東河内発電所
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なお、2001年(平成13年)よりダム直下左岸部(写真では右下の青い屋根の建物がある場所)に東河内発電所を新設した。この発電所は認可出力170kWと極めて小規模な発電能力であるが、河川維持放流を利用した水力発電であるというのが特徴である。大井川は1961年、第二ダムと同年に塩郷ダムが完成、それ以降下流20km区間にわたって大井川が枯渇した。この為流域の自治体・住民は中部電力に対し発電用水利権の一部返還を水利権更新時に要求、塩郷ダム直下の人文字デモなどで強硬に訴えた。 住民の声に後押しされた静岡県の要求により中部電力は1989年(平成元年)、毎秒3トン~5トンの河川維持放流を実施する事を表明。畑薙第二ダムにおいても毎秒0.55トンの維持放流が義務となり、これ以降無水区間は解消された。この維持放流を有効に活用すべく極めて小規模な水力発電施設の建設が発案され、中部電力としては初となる河川維持放流用発電所が建設された。これが東河内発電所である。ドイツのオズバーガ社によるクロスフロー水車が使用され、建設費を縮減している。 こうした河川維持放流を利用した小規模水力発電は、奥只見ダム(只見川)を始め多くのダムにおいて建設されるようになった。ダムの目的には入らないが、主に施設管理用の電力として使用される。こうした風潮は1997年(平成9年)の「京都議定書」締結以降、二酸化炭素排出量を抑制するためのエネルギー転換策の中で、小規模の水力発電が環境負荷も少ないという理由から注目されたことも背景にある。出力1,000kW程度以下のマイクロ水力発電は経済産業省によって推奨され、2002年(平成14年)5月には「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」、通称RPS法が施行された。 この中で滝や自然の段差、水車、上水道・下水道などを利用したマイクロ水力発電は「新エネルギー」として認められたが、既存のダムを利用したマイクロ水力発電はRPS法の除外対象となった。つまり既存のダムを利用したものは「新エネルギー」ではないという解釈である。従って法の趣旨に沿って厳密に言えば東河内発電所は1,000kW以下の出力基準に合致しているが、既存のダムからの発電であるためにマイクロ水力発電とはならない。だが、砂防ダムに付設したマイクロ水力発電は「新エネルギー」として認められるのに、河川法上のダムが認められないという矛盾に対し、マイクロ水力発電を推進している団体などからは批判的な意見もある。
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