ゴマ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/24 15:10 UTC 版)
食材としてのゴマ
鞘の中に入った種子を食用し、古くから世界各地で食され、香辛料や食用油としても利用されてきた[3]。鞘から取り出し、洗って乾燥させた状態(洗いごま)で食用となるが、生のままでは種皮が固く香りも良くないので、通常は炒ったもの(炒りごま)を食べる。また、剥く、切る(切りごま)、指先でひねり潰す(ひねりごま)、すり鉢で擂り潰す(擂りごま・下記参照)などして、料理の材料や薬味として用いられる。また、伝統的にふりかけに用いられることが多い。味の特徴としては、白ごまはほのかな甘みがあり、黒ごまは香りが強く、コクがある。黄ごま(金ごま、茶ごまとも)は香りがよく、味が濃厚である。炒ると香りがよく引き立ち、料理や菓子の風味付けに使われる[3]。
- 白ごま - 種皮が白いタイプで、風味がおだやかでクセがなく、最も多く食べられている[17]。ごま和えやごま豆腐、練りゴマまど、様々な料理に使われる[3]。脂質が多いため、ごま油の原料にもなっている[17]。
- 黒ごま - 種皮が黒いタイプで、黒い皮にはアントシアニンや鉄分が含まれている[3]。香りが良く、ごま和えのほか、赤飯やおはぎなどに使われる[3]。皮の割合が多く、すって使うことが多い[17]。
- 黄ごま(金ごま) - 種皮が明るい茶色のタイプ。香りが良く、脂質が多いためコクが強い[3]。生産量が少なく、希少価値が高い[17]。
- 炒りごま
- ごまを炒ったもの。炒ることによって香ばしさが出るだけでなく、消化吸収を高められる[17]。炒るときにごまが跳ねるため、ふたをして、焦げないように鍋を動かしながら炒る[17]。
- 擂りごま
- すり鉢を使ってごまを擂り潰したもの。また、少量の擂りごまを得るには「卓上ごま擦り器」のような道具が便利である。ごまが半ば粉砕され、含まれていた油分が滲出してきて、ややしっとりとした感じになる。とくに和食において、白和えをはじめとしてさまざまなレシピで活躍する食材である。
- ごまダレ
- タレの一種で、擂りごまなどを材料に用いたもの。サラダなどに用いる「ごまドレッシング」も類似のものである。
- 練りごま
- ごまを完全に粉砕し、ピーナッツバターのように油分を含んだままペースト状にしたもの。これに植物油や調味料を入れると芝麻醤になる。
- ごま油
- 含油率が約50%以上あるため、搾ってごま油として用いられる。煎りごまを材料に独特の香りを出した焙煎ごま油と、ごまを煎ることなく精製し、ごま本来の旨みを出した太白油・白ごま油(未焙煎ごま油)とに分かれる。調理油・調味料として用いる他、未焙煎のごま油は製菓用油やマッサージオイルなどにも使用する。
葉は青汁の材料として利用されている。ミネラル、ビタミン、食物繊維のほか、抗酸化作用のあるアクテオシドが含まれている[18]。
ゴマの料理、菓子
- 胡麻豆腐 - 精進料理のひとつ。
- おひたし
- 胡麻鯖
- 味醂干し
- 焼餅 - 中国のゴマをまぶしたパン
- ごまだしうどん - 大分県佐伯市の郷土料理
- 担担麺 - 中国四川省成都市の麺料理
- 胡麻団子 - 中国では中空に揚げるものなど。日本では胡麻だれをかけた米の団子など。
- 芝麻糊 - 黒ごま、砂糖、デンプンを湯で溶いた中国、香港などの食品。
- ハルヴァ - 中東の菓子
- ごま菓子 - 鹿児島県喜界島で作られている花良治ゴマを黒砂糖で固めた菓子。
栄養
100 gあたりの栄養価 | |
---|---|
エネルギー | 2,506 kJ (599 kcal) |
18.5 g | |
食物繊維 | 12.6 g |
54.2 g | |
20.3 g | |
ビタミン | |
ビタミンA相当量 |
(0%) 1 µg |
チアミン (B1) |
(43%) 0.49 mg |
リボフラビン (B2) |
(19%) 0.23 mg |
ナイアシン (B3) |
(35%) 5.3 mg |
パントテン酸 (B5) |
(10%) 0.51 mg |
ビタミンB6 |
(49%) 0.64 mg |
葉酸 (B9) |
(38%) 150 µg |
ビタミンE |
(1%) 0.1 mg |
ビタミンK |
(11%) 12 µg |
ミネラル | |
ナトリウム |
(0%) 2 mg |
カリウム |
(9%) 410 mg |
カルシウム |
(120%) 1200 mg |
マグネシウム |
(101%) 360 mg |
リン |
(80%) 560 mg |
鉄分 |
(76%) 9.9 mg |
亜鉛 |
(62%) 5.9 mg |
銅 |
(84%) 1.68 mg |
他の成分 | |
水分 | 1.6 g |
水溶性食物繊維 | 2.5 g |
不溶性食物繊維 | 10.1 g |
ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した[20]。 | |
| |
%はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 |
昔からゴマは栄養価の高い食品として知られ、生薬としても用いられた。
種皮の色によって黒ゴマ、白ゴマ、黄褐色のものは金ゴマなどの品種に分けられるが、栄養的にはほとんど差がない[7][3][21]。黒ゴマの皮の部分にはタンニン系ポリフェノール色素を多く含んでいる。すりゴマや切りゴマにすることでかたい種皮が破られ、より風味が出て美味しく味わえるほかに、栄養の吸収効果を高めるメリットもある[3]。
カルシウム、マグネシウム、鉄、リン、亜鉛等のミネラルが多く含まれ[3]、骨粗しょう症の予防や貧血の改善に効果がある。タンパク質、食物繊維、ナイアシン、ビタミンA・B1・B2・B6・Eや葉酸が豊富に含まれている[3]。ゴマには抗酸化物質として働くリグナンが含まれており、ゴマの代表的なリグナンはセサミンである[3]。ゴマ自体も抗酸化作用を持ち、活性酸素が体内で生成されるのを抑え、肝臓機能を強化し細胞の老化やガン化を抑制する作用がある。種子にはオレイン酸、リノール酸、パルミチン酸などの脂肪油45 - 50%、蛋白質約20%、含水炭素10%、アデニン、コリンなどを含んでいる[7]。
