訪問実現までの経緯
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「バラク・オバマの広島訪問」の記事における「訪問実現までの経緯」の解説
2008年アメリカ合衆国大統領選挙でバラク・オバマが当選し、2009年1月20日に大統領に就任した。オバマは2009年4月5日、欧州連合との初の首脳会議のためにチェコの首都であるプラハを訪れ、その際に演説を行い、アメリカは世界で唯一核兵器を使用したことのある核保有国として、行動を起こす責任があるとし、核兵器のない世界の実現に向け牽引すると明言した(プラハ演説)。この演説はオバマが同年のノーベル平和賞を受賞する要因の一つともなった。 その後、2009年11月にオバマが大統領として初来日することが決定するが、その3ヶ月前の8月28日にアメリカのジョン・ルース駐日大使と薮中三十二外務事務次官が会談を行い、その中で薮中がアメリカ合衆国大統領が広島を訪れるのは時期尚早であり、大騒ぎしない形での簡素な訪問にとどめれば象徴的な意義はあるかもしれないと見解を述べた。この会談の様子を伝える外交公電が在日アメリカ大使館によって作成され、アメリカ外交公電ウィキリークス流出事件によって2011年に一般に知られることとなった。2009年11月、オバマは大統領として初めて日本を訪問。大統領任期中に被爆地を訪問できれば光栄であると述べたが、この時は訪れることはなかった。 2010年8月6日、広島平和記念式典にルースがアメリカの駐日大使としてはじめて参加。2014年の平和記念式典には、ルースの後任のキャロライン・ケネディが出席した。2015年4月17日にケネディは広島を再訪し、原爆慰霊碑に献花を行っている(なお、ケネディは1978年1月、20歳の時に叔父のエドワード・ケネディ上院議員とともに広島の平和記念公園を訪れ、被爆者とも面会している)。 2015年夏、翌年のG7外務大臣会合の開催地に広島が決定し、外務大臣の岸田文雄と外務事務次官の斎木昭隆はケネディとの面談で、オバマらが広島を訪問した場合でも日本は謝罪を求めない考えや、現職のアメリカ合衆国大統領が被爆地を訪問することは核廃絶を世界に強くアピールすることに繋がるであろうという見解を伝えた。アメリカ合衆国大統領の広島訪問を実現させる上で、日本による謝罪要求がアメリカ側の最大の懸念点であると認識していた日本側は、まずこの点を払拭することに務めた。こうした経緯を経て、ケネディは本国に戻った際にオバマに直接広島を訪問することの意義や日本国内の空気を説明した。 2015年8月6日、ホワイトハウス報道官ジョシュ・アーネスト(英語版)が、オバマの広島訪問について将来の可能性を排除しないとしながらも任期中の広島訪問について慎重姿勢を表明。2016年3月30日、アメリカ合衆国国務次官ローズ・ゴットモーラー(英語版)が、読売新聞に対してホワイトハウスが伊勢志摩サミットに合わせたオバマの広島訪問を慎重に検討していることを明らかにした。3月31日、オバマはワシントンD.C.を訪れた安倍に対し、日米関係が更に良くなる努力をすることを考えていきたいと表明した。 2016年4月2日、岸田がG7外務大臣会合においてアメリカ国務長官のジョン・ケリーを含む各国の外務大臣が平和記念公園を訪れることを発表。4月11日、ケリーが広島平和記念公園を訪問し、広島平和記念資料館(原爆資料館)の展示内容は衝撃的で胸をえぐられるようだとコメントした。これが現職のアメリカ合衆国閣僚並びに国務長官として初の平和記念公園への訪問だった。しかしオバマの広島訪問の可能性については実現を望みつつ可能性は不明とした。そしてアメリカ政府はケリーの広島訪問が国内世論に与える影響を見極め、保守派寄りのワシントン・ポスト、リベラル寄りのニューヨーク・タイムズが両紙揃ってオバマの広島訪問を後押しする社説を掲載し、日本の侵略行為を批判する保守派からもオバマが被爆者を慰霊すること自体には異論を唱えないなど、ホワイトハウスはオバマの広島訪問が世論の理解を得られると判断し、実現に向け動き出した。 4月22日、官房長官の菅義偉は記者会見で日米両政府間でオバマの広島訪問を調整しているという事実はなく、アメリカが決めるべきことであるとした。同時に、世界の指導者が被爆の実情に触れることで、核廃絶への機運が高まるとの認識も示した。しかし水面下では日米間でオバマ大統領訪問に向けた調整が進み、4月下旬にはほぼ訪問が固まった。安倍はオバマの訪問に同行することを望み、サミット議長記者会見の予定時間を若干繰り上げることを検討。また当日の広島の日の入りが午後7時以降であることから、オバマの訪問を夕方に遅らせることも決定した。 5月10日、ホワイトハウスはオバマが伊勢志摩サミットに合わせ、安倍とともに広島を5月27日に訪問すると発表した。その場では核兵器のない世界の平和、安全保障のため継続的に深く関わっていくことを強調する一方、原爆投下については謝罪しないことも発表された。日本政府もオバマの広島訪問を正式に発表し、5月11日に菅はオバマの広島訪問は核廃絶のための国際的な機運を盛り上げる、極めて重要な歴史的機会であるとして歓迎の意向を表明した。
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