一次聴覚野 一次聴覚野の概要

一次聴覚野

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/08 13:48 UTC 版)

脳: 一次聴覚野
ヒトの脳の、ブロードマンの脳地図における41野と42野。一次聴覚皮質にあたる。
聴覚伝導路が描かれた頭部冠状断面。向かって上、赤色の●が一次聴覚野(図中番号6番)。視床の内側膝状体(図中番号5番)から聴放線を通じて入力を受けている。
名称
日本語 一次聴覚野
英語 Primary auditory cortex
略号 AI, A1
関連情報
Brede Database 階層関係、座標情報
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機能

他の一次感覚皮質領域と同様に、音の感覚はそれが大脳皮質領域に伝わり、処理されて初めて知覚される。この根拠として、脳腫瘍脳梗塞によって皮質領域に障害を負ってしまったと見られる患者の研究や、冷却や局所的な薬物投与によって皮質領域を非活性化する手法を用いた動物実験が存在する。一次聴覚野に損傷を受けた患者は音に対するアウェアネスを失っているが、聴覚脳幹と中脳による皮質下の処理が大部分を占める、音に対する反射的反応の能力は残されている。

聴覚野にあるニューロンは、それぞれの感受性が最も高い周波数に従って構造を成している。聴覚野の一端にあるニューロンは最も低い周波数に反応し、もう一端のニューロンは最も高い周波数に反応する。また、視覚野のように、聴覚野には異なる複数の領域が存在している。それぞれの領域は解剖学的に異なり、それぞれが完全な"周波数のマップ"を持っている。この周波数のマップ (トノトピー・マップ) の目的はよく分かっておらず、聴覚系の感覚上皮 (蝸牛) はその周波数に従って並んでいるという点を反映していると考えられている。聴覚野は聴覚的な"対象"の同定や分離、空間における音源の位置の同定などに関わっている。

ヒト脳機能イメージングによって、この脳領域の周辺部が音高を同定しようとする際に活性化することが分かっている。それぞれの細胞は特定の周波数、またはその周波数の倍数の音(倍音)に対して興奮する。

一次聴覚野はブロードマンの脳地図における41野と42野とおおよそ同一である。この領域は上側頭回の後半分と、外側溝の奥にある横側頭回 (またはヘッシェル回 (Heschl's gyrus))と呼ばれる領域である。

一次聴覚野は側頭葉に位置している。ヒトの大脳皮質には、頭頂葉の前部など他にも音の処理に関わる領域が存在する。動物実験によって、大脳皮質の聴覚野は視床の聴覚領域から上ってくる入力情報を受け取っていることや、この経路が同側と反体側で相互接続されていることが分かっている。また、聴覚野は構造的にも機能的にも異なる領域から成り立っている[1]

聴覚野の領域の数は種によって異なっている。ネズミ目では最近まで数領域しか分かっていなかったが現在はマウスやラットを中心に6〜7領域が同定されている[2]アカゲザルでは15領域にもなる。現時点ではヒトの聴覚野の領域の数、位置、構造はまだよく分かっていない。ヒトの聴覚野について知られていることは、霊長類を含む哺乳類電気生理学的研究からの推測とヒトの脳機能イメージングが基礎になっている。

オーケストラジャズバンドのそれぞれの楽器が同じ音符を演奏した時、それぞれの音の質は異なっているにもかかわらず、演奏家はそれぞれの音符の音高が同一であると認識出来る。聴覚野のニューロンは音高に対して反応することが可能である。マーモセットを用いた研究では、音高特異的なニューロンが一次聴覚野の上外側端付近に存在することが分かっている。この音高特異的な領域はヒトの脳機能イメージング研究でも見つかっている[3][4]

聴覚野は低次領域や耳からの入力を受けるだけでなく、出力も行っている。

ブロードマンの脳地図における41野

この領域は前横側頭領域 (anterior transverse temporal area 41)とも呼ばれる。細胞構築学的には、大脳皮質の側頭部の下位領域で、側頭葉の背側面にある外側溝壁の前横側頭回に存在する。41野は内側をブロードマンの脳地図における52野に接し、外側を42野に接している。(Brodmann-1909)


  1. ^ Cant, NB (Jun 15, 2003). “Parallel auditory pathways: projection patterns of the different neuronal populations in the dorsal and ventral cochlear nuclei”. Brain Res Bull. 60 (5-6): 457-74. doi:10.1016/S0361-9230(03)00050-9. http://www.sciencedirect.com/science?_ob=ArticleURL&_udi=B6SYT-482YJ98-M&_user=1458830&_coverDate=06%2F15%2F2003&_rdoc=1&_fmt=&_orig=search&_sort=d&view=c&_acct=C000052790&_version=1&_urlVersion=0&_userid=1458830&md5=1de05023dc9cefd1b22fcc993ef3d4aa. 
  2. ^ Tsukano, H., Horie, M., Ohga, S., Takahashi, K., Kubota, Y., Hishida, R., Takebayashi, H., Shibuki, K. (2017) "Reconsidering Tonotopic Maps in the Auditory Cortex and Lemniscal Auditory Thalamus in Mice." Front. Neural Circuits 11:14 doi:10.3389/fncir.2017.00014
  3. ^ Bendor, D; Wang, X (2005). “The neuronal representation of pitch in primate auditory cortex.”. Nature 436 (7054): 1161-5. doi:10.1038/nature03867. http://www.nature.com/nature/journal/v436/n7054/full/nature03867.html. 
  4. ^ Zatorre, RJ (2005). “Neuroscience: finding the missing fundamental”. Nature 436 (7054): 1093-4. doi:10.1038/4361093a. http://www.nature.com/nature/journal/v436/n7054/full/4361093a.html. 
  5. ^ Access : : Nature
  6. ^ Klinke, Rainer; Kral, Andrej; Heid, Silvia ; Tillein, Jochen ; Hartmann , Rainer (Sep. 10, 1999). “Recruitment of the auditory cortex in congenitally deaf cats by long-term cochlear electrostimulation”. Science 285 (5434): 1729-33. doi:10.1126/science.285.5434.1729. http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/285/5434/1729. 
  7. ^ Strickland (Winter 2001). “Music and the brain in childhood development”. Childhood Education 78 (2): 100-4. 
  8. ^ Bertrand, O.; Tallon-Baudry, C.; Fischer, C.; and Pernier, J.. Object representation and gamma oscillations. http://biomag2000.hut.fi/papers/0001.pdf. 
  9. ^ Knief, A.; Schulte, M.; Fujiki, N.; and Pantev, C.. Oscillatory Gamma band and Slow brain Activity Evoked by Real and Imaginary Musical Stimuli. 
  10. ^ Abbott, Alison Music, maestro, please! Nature v. 416 no. 6876 (March 7 2002)
  11. ^ Petr Janata et al. The Cortical Topography of Tonal Structures Underlying Western Music. Science, Vol 298, Issue 5601, 2167-2170 , 13 December 2002
  12. ^ Cassel, Topography of projections from the medial prefrontal cortex to the amygdala in the rat. Brain Res Bull. 1986 Sep;17(3):321-33


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