LMP1-Hクラスにおける3大ワークスの争い
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/10 06:12 UTC 版)
「2014年のFIA 世界耐久選手権」の記事における「LMP1-Hクラスにおける3大ワークスの争い」の解説
2012年・2013年シーズンにおけるアウディvsトヨタの2大ワークス対決の構図の中に、かつてル・マン24時間レースで歴代最多の16勝を挙げるなどして「耐久王」と称されたポルシェが本シーズンより参戦したことにより、大きな注目を集めた。特に前年までF1を走って通算9勝を挙げたマーク・ウェバーがポルシェチームに所属してWECに参戦したことは話題を呼び、WECの人気を大いに高める結果となった。 開幕戦のシルバーストン6時間レース 予選で各参加車両の2名のドライバーがタイムアタックを行い、両名のベスト2周、つまり計4周分のラップタイムの平均によって予選順位をつけてスターティンググリッドを決定する。トヨタ・TS040 HYBRIDの7号車に乗る中嶋一貴が各車2人目のタイムアタッカーの中では最速の1分42秒509をマークした結果、同車の予選平均タイムはトップとなり、7号車がポールポジションを獲得。決勝レースは時折強まる雨が降り続き、最後はチェッカーまで残り40分というところでセーフティカーが導入され、赤旗が提示されてレースは終了する結果となった。めまぐるしく変わる天候に各車とも翻弄される中、同じトヨタ・TS040 HYBRIDを駆る8号車のアンソニー・デビッドソン/セバスチャン・ブエミ/ニコラ・ラピエール組が予選5位から優勝した。2位には7号車が入り、トヨタは出走車2台による1-2フィニッシュを決める。3位にはデビュー戦のポルシェ・919ハイブリッドの20号車が入っている。20号車に乗るマーク・ウェバーは初戦にして表彰台に上った。なお、アウディのアウディ・R18 e-tron クアトロは2台ともリタイアとなった。 第2戦のスパ・フランコルシャン6時間レース 予選では、ウェットコンディションの路面が急速に乾いていく状況の中、ポルシェが14号車に乗るマルク・リープの出したタイムで参戦わずか2戦でポールポジションを獲得する。決勝レースは、ピットストップの作業で手間取るポルシェ14号車をトヨタ8号車が逆転し、ファーステストラップもマークして開幕2連勝を果たした。ポルシェ14号車はその後電気系トラブルで4位に後退し、2位にアウディ1号車、3位にはトヨタ7号車が入った。 第3戦のル・マン24時間レース トヨタ7号車の中嶋一貴が従来の予選コースレコードを更新する3分21秒789を叩き出して、日本人ドライバーとして初めてル・マン24時間レースでのポールポジションを獲得した。決勝レースは、トップを独走していたトヨタ7号車が、スタートから14時間になろうというところで電気系のトラブルによりリタイアする。替わってトップとなったアウディ2号車はターボエンジンのトラブルでピットストップ、アウディ1号車がトップに立つ。しかしアウディ1号車もターボエンジンのトラブルが発生して交換作業に追い込まれ、ポルシェ20号車がトップとなるが、タイヤ交換の間にアウディ2号車にトップの座を奪い返される。その後もトップを追いかけるポルシェ20号車だったが、エンジンにトラブルが発生して痛恨のリタイアとなり、アウディ2号車と1号車による1-2フィニッシュで幕を閉じた。3位にはトヨタ8号車が入っている。 第4戦のサーキット・オブ・ジ・アメリカズ6時間レース 予選では、トヨタ8号車に乗る3人の内、デビッドソンとブエミの2人がタイムアタックを担当し、ライバルに1秒以上の大差をつけてポールポジションを獲得する。決勝レースは、スタートから約1時間30分というタイミングで激しい雷雨に見舞われ、トヨタ8号車に乗るラピエールはコースオフ後にグラベルに捕まり脱出できなくなってしまった。約1時間の中断の後、8号車は4位、7号車は7位で、共に周回遅れとして再スタートを切った。8号車のブエミは、ファーステストラップをマークする走りで追い上げるも3位で終わった。レースは、アウディ2号車がリードし、アウディ1号車とポルシェ14号車が2番手争いをするが、ポルシェ14号車は4位に脱落、第3戦と同じくアウディ2号車と1号車が1-2フィニッシュを決めた。3位にトヨタ8号車が入り、奇しくも表彰台の順位はル・マンと同じになった。 