リノール酸は必須脂肪酸の1種で、コレステロールの血管への沈着を抑制し、動脈硬化の予防に役立つと言われている[7][3]。ただし、搾油したものは、そのまま空気に触れさせて放置すると過酸化脂質化して、癌や肝炎、動脈硬化の発病に関与してしまうとも言われている[7]。セサミンは、抗酸化作用によって動脈硬化予防、老化防止や肝機能にもよいといわれている[17][3]。
ごまアレルギー
栄養価が高く健康に良いとされているゴマではあるが、子供を中心にごまアレルギーの調査が報告されている。アトピー性皮膚炎の子供126名を対象に行なった例では、1歳未満の乳児が21%、1歳から1歳6ヶ月未満では44%、2歳・3歳以上では約50%が、ゴマに対して陽性を示す結果となった[9]。
食材以外での利用
ゴマはかつて生薬としても用いた。秋に果実を収穫して種子を採取して日干しにしたものを胡麻(ごま)と称し、栄養価が高いことから滋養強壮になり、切り傷、ただれ、刺し傷の治癒にも使われた[7]。傷や皮膚ただれには、新鮮な胡麻油を患部に塗布すると、傷面の保護や消炎に役立つと言われている[7]。また、耳に小さな虫が入ったときに、綿棒の先に胡麻油を塗って耳に入れると、油の粘りで虫取りに利用できる[7]。
薬膳的には、黒ごまは平性で肝臓や腎臓に作用し、精力を増強して、白髪・耳鳴り・めまいなどを改善するとされる[17]。白ごまは寒性で、便秘を解消するとされる[17]。
- ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Sesamum indicum L. ゴマ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年1月10日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Sesamum orientale L. ゴマ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年1月10日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 143.
- ^ 安本知子「ゴマ種子中のセサミン・セサモリン含有量の変動要因解析と高含有品種の育成および脂質代謝における機能性評価」『作物研究所報告』第9号、農業技術研究機構作物研究所、2008年3月1日、27-61頁、ISSN 13468480、NAID 40016082522、2014年6月10日閲覧。
- ^ “Evidence for cultivation of sesame in the ancient world - Springer”. 2014年6月10日閲覧。
- ^ Linnaeus, Carolus (1753) (ラテン語). Species Plantarum. Holmia[Stockholm]: Laurentius Salvius. p. 634
- ^ a b c d e f g h i j 田中孝治 1995, p. 85.
- ^ a b c 「消費者の部屋通信 平成20年11月発行(ごまやごま油の歴史や利用法)」 農林水産省 2013年10月20日閲覧
- ^ a b c 「古来からの健康食!「ごま」の種類・魅力」(2010年11月12日) All About 2013年10月20日閲覧
- ^ 「特産農作物の生産実績調査」 農林水産省 2017年4月4日閲覧
- ^ 上地義隆 (2009.4). “喜界町における「ごま」生産について”. 特産種苗 No.2: 24–25.
- ^ ごまの故郷マルホン胡麻油・竹本油脂ホームページ(2016年12月8日閲覧)
- ^ 大潟直樹 (2009.4). “ゴマの「ごまぞう」の育成について”. 特産種苗 No.2: 26–27.
- ^ 大潟直樹 (2009.10). “「ごまぞう」につづくセサミンが多いゴマ新品種「ごまえもん」と「ごまひめ」”. 特産種苗 No.5: 20–22.
- ^ a b Food and Agriculture Organization of the United Nations (2012年). “Production Crops: sesame seeds”. 2012年3月19日閲覧。
- ^ Food and Agriculture Organization of the United Nations (2012年). “Food and Agricultural commodities production: Countries by commodity”. 2012年3月19日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i 植木もも子 2010, p. 55.
- ^ 松藤 寛ら (2011). “ゴマ若葉に含まれるポリフェノール成分のラジカル消去活性”. 日本食品科学工学会誌 58: 88–96.
- ^ 文部科学省 「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
- ^ 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2015年版)」
- ^ “黒胡麻、白胡麻、金胡麻の違いはなんですか?”. asken.jp. 2016年8月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年2月26日閲覧。
- ^ 胡麻をする - 語源由来辞典(2017年版)2017年11月7日閲覧
ゴマと同じ種類の言葉
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