河川維持放流
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 16:23 UTC 版)
洪水時やかんがいを要する時期以外であっても、ダムからは常に一定量の放流が行われる。これは、下流域にダムがなかった場合と同量の流水を確保することで水生生物などの生育環境・生態系を維持するためである。河川維持放流は年間を通じて行われている放流であり、小規模なダムでは放流操作と特筆されないこともある。上記の不特定利水目的の放流も河川維持の一環と見なすことがある。 一般に多目的ダムや治水ダムにおいては河川維持放流が不特定利水の中に含まれており、広義の意味では治水にも該当する。ダムによって流水が枯渇し下流環境への影響が大きいと批判する意見があるが、多目的ダム・治水ダムではこの批判は当てはまらない。しかし発電専用ダムにおいては発電能力の減衰につながる無用な放流は避けたいとして、下流への放流は原則的になかった。このため大井川・信濃川を始め全国の河川において、水量減少による問題がクローズアップされた(詳細はダムと環境を参照)。 こうした問題の解決と、環境保護思想の高まりを受けて1997年(平成9年)に改正された河川法において、河川環境の維持が重要な目的として挙げられ、可能な限り全てのダムにおいて河川維持放流が事実上義務付けられた。これにより従来は放流を行っていなかった発電専用ダムにおいても、河川維持放流が行われるようになった。河川維持放流水を利用した小規模な発電所を設ける例もある。ただし、こうした発電専用ダムでは仮に河川維持放流が行われても、目的に不特定利水が加わる訳ではない。これとは別に、漁業協同組合の要請による漁業資源保護のための河川維持放流を行うダムもある。
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