重量物運搬船
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/12 05:44 UTC 版)
重量物運搬船(じゅうりょうぶつうんぱんせん、または重量物船)は、通常の設備の船では取り扱えない重量物や大型の積み荷を輸送するために設計された船である。
- 1 重量物運搬船とは
- 2 重量物運搬船の概要
重量物運搬船
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/11 18:21 UTC 版)
半潜水式重量物運搬船(英:semi-submersible heavy lift ship、頭字語:SSHL)は、半潜水艇(英:semi-submersible [vessel])の型式を備えた重量物運搬船(英:heavy lift ship)である。 前部の操舵室と後部の機械室の間に長く低い凹甲板を持っている。表面的には、ばら積み貨物船や石油タンカーにいくらか似ている。バラストタンクに注水して凹甲板を水面下に下げ、他の船舶や石油プラットフォーム、その他の水に浮かぶ貨物を搭載位置に移動させる。その後バラストタンクから排水することで凹甲板を浮上させ、貨物を持ち上げる。貨物のバランスを取るため、バラストタンクは不均等に排水できるようになっている。 半潜水式重量物運搬船の最大の顧客は石油産業である。半潜水式重量物運搬船により多くの石油プラットフォームが輸送されている。建造場所から掘削場所まで、自力で移動する場合に比べておよそ3倍から4倍の速さで移動できる。掘削場所まで石油プラットフォームを迅速に展開することにより、石油産業は多額の経費を節約できる。その他の大型の積み荷やヨットなどの輸送にも用いられる。 アメリカ海軍は過去に数回こうした艦体を損傷した戦闘艦艇を自国に回航修理するため重量物運搬船を借り受けたことがある。アメリカ船籍の重量物運搬船は存在しないため、アメリカ海軍は世界の商業輸送市場からの借受に依存している。最初の例は1988年4月14日にペルシャ湾中央で機雷によって沈没寸前となったミサイルフリゲート「サミュエル・B・ロバーツ」であった。この艦はドバイ (UAE) まで曳航され、そこでドックワイズ社(英語版)の半潜水式重量物運搬船「マイティ・サーバント2(英語版)」(IMO: 8130875) に載せられてニューポート海軍基地(米国ロードアイランド州)へ運ばれた(■右列に画像あり)。その12年後、2000年10月12日に発生した爆破テロ(米艦コール襲撃事件)では米国のミサイル駆逐艦「コール」が被害を受け、アデン(イエメン)からパスカグーラ海軍基地(米国ミシシッピ州)まで、これもドックワイズ社の半潜水式重量物運搬船「ブルー・マーリン(英語版)」(IMO: 9186338) によって移送された(■右に画像あり)。さらに17年後の2017年には、いずれも第7艦隊横須賀基地所属第15駆逐隊BMD対応アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦である「フィッツジェラルド」と「ジョン・S・マケイン」が、前者は6月に日本の静岡県下田沖で、後者は8月にシンガポール沖で、相次いで民間輸送船と衝突し、両艦いずれも損傷して浸水した。「ジョン・S・マケイン」は横須賀海軍基地(日本)へ移送されたが、「フィッツジェラルド」のほうは艦体水密修理後にイージスシステムまでも損傷していたことが判明したため、これを修理できるアメリカ合衆国本土への移送が必要となった。当初は、件の2艦をドックワイズ社の半潜水型重量物運搬船「トレジャー (Treasure)」(IMO: 8617940) が積載駆逐艦をチャンギ海軍基地(シンガポール)-横須賀海軍基地(日本)-インガルス造船所(米国パスカグーラ海軍基地)と積み替え移送してゆく行程を予定であったが、今度は移送中の「ジョン・S・マケイン」の艦体に亀裂が発見されたうえに、台風の接近で「トレジャー」のピストン移送が不可能となったため、スービック海軍基地(フィリピン)への回航を余儀なくされた。ここに来てアメリカ海軍は輸送船1隻のみに頼った積み替え移送を断念し、これもドックワイズ社の半潜水型重量物運搬船「トランスシェルフ (Transshelf )」(IMO: 8512279) を追加で手配。同船は水密修理を終えた「フィッツジェラルド」をスービックからインガルス造船所へと移送した(■右に画像あり)。 先述したドックワイズ社の半潜水式重量物運搬船「ブルー・マーリン」(IMO: 9186338) は、2004年、GVAコンサルタント(英語版)が設計した世界最大の半潜水式石油プラットフォームでBP社所有の「サンダーホースPDQ(英語版)」(MMSI: 366047800) を、韓国の巨済市にある大宇造船海洋の造船所から米国テキサス州のコーパスクリスティにある造船所まで移送している。 ここまで述べてきた事象でその名がいくつも見られることからも分かるように、半潜水式重量物運搬船で規模の大きなものの多くはオランダ資本の企業ドックワイズ(英語版)が開発・建造・所有・運用に当たっており、この分野に特化した世界的企業である。同社は2004年に「ブルー・マーリン」(IMO: 9186338) の甲板幅を広げて@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}世界最大の重量物運搬船に改造した[要出典] (51,821 GT)。姉妹船「ブラック・マーリン(英語版)」(IMO: 9186326) も当時世界最大級であった。2012年に進水した「BOKA バンガード(ヴァンガード)(英語版)」(91,784 GT. IMO: 9618783) は、前2者より遥かに大きく、2012年以来現在(2020年時)において「世界最大の重量物運搬船」である(■右列に画像あり)。同社の船には喪失船もあり、先述した「マイティ・サーバント2(英語版)」(IMO: 8130887) は1999年11月にインドネシア沖で海図に載っていない水中障害物に衝突して転覆した。また、姉妹船「マイティ・サーバント3(英語版)」(IMO: 8130899) は2006年12月にアンゴラ沖で石油プラットホーム「アリューシャン・キー (GSF Aleutian Key)」(IMO: 8750091) を降ろす際に設計限界以上に沈降させたために沈没してしまったが、2007年5月に浮揚され、その後には再び就役している。
※この「重量物運搬船」の解説は、「半潜水艇」の解説の一部です。
「重量物運搬船」を含む「半潜水艇」の記事については、「半潜水艇」の概要を参照ください。
重量物運搬船と同じ種類の言葉
- 重量物運搬船のページへのリンク