誤用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/24 18:53 UTC 版)
言語学的意味
言葉の誤用は、個別言語学における通時的変異の一つの重要なファクタである。意味・用法において、他言語との接触を通じ、あるいはそれ自身において誤用が蓄積されて行くことで言語は意味論的に変異して行く。しかし、これと平行するようにも思える発音における変異は、音素の体系を維持した遷移である。音素に結びつく物理的な音は変異するが、その体系は使用集団で協約される[13]。記号が何を指示しているのか、その広がりは通時的には発達したり、縮小したり、ときに消失する。この過程に誤用が存在するにしても、協約が維持されない限りは淘汰される。個別言語は分化・発達において変異するにしても、規則的に体系を維持する。この結果、印欧語においては、音素におけるグリムの法則などが成立したと言える[14]。
参考文献
- 服部四郎・沢田允茂他編『岩波講座哲学 XI・言語』岩波書店 1971年
- ジョシュア・ホワットモー『言語』岩波書店 1960年、1969年
- ジャン・ピアジェ『思考の心理学』みすず書房 1968年、1969年2刷
- C・G・ユング『ユング著作集3・こころの構造』日本教文社 1970年改版、1975年5版
- Encyclopaedia Britannica, 2005 CD Version
関連項目
- ^ 大辞林第二版「誤用」 2009年10月28日閲覧。
- ^ 「IV 言葉・表現・思想」『岩波講座哲学・言語』、pp.137-139。チョムスキーは、個々の言語(個別言語)に共通する「普遍構造」を前提し、これを深層構造と呼ぶ。
- ^ a b 「III 思考と言語」『岩波講座哲学・言語』、p.101。この章の筆者大出晃は、「先天的」ではなく、「本能的」と述べている。
- ^ すなわち、聴覚イメージ等。
- ^ 「IV 言葉・表現・思想」『岩波講座哲学・言語』、p.150。「記号の恣意性」。
- ^ 「IV 言葉・表現・思想」『岩波講座哲学・言語』、p.151。「シニフィエとシニフィアン」。
- ^ a b "Preshool education, - Modern theories". Encyclopaedia Britannica. Jean Piaget は発達の第二段階において、幼児にとって、単語とシンボル(記号)は外的物象と内的な感覚(イメージ)を表象する手段となると主張し、またこの段階で幼児は試行錯誤を繰り返す(言葉と事物、言語と論理における関係の学習と構造の構成)。ここからピアジェは更に、論理的構造の獲得、操作の群的構造の成立と「均衡」の理論を提唱する。参照:ジャン・ピアジェ『思考の心理学』、pp.114-127。
- ^ a b ホワットモー『言語』、p.139。ホワットモーは、「イヌ」とか「ネコ」とは言っていない。「協約を学ぶこと」が彼の述べていることである。「協約」とは、ある集団のなかで、イヌをdogと呼び、catとは呼ばないことである。ホワットモーはフィリピンのタガログ語話者の例で説明している。
- ^ "Nonce word", Encyclopaedia Britannica, ジョイムズ・ジョイスが Finnegans Wakeでこの類の語を使用した。
- ^ C・G・ユング『ユング著作集3』、「ユリシーズ」、pp.135-178。
- ^ 大辞林第二版「性癖」 2009年10月28日閲覧。[リンク切れ]
- ^ "More, Sir Thomas, - Early life and career. Encyclopaedia Britannica. 次のようにブリタニカは説明している: ""Utopia is a Greek name of More's coining, from ou-topos (“no place”); a pun on eu-topos (“good place”) is suggested in a prefatory poem.--""
- ^ ホワットモー『言語』、pp.248-249。
- ^ ホワットモー『言語』、pp.379-381。「言語発達の規則性」。
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