根本的な解決に向けて
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2005年(平成17年)、田代ダムの水利権更新が迫り流域自治体は発電用水利権の一部返還を求めた。田代ダムは富士川水系の早川に導水を行うため、山梨県も絡んだ広範囲な問題となり、電力会社と自治体だけの問題ではなくなった。このため国土交通省・静岡県・山梨県・大井川流域自治体(静岡市・川根本町・川根町)及び東京電力の5者による「大井川水利流量調整協議会」が結成され、田代ダムの水利権問題に対処することとなった。 塩郷ダムの水利権返還以後、河川開発を巡る周辺環境は激変し、河川環境に対する厳しい国民の視線が注がれるようになった。こうした風潮は1997年(平成9年)の河川法改正に影響を及ぼし、「河川環境の維持」が河川管理の重要な目標に挙げられた。この中で全ての電力会社管理ダムに対して河川維持放流の義務化が明記され、全国の電力会社は発電用ダムに放流バルブを設置して維持放流を実施した。この結果信濃川の西大滝ダム・宮中取水ダムのようにサケが戻りだした例も報告されだした。 東京電力は河川維持放流のための水利権一部返還に合意。流量についての交渉が行われた。だが地元自治体の納得できるだけの放流量ではなく、交渉は不調に終わった。このため大井川流域の住民は2万人の署名を集めて放流量の上乗せを要求、決起大会を開いて譲歩を迫った。これに対し東京電力は毎秒0.43トン - 1.49トンの放流、水利権の10年更新で再度呈示、流域自治体も納得して11月28日に交渉は妥結した。2006年より田代ダムより毎秒0.43トンの試験放流が実施されており、中部電力管理5ダム(畑薙第一・畑薙第二・井川・奥泉・大井川)及び長島ダムと連携して0.43トンの連携上積み放流を現在検討している。 こうして大井川の「水返せ運動」は塩郷ダム完成より45年経過し、大井川の無水区間は解消し流水は復活した。だが「川原砂漠」が完全に解消されたわけではなく、かつての大井川復活にはまだ道半ばである。
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