クマゼミ クマゼミの概要

クマゼミ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/08/27 07:52 UTC 版)

クマゼミ
Cryptotympana facialis1.jpg
クマゼミ
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
亜綱 : 有翅昆虫亜綱 Pterygota
: カメムシ目(半翅目) Hemiptera
亜目 : 頚吻亜目 Auchenorrhyncha
下目 : セミ型下目 Cicadomorpha
上科 : セミ上科 Cicadoidea
: セミ科 Cicadidae
亜科 : セミ亜科 Cicadinae
: エゾゼミ族 Tibicenini
: クマゼミ属 Cryptotympana
: クマゼミ C. facialis
学名
Cryptotympana facialis
和名
クマゼミ(熊蝉)
羽化直後のクマゼミ
金色の微毛に覆われた個体

概要

成虫の体長は60-70mmほど。アブラゼミミンミンゼミに比べて頭部の幅が広い。日本産のセミの中ではヤエヤマクマゼミに次いで大きな体をしている。は透明で、付け根付近の翅脈は緑色。背中側は艶のある黒色だが、腹部の中ほどに白い横斑が2つある。また羽化から数日までの個体は、背中側が金色の微毛で覆われる。腹部は白、褐色、黒の組み合わさった体色で、オスの腹部には大きな橙色の腹弁がある。

生態

温暖な地域の平地や低山地に棲息し、都市部の公園街路樹などにも多い。

成虫が発生するのは7月上旬から9月上旬くらいだが、特に7月下旬から8月上旬、大暑から立秋にかけての最も暑い頃が発生のピークである。成虫の寿命は2週間程度とされているが、大阪市立大学の調査では30日生きたメスが捕獲されたという研究結果も報告されている。

オスは腹を激しく縦に振りながら大きな声で鳴く。鳴き声は「シャシャシャ…」や「センセンセン…」などと聞こえるが、その前後には「ジー…」という長い声が入る。また、オスを捕まえると「ジー」とも「ゲー」とも聞こえる大声を出し続けてもがく。羽を羽ばたかせる力も強力で、近くでは「ブーン」という羽の音が聞こえる。手足の力も強く、素手で捕まえようとすると引っ掻き傷をつけられる可能性があるので注意が必要である。

鳴く時間帯は主に日の出から正午までの午前中で、日が照って温度が上がる午前7時頃から午前10時頃まで最も盛んに鳴く。棲息地では朝日が昇ってから昼近くまで、鳴き声が騒がしいほどに響きわたる。鳴き終わるとすぐに別の場所に飛んで移動するという習性があり、朝の時間帯は空中をクマゼミが飛び交っている様子がよく見られる。雨の日や午後はあまり鳴かず、センダンキンモクセイサクラなどの木の幹に止まって樹液を吸う。ただし、曇っていたり、午前中が雨で午後から天候が回復した時などは、時間をスライドさせて鳴くことがある。朝の鳴いている時間帯は高い場所にいるが、昼間は木の根元付近まで降りてきている。またアブラゼミと共存している地域では、午前11時ごろまではクマゼミのみが鳴き、それから後はアブラゼミのみが鳴くという「鳴き分け」が見られる。

クマゼミの幼虫。あちこちに泥が付いているのが確認できる。

幼虫はアブラゼミと似ているが、わずかに大きくて体に艶がなく、頭部や腹部に泥が付くので区別できる。他のセミと比較しても割と高い位置まで登っていって羽化する。樹木だけでなく、民家の外壁やコンクリートブロックをよじ登るなど、幼虫も強い手足の力を持っている。羽化したばかりのクマゼミの成体は白っぽい色をしており、一晩かけて徐々に黒く染まっていく。翌朝には成虫としての身体が出来上がって飛ぶことも可能だが、その時点ではまだ完璧に鳴くことはできない。

幼虫の生態について「湿った所にアブラゼミ、乾いたところにクマゼミの幼虫がいる」との説があるが、京都成安高等学校(現:京都産業大学附属高等学校)生物部と高校教諭・米澤信道による10年間の調査では、「アブラゼミ、クマゼミはそれぞれ好む木、嫌いな木があり(樹種嗜好性)乾湿によってきまるものではない」との立場をとっている。なお、センダンには脱皮殻がまったくつかないという統計結果がある。

