根本的問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/09 16:30 UTC 版)
「古代オリエントの編年」の記事における「根本的問題」の解説
史料の状態 ルーブル美術館や大英博物館で見られるような比較的良好なものもあるが、大部分の回収された表や碑文の状態は良くない。破損した一部のみが発見されたり、意図的に破砕されたり、天候や地中にうずもれた影響によって損傷したりしている。多くの粘土板は古代において焼成すらされておらず、加熱して固まるまで注意深く取り扱わなければならない。 作成された場所 考古学的な品々の作成場所は考古学者にとって重要な情報である。ただし、この情報は二つの要因によって得られないことがある。第一に古代の古い素材はしばしば原位置から遠く離れた場所で建材や充填材として再利用された。第二に、考古学的遺跡における略奪は少なくとも古代ローマ時代から行われている事実である。略奪された品々の出元は確定するのが困難か、あるいは不可能である 複数のバージョン 時が立つにつれ、シュメール王朝表のような鍵となる文書は何世代にもわたり繰り返し複写された。その結果として、複数のバージョンにおける時系列情報が相互に異なることがある。どのバージョンが正しいのか判断するのは極めて困難である。 翻訳 特に史料となる粘土板の多くが破損しているため、楔形文字文書の翻訳は非常に困難である。加えて、アッカド語やシュメール語のような基礎的言語についての我々の知識は時と共に進化しており、現代の翻訳は1900年頃の翻訳とは相当に異なる場合がある。古い翻訳の結果は全て、文書に書かれている実際の内容と正しく一致していない可能性があるということである。更に問題なのは、多くの考古学的な発見が未だに公刊されておらず、ほとんど翻訳されていないことである。個人的にコレクションされているような物は永久に翻訳されないかもしれない。 偏り アッシリア王名表のような重要な記録の多くは政府や宗教的機関の産物である。これらにはしばしば、王や神を称揚するための偏りが含まれている。ある王が昔の支配者の戦いや建設事業の名誉を自分の物としている場合もある。とりわけアッシリア人は記録を残す際、歴史において常に最良の状況を標榜するという文学的伝統を持っていた。これらの粘土板や碑文はそれでも価値があるが、このような偏りの存在を頭に入れておく必要がある。
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