第5戦の富士6時間レース 第5戦よりトヨタ8号車に乗っていたニコラ・ラピエールがWECを欠場し、8号車はデビッドソンとブエミの2人体制で戦うことになった。予選はトヨタ8号車がポールポジションを獲得する。決勝レースは、トヨタ8号車がポールポジションから独走し優勝、2位にもトヨタ7号車が入り、トヨタは開幕戦以来の1-2フィニッシュを決めた。3位にはポルシェ20号車が入った。トヨタは2012年のWECのスタート以来、富士スピードウェイでの母国日本ラウンドにおける無敗記録を更新した。 第6戦の上海6時間レース 予選では、ポルシェ14号車はロマン・デュマとニール・ジャニが担当して1分48秒300という2人のドライバーの平均タイムを出すと、トヨタ8号車もデビッドソンとブエミも全く同タイムを出した。同タイムの場合、先にベストタイムを記録した方を上位とする為、ポルシェ14号車がポールポジションを獲得した。決勝レースは、レース序盤にセーフティカーが導入されたタイミングで給油の為のピットストップに入ったトヨタ車2台が、ピットストップせずに先行したポルシェ・アウディ勢を追いかける展開であり、これも早々とアウディ勢をかわし、ポルシェ勢はルーティンのピットストップの間にトップに入れ替わることに成功し、レース前半で早くもトヨタの1-2体制が築かれることとなった。結局、トヨタ8号車と7号車の1-2フィニッシュとなり、3位にはポルシェ14号車が入った。 第7戦のバーレーン6時間レース トヨタ8号車のデビッドソンとブエミはドライバーズランキング首位であり、ここバーレーンで5位以内に入れば、仮にライバルのアウディ2号車が優勝してもタイトルを自力で獲得できる状態で臨んだレースである。予選では、タイムアタックを重視し、ソフトコンパウンドのタイヤを履いた14号車が、ロマン・デュマとニール・ジャニのコンビによるタイムアタックでポールポジションを獲得する。決勝レースは、決勝重視用のミディアムコンパウンドを履いたトヨタ8号車がトップを奪い、やがてトヨタ8号車と7号車の1-2体制となるが、8号車のオルタネーターが破損し、約30分をかけるオルタネーターの交換を強いられることになってしまう。結局、優勝はトヨタ7号車で2位にポルシェ14号車、3位にポルシェ20号車が入った。アウディ2号車は4位、1号車は5位に留まった。トヨタ8号車は総合13位/LMP1クラス8位でフィニッシュし、この結果、アンソニー・デビッドソンとセバスチャン・ブエミの2人のドライバーズタイトル戴冠が決まった。 最終戦のサンパウロ6時間レース 予選は、マーク・ウェバーとティモ・ベルンハルトの2人がタイムアタックしたポルシェ20号車がポールポジションを獲得する。2番手にもポルシェ14号車が入り、ポルシェ勢がフロント・ローを独占した。決勝レースは、ポルシェ20号車がトップを快走し、2番手にトヨタ8号車が入り追いかける展開も、ポルシェ20号車が原因不明のエンジン出力低下で後退、以後はポルシェ14号車とトヨタ8号車による争いとなった。ポルシェ14号車は最後のピットストップで停車時間の短縮を図るためにタイヤ交換を行なわず、トヨタ8号車は新品のタイヤに履き替えた為、ピットストップ短縮で前に出たポルシェ14号車を新品タイヤで全力で追いかけるトヨタ8号車の展開となったが、マーク・ウェバーが乗るポルシェ20号車とマッテオ・クレッソーニが乗るLMGTE Amクラスのフェラーリ・458イタリア・GT2の90号車が交錯して20号車がコンクリートウォールに激突して大破する事故が発生。このアクシデントの処理の為にセーフティカーが導入され、そのままレースが終了。14号車によるポルシェの初優勝が決まった。2位にはトヨタ8号車が入り、トヨタのマニュファクチャラーズタイトル獲得を決めた。3位にはアウディ1号車が入っている。なお、このサンパウロ6時間レースはアウディ・スポーツチーム ヨーストのドライバーのトム・クリステンセンの引退レースともなった。
※この「LMP1-Hクラスにおける3大ワークスの争い」の解説は、「2014年のFIA 世界耐久選手権」の解説の一部です。
「LMP1-Hクラスにおける3大ワークスの争い」を含む「2014年のFIA 世界耐久選手権」の記事については、「2014年のFIA 世界耐久選手権」の概要を参照ください。
- LMP1-Hクラスにおける3大ワークスの争いのページへのリンク