ミンミンゼミとの特殊な関係

ミンミンゼミとクマゼミの鳴き声は、実際に人間ので聞く限りは全く違って聞こえる。しかし、この2種のセミの鳴き声のベースとなるはほぼ同じであり、その音をゆっくりと再生すればミンミンゼミの鳴き声に、早く再生すればクマゼミの鳴き声となる。このように両種のセミの鳴き声には共通点があるため、クマゼミとミンミンゼミは互いに棲み分けをしていると言われる。それは、環境による棲み分けの場合もある(城ヶ島では、平坦な台地においてクマゼミが、傾斜地においてミンミンゼミが発生している)が、時期的な棲み分けのほうが主流である。つまり、クマゼミがほぼ終息した頃にミンミンゼミの発生が始まるということである。西日本の、両種が棲息している地域ではおおむねそのような棲み分けが行われている。特に、広島県東広島市の市街地では非常に明確に棲み分けられている。

台湾 台北市2011年9月6日午前11時頃採音。再生時間 42秒、509KB

この音声や映像がうまく視聴できない場合は、Help:音声・動画の再生をご覧ください。

ところで、台湾中国南部の低山帯に棲息するタイワンクマゼミは、クマゼミとミンミンゼミのちょうど中間のような声で鳴く。このセミの鳴き声もまた、ベースとなる音はクマゼミ・ミンミンゼミと全く同じなのである。そしてタイワンクマゼミは、台湾ではタカサゴクマゼミと環境的な棲み分けをしている。タカサゴクマゼミは、日本のクマゼミとよく似た声で鳴くためである。沖縄県石垣島西表島でクマゼミとヤエヤマクマゼミが棲み分けをしているのと同じ原理である。

また、ミンミンゼミとクマゼミはともに午前中によく鳴く種類であるが、このことも両種のセミが時期的な棲み分けを行っている原因の一つである。例えば鹿児島県屋久島ではクマゼミとクロイワツクツクが市街地において完全な時期的棲み分けをしており、クマゼミがほぼいなくなってからクロイワツクツクが発生する傾向があるが、クロイワツクツクもまたクマゼミと同じく午前中によく鳴く種類である。クマゼミとアブラゼミ、もしくはミンミンゼミとアブラゼミの場合でも、クマゼミ・ミンミンゼミが午前中、アブラゼミが午後に鳴いており、棲み分けができている。

なお、ミンミンゼミとクマゼミが同時期に出現し、時期的な棲み分けをしていない地域もある(城ヶ島など)。そのような地域では、クマゼミが午前中に、ミンミンゼミが午後に発声活動を行っている。いずれにせよ、ミンミンゼミとクマゼミが同時に合唱をするケースはほとんどない。

断線被害

近年の光回線の普及で、光ファイバーケーブルを枯れ枝と間違えて産卵し断線するケースが、西日本で数多く報告されている。NTT西日本の事業エリアでは2005年、2006年共に1,000件近いクマゼミ被害が報告されたという。主に家庭への引き込み線が被害に遭うケースが多く、2006年からはケーブルの形状を改良しているという。

分布

クマゼミは南方系のセミであるため、温暖な西日本以南の地域にしか棲息できない。そのため、西日本から東海地方の太平洋側と関東地方南部に多数棲息しているが、山陰地方以北の日本海側と内陸部では冬の寒さによって棲息数が少なくなり、北日本には棲息しない。

分布域は関東南部、東海北陸地方と西日本(近畿中国四国九州南西諸島)である。なお、台湾中国に分布するという報告もあったが、台湾の記録の多くが近縁のタカサゴクマゼミの誤同定で、中国大陸の分布も疑わしい(中国南部の低山帯では、クマゼミとよく似た声で鳴くマンダリンクマゼミというセミも棲息する)。近畿・九州地方(鹿児島市を除く)などの西日本の平地では個体数が多く、都市域でも普通に見られる。

伊豆半島の東海岸では、南部(下田市など)では昔から非常に多いが、北部(熱海市など)ではそれほど多くはない。


  1. ^ 下記外部リンク「米蝉ナール」参照。


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