肯定的視点から
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/09 02:13 UTC 版)
2009年現在日本各地に建設されているダムは財団法人日本ダム協会調査によれば2,892箇所に上る。だが、日本全国のダムの総貯水容量は約222億立方メートルでアメリカ合衆国にあるフーバーダム(コロラド川)1箇所の総貯水容量400億立方メートルの半分でしかない。水が豊富に見えてそうではない現実がある。 近年の地球温暖化の影響により、全世界的に毎年のように集中豪雨と旱魃が局地的に襲っており、国際連合は「水の危機」を発し懸念を示している。日本においても平成16年7月新潟・福島豪雨、平成16年7月福井豪雨、平成20年8月末豪雨を始め毎年のように日本各地で水害が発生、流域住民の生命・財産を脅かしている。福井豪雨において同じ九頭竜川水系でもダムのある真名川とダムのない足羽川で浸水被害が大きく異なった事例もある。一方1994年・2005年の全国的な大渇水は各地で給水制限を引き起こし、特に大河川を持っているにもかかわらず慢性的に降雨量の不安定な四国地方での渇水は深刻となった。1996年に「細川内ダム建設事業」が事実上中止となった那賀川水系では渇水により100億円規模の経済損失が発生し、その後も連年取水制限が行われている。このような不安定な現状の中、治水整備・水資源の確保はより一層重要となり、ダム事業はとりわけ重要であるとの意見は国土交通省や渇水に悩む地方自治体から発せられている。 一方、地球温暖化防止の観点から二酸化炭素排出抑制のために化石燃料からの脱却が叫ばれている中、水力発電の再評価も行われている。原子力発電に対するアレルギーが強い日本において新規の原発建設が困難性を増している中、風力発電・太陽光発電・地熱発電など代替エネルギーの大規模実用化が困難な現状、水力発電への期待は残っている。また、戦前に建設された多くの水力発電ダムはすでに減価償却も完了し、工事費等の債務などを完済しているケースが多い。このようなダムは毎年経常黒字を重ね維持修繕費はその黒字の中から賄われており税金では償却されていない。出力1万キロワット台でも地域の数千世帯分の電力を賄うことが可能で、クリーンかつ経済性に優れた発電法でもある。また揚水発電は夏季の急激な電力消費に即応可能である。こうしたことから治水・利水・エネルギーを総合的に確保できるダム開発に期待する向きも多い。 環境面からは、概して環境破壊の権化として批判される面が大きいダム事業であるが、反面農業用水の取水や天候により特に河川の流況が不安定な夏季において、ダムからの河川維持放流が存在することで常に安定した河川維持流量が確保でき、干ばつによる生物の枯渇を防ぐのに役立つという意見もあり、ダム建設と自然環境変化の因果関係は一概に言えない面がある(詳細はダムと環境を参照)。1997年(平成9年)の河川法改正において河川環境維持が重要な目的に追加されたこともあり、これ以降電力会社管理ダムを含むほぼ全てのダムについて、河川維持放流を義務付けるなど行政の対応も変わりつつある。
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