代数曲線
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/11 07:13 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動数学における代数曲線(だいすうきょくせん、英: algebraic curve)、特にユークリッド幾何学における平面代数曲線 (plane algebraic curve) は、ユークリッド平面内の点集合であって、各点が適当な二変数多項式函数の零点として与えられるものを言う。
- 例えば単位円は多項式 x2 + y2 − 1 の零点集合となる代数曲線である。
様々な技術的理由を考慮するならば、多項式の任意の複素零点をその曲線上の点とみなした方が都合がよい。同様に、代数曲線の概念も、定義多項式の係数や曲線上の点の座標が任意の体に属することも許すように一般化される。代数幾何学において、体 k 上で定義された平面アフィン代数曲線 (plane affine algebraic curve) とは、K を k の適当な代数閉拡大体として、適当な k-係数二元多項式の零点を座標に持つ K-平面 K2 内の点すべてからなる集合を言う。この曲線上の点で、k に座標を持つものは k-有理点 (k-point) と総称され、k-有理点の全体をこの曲線の k-成分 (k-part) と呼ぶ。
- 例えば、点 (2,√−3) は x2 + y2 − 1 = 0 で定義される曲線上の点であり、通常の単位円はこの曲線の実成分である。ここで、「単位円」というのは実点のみならず任意の複素点に関して言う(ふつうは正確な意味は文脈から明らかなはずである)。方程式 x2 + y2 + 1 = 0 は実成分が空となるような代数曲線を定義する。
より一般には、平面に含まれない(が、より高次の空間に含まれる)代数曲線というものも考えることができる。平面代数曲線ではない代数曲線は非平面的であると言う。もっとも簡単な非平面代数曲線は非平面三次曲線(三次撓線)である。射影空間に含まれる代数曲線というものも考えることができるし、もっと言えばどんなアフィン空間や射影空間へ埋め込まれるかというようなこととは独立した形で代数曲線を定義するさえこともできる。そうして代数曲線の最も一般の定義に達する:
- 「代数幾何学における代数曲線とは、一次元の代数多様体のことを言う。」
ユークリッド幾何学において
ユークリッド平面内の代数曲線とは、二元多項式方程式 p(x, y) = 0 の解を座標に持つ点全体からなる集合を言う。「y が x の函数として陽 (explicit) に定義される」ときの函数のグラフとして曲線が得られる場合と対照して、この方程式はしばしばこの曲線の陰伏方程式(あるいはこの方程式がこの曲線を陰 (implicit) に定義する)といわれる(陰函数の項も参照)。
そのような陰伏的に与えられた曲線に対して、最初の問題は曲線の形を決定して曲線を描くことである。これらの問題は、さまざまな x に対して容易に計算できない y については、函数のグラフとして陽に得られる場合と比べて容易ではない。定義方程式が多項式であるという事実は、曲線がこれら問題を解決する手助けとなるある種の構造的性質を持つということを意味する。
任意の代数曲線は、有限個の滑らかで単調な弧(これをこの曲線の枝あるいは分枝 (branches) と呼ぶ)を適当な点(分点、あるいは「特徴点」("remarkable point") と呼ぶ)で結んだものに一意的に分解することができる。ここに、「単調で滑らかな弧」とは x-軸内の開区間上で定義された単調かつ滑らかな函数のグラフとなるものである。どちらの方向についても、弧は非有界(無限弧 (infinite arc))となってもよいし、端点を持ってもよい(端点は特異点(後述)でもよいし、何れかの座標軸に平行となってもよい)。
例えば、チルンハウスの三次曲線は、原点 (0,0) を端点に持つふたつの無限弧を持つ。原点はこの曲線上の唯一の特異点である。さらに二つ、原点を一方の端点に持ち、他方の端点は水平接線を持つ点とする有限弧があり、さらに後二つ、水平接線を持つ点を片方の端点とし、曲線上の唯一垂直接線を持つ点をともにもう片方の端点とする有限弧を持つ。他方、正弦曲線は明らかに代数曲線ではなく、無限個の単調弧を持つ。
代数曲線を描くためには、分点および分点での接線、無限弧となる枝と(もしあれば)その漸近線、およびそれら枝の分点での繋がり方などを知ることが重要である。変曲点も特徴点として考えるのは有効である。これらすべての情報を紙面に描き連ねたとき、曲線の形状はふつうはかなりはっきり見えてくるはずである。もし不足があるのならば、さらにいくつか曲線よく表す点および接線を描き加える。
特徴点およびその接線の計算法は後述。
平面射影曲線
射影空間内の曲線を考える方が望ましいということはしばしばある。射影平面内の代数曲線、あるいは平面射影曲線とは、三変数斉次多項式 P(x, y, z) の零点を射影座標に持つ射影平面内の点全体の成す集合を言う。
方程式 p(x, y) = 0 の定める任意のアフィン代数曲線は、p の斉次化
- この節の加筆が望まれています。 (2012年10月)「平面曲線」も参照
本節では、二元多項式 p(x, y) の定める平面代数曲線と、p の斉次化多項式 P(x, y, z) = hp(x, y) の定める射影完備化を考える。
直線との交点
曲線に対して、与えられた直線との交点を知ることはしばしば有効である。座標軸との交点や漸近線との交点は曲線を描くために利用できる。軸に平行な直線との交点を考えれば、曲線の各枝に少なくとも一点を求めることができる。効果的な求根アルゴリズムが利用できるならば、x-軸上の各画素を通り y-軸に平行な任意の直線との交点をプロットすることで曲線を描きだすことが可能になる。
曲線の定義多項式が次数 d ならば、任意の直線は高々 d 個の点において曲線を横切る。 ベズーの定理は、代数閉体(例えば複素数体)上の射影平面の点について調べる限りにおいて、重複度を込めて数えれば、この数がちょうど d 個であることを主張する。以下に述べる計算法はこの単純な場合においてこの定理を再び証明するものである。
多項式 p の定義する曲線と、直線 ax+by+c = 0 との交点を計算するために、直線の方程式を x に関して(a = 0 のときは y について)解く。それを p に代入すれば、一元方程式 q(y) = 0(直線を y について解いたときは q(x) = 0)を得て、その根は交点の座標の一つを与える。他の座標の値は直線の方程式から求められる。交点の重複度は、対応する根の重複度である。q の次数が p の次数より低いならば、無限遠点において交点が存在し、そのような無限遠点の重複度は次数の差 p − q で与えられる。
各点の接線
曲線上の各点 (a, b) における接線は、陰伏的に定義された任意の可微分曲線に対すると同様に、方程式 (x − a)p'x(a, b) + (y − b)p'y(a, b) = 0 の定める直線である。多項式の場合には、より単純な定数項を持ち、より対称性の高い形の接線の公式
