベント」が発生した場合に実行させたいことをコードで記述していくことでプログラムを作成していく。このスタイルはRapid Application Development (RAD) とも呼ばれる。
VBの特徴は、RADスタイルのプログラミングである、とリリース当時のMSのリーフレットなどではその特徴が解説された。[要出典]
グラフィックスの描画など、GUIを実現するときに付随する定型的な画面管理は各部品の内部で行なわれるため、プログラマが直接記述する必要性が大幅に低減され、記述が煩雑になりがちなGUIを利用したプログラムを、簡単かつ効率的に作成することができる。このプログラミングスタイルは、後発のDelphiやWindows Formsなどでも採用されており、VBはRADの先駆けのひとつであったともいえる。
バージョン1.0ではWindows版の後にMS-DOS版が発売されており、キャラクタベースにもかかわらずコントロールを配置してGUIを構築することができた。ただしキャラクタベースであるため、フォームを使用した場合、グラフィックスの描画は不可能である。
なおMicrosoft Windows用のGUIアプリケーションを開発する場合、もっとも原始的な方法としてC/C++言語でWindows APIを使い、コードベースでメッセージループやウィンドウプロシージャといったすべてのGUI処理を記述していく方法がある。この方法はWindowsのすべての機能にアクセスでき、すべてを制御することができることがメリットだが、その代わりコード記述量は膨大なものとなり、開発効率が悪い。このような作業を隠蔽・省略して、直感的かつ迅速にアプリケーションを開発できるようにしてくれるのが、VBのようなRAD環境である。Microsoft Visual C++ではリソースエディタと呼ばれる、GUIの外観デザインを視覚的に設定できるツールも存在するが、これはRADではない。MFCのフレームワークを利用することで定型的なコードの記述量は減るものの、VBほど直感的にGUIアプリケーションを開発できるようになるわけではない。C/C++は言語仕様や概念自体が難解でVBよりも習得しづらく、エンドユーザー・コンピューティングの観点からもハードルが高い。
コード例
Private Sub Command1_Click()
MsgBox "Hello, World"
End Sub
上記はコマンドボタン"Command1"に関連付けられているイベントハンドラーの例である。対応するコマンドボタンをクリックすると、メッセージボックスに「Hello, World」と表示される。
DirectXのサポート
マルチメディアコンポーネントであるMicrosoft DirectXに関しては、一部のバージョンのみVisual Basic上からでも利用が可能となっている。Visual Basic 6.0ではVB用のCOMタイプ ライブラリを使用することでDirectX 7およびDirectX 8を利用できる[5][6]。 しかし、これらのVB向けDirectXインターフェイスは、Windows Vista以降ではサポートされていない[7]。
注釈
- ^ VBでコンソールアプリケーションを開発する場合、Windows APIを駆使する必要がある[4]。
出典
- ^ a b Support Statement for Visual Basic 6.0 | Microsoft Docs
- ^ 連載:プロフェッショナルVB.NETプログラミング 第1回 さらなる進化を遂げたVisual Basic(3/6) - @IT
- ^ VB Visual Basicの新機能の歴史1
- ^ プログラミング Visual Basicでコンソールプログラムの開発
- ^ Visual Basic で DirectX を使おう | Microsoft Docs
- ^ MSDN Online - DirectX Developer Center - DirectX for Visual Basic | Microsoft Docs
- ^ DirectX Frequently Asked Questions - Windows applications | Microsoft Docs
- ^ Cooper, Alan (1996年4月22日). “Why I am "the father of Visual Basic"”. 2017年3月8日閲覧。
- ^ “Alan Cooper Receiving the Windows Pioneer Award 1994”. YouTube (2010年9月23日). 2020年5月3日閲覧。
- ^ Lohr, Steve (2008). Go To: The Story of the Math Majors, Bridge Players, Engineers, Chess Wizards, Maverick Scientists, and Ico (revised ed.). Basic Books. p. 96. ISBN 9780786730766 . "Cooper ... gained industry recognition as the "Father of Visual Basic." (Microsoft's lawyers once sent Cooper a cease-and-desist order, demanding that he stop using that title. But after Cooper complained, Gates patched things up and even lauded him as a "Windows Pioneer" at an industry conference.)"
- ^ “The Birth of Visual Basic”. 2020年5月3日閲覧。
- ^ Waite, Mitchell (1992). The Waite Group's Visual Basic How-To. Waite Group Press. ISBN 1-878739-09-3, 978-1-878739-09-4, pp. dedication page
- ^ Visual Basic 6.0のWebツール | Microsoft Docs
- ^ Compatibility Between the 32-bit and 64-bit Versions of Office 2010 | Microsoft Docs
- ^ Marc D'Aoust (2000年12月). “Avoid Writing Tedious, Boring Code”. Microsoft. 2008年11月10日閲覧。
- ^ Andrew Troelsen (2008). Pro VB 2008 and the .NET 3.5 Platform: The expert's voice in .NET. Apress. p. 5. ISBN 1-59059-822-9
- ^ Visual Basic 6.0 ファミリ製品のライフ サイクル ガイドライン | Microsoft Docs
- ^ [Visual Studio] 開発ツール対応 OS 一覧 – Cloud and Server Product Japan Blog
- ^ Getting ready for Windows 10 – SDKs, compatibility, bridges | Building Apps for Windows
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