色の作用、効果
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/13 04:13 UTC 版)
人間には感知し易い色と知覚し難い色がある。色の差の認識されやすさは色の視認性と呼ばれる。色が人の注意を引きやすく目立つ度合いを、色の誘目性と呼ぶ。一般に彩度が高い方が視認性と誘目性は高くなるとされる。寒色系よりも暖色系のほうが誘目性が高い。一般に、色相が離れているほどコントラストが強くなるため、視認性が高まる。 色は人の奥行き感や距離の判断に影響を与える。暖色系の色は実際よりも飛び出して見える進出色、寒色系の色は引っ込んで見える後退色である傾向がある。一般に、彩度が高い方は進出し、低ければ後退して見え、無彩色よりも有彩色が進出して見える。さらに、背景の色との関連もあり、背景が明るい場合は暗いほど、背景が暗ければ明るいほど、進出して見える。 隣接する色との対比で見え方が異なってくることを同時対比という。明度対比、彩度対比、色相対比、補色による彩度対比、色陰現象などがある。反対に、隣接する色に近似して見える現象を同化現象(フォン=べゾルト効果)という。面積比が大きい場合、線が細い場合にその効果は大きくなる。 配色により、重なっている部分を透けているように見せることができる。これは、透明視(セロファン効果)と言われる。 同じ色でも面積が大きくなると明るく彩度が高く見え、暗い色はより暗く感じる。また、線の太さが同じでも、明度を落とすと細い線のように見える。 実際より大きく見える色を「膨張色」、小さく見える「収縮色」という。赤や黄など暖色系の色および白色は膨張色で、他の色より知覚し易い。日本の児童の帽子やランドセルカバーが黄色なのは、知覚し易い色を採用する事で自動車事故を減らす狙いがあるからである。反対に、青や黒などの寒色系の色は収縮色である。実際に黒色の自動車は他の色に比べて事故が多く、そのためバスやタクシーの車体は黒色を避けているものが多い。[疑問点 – ノート]また、囲碁の碁石も黒石と白石が同じ大きさの場合は黒石の方が小さく見えてしまうので、黒石を一回り大きく作っている。 人間が暗闇で見え難い色は、茶・黒・青・紫であり、見え易い色は、黄・白・オレンジの順番である。 乳幼児は赤色を強く認識するので、乳幼児の玩具は赤色を基調に作られている。老人性白内障に罹ると水晶体が黄色く濁り、波長の短い青色緑色系統の色は黒っぽく見えるようになる。このため老人はガスコンロの青い炎が見え難く、火傷や火事を起こし易い。 安定した元素である炭素を素材とする墨や複写機のトナーの複写やコピーで描いた文字、図形や絵画などは紫外線に対して耐光性があり、また空気中や水中の酸素による酸化によって色褪せ、退色や変色することは少ない。木簡の文字はその典型例である。他方で、玩具やアニメ、美術のように、生理的な弁別が容易で単純な色を多用する分野・領域がある。多くの印刷や塗装と異なり、明るく鮮やかな色を多用するとか、色素の濃度を高くしたり塗料を厚く塗ったりして、色の飽和度を高くしたり、色素の存在比を大きくして生理的な弁別の容易さを高めるなどした結果、変わった色になっている場合が多い。絵具などは消費量が少なく、使用法が厳密でない上に消費者によって随分異なる為、原料の品質が低く、色が良くない。ターナーやゴッホ、ピカソやシャガールなど著名な画家達が色覚異常だったとの説もある。
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