財政的保守主義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/11 09:02 UTC 版)
「アメリカ合衆国の保守主義」の記事における「財政的保守主義」の解説
財政的保守主義は政府の課税と歳出の規制を提唱する経済と政治の政策である。19世紀以来、負債は政治を腐敗させるものと主張してきた。大きな支出は人々の道徳を破壊し、国債は危険な投機家階級を生むと論じている。バランスの取れた予算を好む論議は、政府の福祉政策がぎりぎりで調整されるべきであり、税率は低くあるべきという考えと組み合わされることが多く、比較的小さな政府を示唆している。 小さな政府という概念は財政的保守主義と組み合わされて、幅広い「経済的自由主義」を生み出し、経済における政府干渉の最小化あるいは「自由放任」政策を実施することを望んでいる。この「経済的自由主義」は2つの思想学派から来ている。すなわち、古典的リベラルの実用主義と「権利」のリバタリアン的思想である。古典的リベラルは自由市場が最善であると考え、リバタリアンは自由市場が唯一の倫理的市場であるとしている。 アメリカ合衆国における保守主義の経済哲学は経済的自由をより多く認めるリベラルな方向に傾きがちである。「経済的自由主義」は財政的慎重さへの財政的保守主義の関心を超えて、政府が市場に介入するのは分別が無いという信念や原則まで行き着くことがある。さらには幅広い「小さな政府」哲学まで広げられもする。経済的自由主義は自由市場あるいは自由放任経済に関わっている。 経済的自由主義は、それが「理論」だと言う限りにおいて、アダム・スミス、フリードリヒ・ハイエク、ミルトン・フリードマン、ルートヴィヒ・フォン・ミーゼスの流れを汲む「古典的自由主義」の伝統にその起源を負っている。 「古典的リベラル」と「リバタリアン」は道徳と理論で自由市場を支持している。個人の自由の原則は道徳的に自由市場の支持に行き着く。自由市場のための道徳基盤を支持した者として、アイン・ランドやルートヴィヒ・フォン・ミーゼスが居る。リベラルの伝統は政府の権限を疑い、個人の選択を好むので、資本主義経済を経済目標に達するための好ましい手段と見る傾向にある。 一方で現代の保守主義は実用的な根拠から自由市場への支持を引き出している。自由市場は最も生産的な市場であると論じている。現代の保守主義者は必要性からではなく、便宜性から自由市場を支持している。この支持は道徳からでも理論からでもなく、最善に働くものが正しいものであるというエドマンド・バークの公式から導き出されている。 保守主義者が、経済において政府の役割が小さいほうを支持するもう1つの理由は、市民社会の重要性を信じていることである。アレクシ・ド・トクヴィルが述べているように、経済で政府が大きな役割を担うと、人々に社会に対する責任を感じなくさせるという考えもある。この責任感は政府によって肩代わりされる必要性が出てきて、高い税を必要とするようになる。トクヴィルの著作『アメリカの民主政治』では「やわらかい抑圧」として表現されている。 古典的なリベラル派と現代の保守主義が、歴史的に異なる手段で自由市場に行き着く一方で、今日ではその線引きが不明になってきた。自由市場は「単純により生産的」か「単純にものごとを行う権利」と政治家が主張することは滅多になく、その両方の組み合わせである。この不明瞭さは保守運動の「傘」の下で古典的なリベラル派と現代の保守主義が融合したまさにその産物である。 20世紀後半で典型的な自由市場保守政権は、イギリスのマーガレット・サッチャーとアメリカ合衆国のロナルド・レーガン政権であり、どちらも当代の現代保守主義の礎石となるべく、市場の操作に足枷を外した(この哲学は批評家や左派から新自由主義と呼ばれている)。その目的のために、サッチャーは産業や公営住宅を民営化し、レーガンはキャピタルゲイン最大税率を28%から20%に減らしたが、その2期目には28%に戻すことに合意した。レーガンは防衛費予算の増額を望み、それを達成した。リベラル派民主党が国内予算のカットは防止した。レーガンは連邦政府予算の急激な増加を制御せず、赤字を減らそうともしなかったが、国内総生産の比率として表現されればその残したものはより良く見える。レーガンが大統領に就任した1981年のGDP比連邦歳入は19.6%であり、離任した1989年にはそれが18.3%にまで落ちた。連邦歳出のGDP比は22.2%から21.2%と歳入より小幅に下がった。この数字を2004年のものと比べると、連邦歳出は10年前と比べて急速に増加している。
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