三波石峡の復活
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/22 06:27 UTC 版)
不特定利水については当初の目的には入っていなかったが、2001年(平成13年)より実施された「下久保ダム水環境改善事業」に伴う河川維持放流が目的として追加された。これはダム完成後、長年に亘り無水区間であった直下流にある国の天然記念物に指定された名勝・三波石峡(さんばせききょう)の清流復活が最大の目的である。 三波川帯の語源にもなった三波石峡は美しい結晶片岩と荒々しい流れが織り成す清流であった。美しい岩は「三波石峡四十八岩」と呼ばれ岩毎に名称も付けられ、洪水の際に土砂で磨かれることでその美しさを永続させ、高価な庭石として地元の特産品にもなっていた。ところが下久保ダム完成に伴い併設された下久保発電所により取水された水が峡谷を越えて下流に放流されるようになった。このためダムから発電所放流口までの約4km区間、すなわち三波石峡の大半で流水が途絶し、以後30年以上の間無水区間となった。これにより三波石は黒ずんで輝きを無くし、河原は雑草が繁茂して三波石峡は荒廃。名産品である三波石の品質低下にもつながることから峡谷の清流復活は地元の長年に亘る悲願であった。 1997年(平成9年)の河川法改正により、河川環境の維持が治水・利水に並ぶ法の最大目的に規定されたことから国土交通省や水資源機構は全国のダムにおいて河川維持放流設備を設置して河川環境の向上を図った。下久保ダムでは河川維持放流を行って三波石峡の清流を復活させる「下久保ダム水環境改善事業」に乗り出した。これはダム直下に下久保第二発電所を設けて管理用発電を行いながら維持放流を行い、流水を復活させると同時に土砂を下流に積んで洪水時に流下させるというものである。三波石は洪水による土砂で磨かれ、美しい緑色を保つことから地元では「洪水は三波石の化粧水」とも呼ばれており、かつての河川環境に近づけることを最大の目標とした。 こうした対策と、地元住民と共同で環境整備を行ったことによって三波石峡に清流が復活、徐々にではあるがかつての光景を取り戻そうとしている。現在では親水公園を設置し三波石峡に身近に触れる環境整備も行っている。なお、三波石は国の天然記念物に指定されているので、石の大小にかかわらず許可無く採取することは文化財保護法に基づき禁止されており、違反すると処罰される。
※この「三波石峡の復活」の解説は、「下久保ダム」の解説の一部です。
「三波石峡の復活」を含む「下久保ダム」の記事については、「下久保ダム」の概要を参照ください。
- 三波石峡の復活のページへのリンク