親友の心得
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 03:57 UTC 版)
初出:『yom yom』vol.14〈2010年2月〉 依頼人、嵐美砂の視点で語られる。 嵐美砂と御園奈津は親友同士だった。同じ演劇部に所属し、美砂は1年生の頃から役をもらって演じてきた。自転車の登校路上に坂道があり、その途中に、犬を洗うための水道が外に付いている家があって、美砂たちは部活帰りに時々そこで水を飲ませてもらっている。そして、奈津があこがれる「アユミくん」とも時々遭遇する。 奈津はいつも美砂を立ててくれたが、何でも一番でなければ気が済まない性格の美砂は、次第に自分が奈津に劣っているのではないかという気持ちにとらわれ始める。たとえば、奈津がアユミくんのダッフルコートのブランドを調べてきて、それが自分の知らないブランドだったとか、自分が部活中に話をしてもみんなストレッチも稽古も続けるが、奈津がしゃべるとみんなその話に引き込まれて稽古がストップするとか。 3年生が抜けて、主要な役が美砂たち2年生に回ることになったとき、美砂の他に奈津も主役に立候補し、オーディションで奈津が選ばれ、美砂は裏方を任される。そして、奈津の練習のため、二人は別々に登校することになる。次第に嫉妬心が高まっていく美砂は、奈津が怪我をすればいいと思うようになり、12月の帰り道、凍った路面で奈津がスリップすることを願って、坂道の水道をひねる。翌朝、奈津は坂の途中で自転車ごと滑り落ち、下の道で車と衝突して亡くなる。美砂は、奈津が救急車の中でうわごとのような言葉をつぶやいた中に、「嵐、どうして」という言葉があったと聞く。美砂は、水道をひねる自分の姿を奈津が見ていたのではないかと思う。現場検証の結果、坂道は凍っていなかったことが分かるが、かつて奈津がしていた使者の話を思い出した美砂は、もしも別の人が使者を通じて奈津に会えば、自分が殺意を持って水道をひねったということを話すのではないかと恐れる。そうなる前に奈津に会い、自分から殺意があったことを告白して謝罪し、しかし坂道は凍ってなかったということを伝えようと思う。 ようやく探し当てた使者が、あのアユミくん=渋谷歩美だということを知って、美砂は驚く。会話に困った美砂は、奈津が歩美のダッフルコートについて自分に語ったセリフをそのまま語る。奈津に会いたい理由を問われると、親友だからと大声で答える。面会した奈津は、自然な態度で美砂を迎える。そこで美砂は、奈津が水道のことを知らないのだと感じ、綺麗な気持ちのままあの世に行って欲しい。ここで謝罪することは、自分が楽になりたいだけだと思い謝罪することを辞めた。別れる直前、奈津は歩美から伝言を聞いてくれと美砂に願う。 奈津からの伝言を尋ねると、「道は凍ってなかったよ」と歩美は答える。美砂は、奈津が自分のやったことを知っていたのだと悟る。しかし、自分からそれを告白して謝罪しなかったため、奈津は自分もその話題を持ち出さず、親友に戻れる最後の機会を奪ったのだと美砂は思う。そして、困惑する歩美の前で、激しい後悔の念にさいなまれて泣き崩れる。
※この「親友の心得」の解説は、「ツナグ」の解説の一部です。
「親友の心得」を含む「ツナグ」の記事については、「ツナグ」の概要を参照ください。
親友の心得
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 03:57 UTC 版)