特異点には、曲線がそこで自己交叉を持つ多重点や、例えば方程式 x3 = y2 の表す曲線の (0, 0) に見るような様々な種類の尖点がある。
曲線 C は高々有限個の特異点を持つ。特異点の数が零ならば、曲線は滑らかあるいは非特異であると言う。一般的には、この定義は代数閉体上で C が射影空間にあるとき(つまり、代数幾何学的な意味で「完備」のとき)にいうものと理解される。例えば、方程式 y − x3 = 0 の定める曲線は特異曲線で、無限遠点に特異点(尖点)を持つものと考える。
特異点は幾つかの不変性の意味で分類される。多重点 P の重複度 m は、P において f の m − 1 階までの微分係数がすべて消えているような最大の整数として定義される(曲線の、P における直線との間の交点数の最小値としても定義できる)。直観的に、特異点がデルタ不変量 δ を持つのは、それが P において δ 個の常二重点が寄り集まったときに起きる。これをより精確にするには、ブローアップの過程を施していわゆる無限に近い点を作り出し、各無限に近い点の重複度を m とするときの m(m − 1)/2 を全ての無限に近い点に関して足し上げたものが δ である。既約かつ被約曲線および点 P に対して、δ を
例えば、楕円 x2 + xy + y2 = 1 は (−1, 0) を有理点に持つ。(−1,0) から傾き t の直線 y = t(x + 1) を描いて、楕円の方程式に代入し、因数分解して x について解けば
ウィキメディア・コモンズには、代数曲線に関連するカテゴリがあります。 - Egbert Brieskorn and Horst Knörrer, Plane Algebraic Curves, John Stillwell, translator, Birkhäuser, 1986
- Claude Chevalley, Introduction to the Theory of Algebraic Functions of One Variable, American Mathematical Society, Mathematical Surveys Number VI, 1951
- Hershel M. Farkas and Irwin Kra, Riemann Surfaces, Springer, 1980
- Fulton, W. (PDF), Algebraic Curves: an introduction to algebraic geometry
- C.G. Gibson, Elementary Geometry of Algebraic Curves: An Undergraduate Introduction, Cambridge University Press, 1998.
- Phillip A. Griffiths, Introduction to Algebraic Curves, Kuniko Weltin, trans., American Mathematical Society, Translation of Mathematical Monographs volume 70, 1985 revision
- Robin Hartshorne, Algebraic Geometry, Springer, 1977
- Shigeru Iitaka, Algebraic Geometry: An Introduction to the Birational Geometry of Algebraic Varieties, Springer, 1982
- John Milnor, Singular Points of Complex Hypersurfaces, Princeton University Press, 1968
- George Salmon, Higher Plane Curves, Third Edition, G. E. Stechert & Co., 1934
- Jean-Pierre Serre, Algebraic Groups and Class Fields, Springer, 1988
- Swinnerton-Dyer, H. P. F. (1971). Applications of algebraic geometry to number theory. 1969 Number theory institute, Proceedings of Symposia in Pure Mathematics. 20. American Mathematical Society. pp. 1–52. doi:10.1090/pspum/020. ISBN 978-0-8218-9306-7. MR0337951
- Voisin, Claire (PDF), LECTURES ON THE HODGE AND GROTHENDIECK–HODGE CONJECTURES; (PDF) ANTICANONICAL DIVISORS AND CURVE CLASSES ON FANO MANIFOLDS; Hodge theory and complex algebraic geometry 1; (PDF) Green's canonical syzygy conjecture for generic curves of odd genus; (PDF) Green’s generic syzygy conjecture for curves of even genus lying on a K3 surface
- Montserrat Teixidor i Bigas ON A CONJECTURE OF LANGE; (PDF) Moduli spaces of vector bundles on reducible curves; Green’s Conjecture for the generic r-gonal curve of genus g ¸ 3r ¡ 7
- Ernst Kötter (1887). “Grundzüge einer rein geometrischen Theorie der algebraischen ebenen Kurven (Fundamentals of a purely geometrical theory of algebraic plane curves)”. Transactions of the Royal Academy of Berlin. — gained the 1886 Academy prize[1]
- ^ Norman Fraser (Feb 1888). “Kötter's synthetic geometry of algebraic curves”. Proceedings of the Edinburgh Mathematical Society 7: 46-61 . Here: p.46
代数曲線のトピックス有理曲線 楕円曲線 解析的理論 数論的理論 - 楕円曲線上の点の数え上げ
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