財政難を理由とした公務員給与減額をめぐる対応
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/04 05:27 UTC 版)
「江利川毅」の記事における「財政難を理由とした公務員給与減額をめぐる対応」の解説
2011年3月11日の東日本大震災を受けて菅直人内閣は、財政状況一般と震災復興財源確保を理由に、国家公務員給与の減額措置を閣議決定(一般案件)し、同日中に一般職の給与を、公布の日の属する月の翌々月の初日から2014年3月31日まで平均7.8%減額する「国家公務員の給与の臨時特例に関する法律案」(通称「公務員給与削減法案」。以下、給与臨時特例法案)を閣議決定、第177回国会に提出した。人事院は同日中に、江利川総裁の談話を発表した。この中で江利川は、今回の措置は職員の労働基本権が制約された状況下で人事院の勧告(国公法第28条)によらずに給与を減額するものであり、一部の職員団体は政府案に合意したものの、反対している職員団体があるほか、職員団体に属さない職員も多数いると説明した上で、閣議決定は遺憾であり、国会で慎重な審議がなされることを期待すると表明した。 法案が総務委員会に付託された後、実質的な審議が始まらないまま、9月30日に人事院の給与勧告が行われた。勧告は一般職の月例給を平均0.23%引き下げる内容であった。野田佳彦内閣は同年10月28日の閣議で、給与臨時特例法案の成立を期し、勧告は実施を見送ることを決定した。法案と人勧の関係については、「今般の人事院勧告による給与水準の引下げ幅と比べ、厳しい給与減額支給措置を講じようとするものであり、また、総体的にみれば、その他の人事院勧告の趣旨も内包している」と説明した。この決定を受けて人事院は同日中に再び総裁談話を発表した。談話にて江利川は、「東日本大震災という未曾有の国難に対処するに当たっては、平時とは異なって、内閣及び国会において、大所高所の立場から、財源措置を検討することはあり得る」と財源確保のための給与減額を是認しつつ、「人事院勧告は、給与臨時特例法案と趣旨・目的及び内容を異にし、『内包』されるという関係にはありません」と内閣の説明を批判。国家公務員の労働基本権を制約している「現行の憲法及び国家公務員法の体系の下で人事院勧告を実施しないことは、きわめて遺憾であります」と述べだ。 10月28日の閣議決定に先行して、第179回国会において10月19日から給与臨時特例法案の審議が総務委員会で始まった。江利川は政府特別補佐人として総務、予算委員会等に出席し、勧告の見送りは憲法違反であるとの答弁を繰り返し行った。結局、この国会では勧告や国家公務員制度改革法案の扱いを巡って与野党の交渉が折り合わず、給与臨時特例法案は不成立、継続審議となった。人事院勧告も実施されないまま、12月9日冬のボーナス(期末手当・勤勉手当)の支給をむかえた。ある財務省幹部(匿名)はこの答弁を、民主党内部を分断する巧みな戦術であったと評価した。また元経産官僚で政策コンサルタントの原英史は、人事院勧告無視は憲法違反との主張は全くの間違いで、憲法のどこにもそんなことは書いていないと述べた。 2012年4月7日、任期満了をもって退官した。途中退任した谷公士総裁の後を受けたため、江利川の任期は2年5カ月だった。産経新聞の力武崇樹は、人事官は4年の任期を2、3期務めるのが通例だが、過去9代で人事官を1期で退任した総裁はいないことから、事実上の更迭であると解説している。 2017年4月29日付の春の叙勲で、瑞宝大綬章を受章。
※この「財政難を理由とした公務員給与減額をめぐる対応」の解説は、「江利川毅」の解説の一部です。
「財政難を理由とした公務員給与減額をめぐる対応」を含む「江利川毅」の記事については、「江利川毅」の概要を参照ください。
- 財政難を理由とした公務員給与減額をめぐる対応のページへのリンク