嵐美砂(あらし みさ) 歩美と同じ創永高校2年生。美人なので男子の間で人気が高いが、少し攻撃的な雰囲気のため、歩美にとっては苦手なタイプ。美砂自身も、自分がわがままで、一番でなければ気が済まない性格だということを自覚している。 2ヶ月前の年末に自転車事故で亡くなった御園奈津とは親友同士で、同じ演劇部に所属していた。1年生の頃から高い演技力を評価され、唯一同学年で舞台に立っていた。しかし、奈津が卒業式後に行なわれる三島由紀夫作の「鹿鳴館」で主役に抜擢されたことで、嫉妬を感じるようになる。そして、奈津が自転車で登校する際に通る坂道の脇にある家の水道を出しっ放しにし、翌朝そこが凍って奈津が自転車で転倒するようにした。そして、実際に奈津が事故を起こし、しかも「嵐、どうして」と言い残して死んでしまう。 かつて奈津が使者のことを話していたことを思い出し、他の誰かが奈津と面会する可能性を考えるようになる。事故後の現場検証では、水は誰かが止めたらしく、坂道は凍っておらず、事故の原因はブレーキの不具合だろうという判断が下されたが、もし奈津が自分のやったことを見ていたら、自分に殺されたと思い、それを面会に来た人に話すかもしれない。それを阻止するため、奈津の1回分を消費させ、自分が悪意を持って水を流したことを自ら告白し、しかし道は凍ってなかったことを知らせて誤解を解きたいと思い、使者に依頼をする。 面会では、奈津が自分と穏やかに話していることから、彼女は自分のやったことを知らないのではないかと思い、綺麗な気持ちのままあの世に行って欲しい。私がここで謝罪することは、自分が楽になりたいだけだと思い、結局謝罪はしなかった。しかし、面会後、歩美から奈津の伝言を聞き、奈津が自分のやったことを知っていたことを悟る。そして、奈津に謝罪して親友に戻る機会を自ら潰してしまったことを知って、激しい罪責感にさいなまれて泣き崩れた。 卒業式後に行なわれた奈津の追悼公演では、奈津が演じるはずだった「鹿鳴館」の主役を演じ、観に来た歩美を演技で圧倒した。 御園奈津(みその なつ) 美砂の親友であり、歩美と同じ創永高校で同学年だった。2ヶ月前、自転車ごと坂道を転げ落ち、車にぶつかって亡くなった。亡くなる直前、「嵐、どうして」という言葉を遺す。 生前は、歩美にあこがれの気持ちを抱いていたが、言い出すことはできなかったため、美砂との面会の日に歩美に思いがけず会うことができて喜んだ。しかし、歩美のコートについて自分が生前言ったのと全く同じセリフを、美砂が歩美に語ったのを知り、表情を無くす。そして、面会の後、もしも美砂が歩美に「奈津からの伝言は?」と尋ねた場合には、「道は凍ってなかったよ」と伝えて欲しいと歩美に願った。 美砂とは終始穏やかに面会したが、結局謝罪することのなかった美砂に、戻ったら歩美に伝言したことがあるから聞くように願って別れた。 奈津の母 夫と共に蕎麦屋を経営している。奈津が死んだ時の「嵐、どうして」という言葉の意味を美砂に尋ねたが、美砂の「分からない。役のことでケンカをしたからかも知れない」という言葉を信じた。そして、奈津が着るはずだった主役のドレスを美砂に渡し、自分が奈津に「いい親友はいいライバルでもある」「やらないで後悔するより、やって後悔する方がいい」と励まして主役に立候補することを勧めたということを告白し、仲を悪くさせてしまったことを謝罪した。 浅倉 演劇部3年生の先輩で、美砂のことも奈津のこともかわいがった。 奈津の代役で美砂が主役になって追悼公演を行なうことが決まると、稽古を頻繁に見に来るようになった。そして、以前奈津が主役に立候補した時に、美砂のいないところで奈津が「私には敵わないよ」と言っていたことを美砂が話すと、それは「嵐には敵わないよ」だろうと指摘し、「親友なら信じてやるように」と諭した。
※この「親友の心得」の解説は、「ツナグ」の解説の一部です。
「親友の心得」を含む「ツナグ」の記事については、「ツナグ」の概要を参照ください。
- 親友の心得のページへのリンク