素顔の植木等
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 06:11 UTC 版)
植木は自身を、少年時代多くの苦労をした割に、不思議と大変明るい性格であることは認めているが、それ以外はどちらかというと頑固で、こだわりや責任感の強い人間であると述べている。『植木等デラックス』でゲストのさだまさしが、「無責任男」を「植木さんが無理矢理お作りになったキャラクター」と述べたところ、植木は「そうなんだよ、世間はあれが地だと思っているんだ」と笑っていた。黒柳徹子は植木を「有責任男(うせきにんおとこ)」と評した。 植木の人気絶頂期に付き人兼運転手として接した小松政夫の証言によれば、植木は『仕方話』 の達人で場を盛り上げるトークが得意だったが、基本的に物静かで生真面目であり、一度も頭ごなしに怒鳴られたことがなかった。ただ女遊びやギャンブルは嫌い、その点は大変厳しく指導されたという。「貧乏人の倅」を自称しており、貰った給料は小遣い代を除いてすべて夫人に渡す、食事も「どん底でも平気だ」と語っていたことを裏付けるように、毎日同じおかずでも不満を言わないくらいだった。酒も飲まなかったが、これは体質的にアルコールを受け付けず奈良漬でも酩酊しかねないくらいだったためで、本人は酒を飲んで酔える人がうらやましいと漏らしていた。小松を採用したばかりの頃、小松が酒を嗜むと知った植木は、自宅のサイドボードの飾り物と化した、貰い物のウイスキーをさして「好きなものを飲んでいいから」と勧め、小松が好きな銘柄を答えると、封を切るやビールグラスに「カポカポカポ…」と並々と注ぎ、「さぁ飲みなさい」と差し出したという。さすがに困り果て「親父さん、水や氷はありませんか?」と尋ねると、「なんだお前、酒を飲むのにそんなものがいるのか」と、驚いたという。下戸ゆえに酒の飲み方を知らなかった事から起こったエピソードである。 そんな真面目な性格であるから「スーダラ節」の楽譜をはじめて渡された時には、「この曲を歌うと自分の人生が変わってしまうのでは」と真剣に悩んだ。父親に相談すると「どんな歌なんだ?」というので植木はスーダラ節を歌ってみた。激しい正義感の持ち主の父の前で歌ったあまりにふざけた歌詞に激怒されると思いきや、父は「すばらしい!」と涙を流さんばかりに感動した。唖然とする等が理由を尋ねると、「この歌詞は我が浄土真宗の宗祖、親鸞聖人の教えそのものだ。親鸞さまは90歳まで生きられて、あれをやっちゃいけない、これをやっちゃいけない、そういうことを最後までみんなやっちゃった。人類が生きている限り、このわかっちゃいるけどやめられないという生活はなくならない。これこそ親鸞聖人の教えなのだ。そういうものを人類の真理というんだ。上出来だ。がんばってこい!」と諭され、植木は歌うことを決意した。このエピソードは、植木が歌手として生きていく上で生涯の支えになったという。 ただし、植木には生真面目ながらも独特の雰囲気があった。日常の座談については左記の小松の証言以外にも、交友があった小林信彦が評伝『植木等と藤山寛美』で「無責任男とは別種のおかしさがあった」と述べ、更にあの独特の高笑いは「植木本来のモノ」であったという。また性格の明るさも成功前の貧乏時代からのもので、小林は「私生活がわからなかった」という。小松の紹介で植木と知り合った伊東四朗はゴルフに行った際のエピソードとして「植木さんはずっと世間話をしたままアドレスして打った。あんな人見たことない」、犬塚弘は「植木は基本的に物静かで生真面目だった。でも初対面時は、それこそ無責任男みたいに『よぉっ!』とあらわれて、こっちがあっけにとられているのをしり目に名乗りもしないで自分の気に入った落語の話をオチまでした」とかなり破天荒な面があったことを証言している。 植木自身は「男は道を自分で切り開け」という気持ちから、長男・廣司が「植木浩史」の名で歌手デビューをした時は一切のバックアップをしなかった。その長男は後に作曲家に転向、「比呂公一」名義でCMソングなどを中心に活動している。NHK-BSハイビジョン特集で放送された『スーダラ伝説 植木等 夢を食べつづけた男』では終盤に比呂が、クレージーのメンバー、犬塚弘、谷啓、桜井センリにも参加してもらい、『スーダラ節』のインストゥルメンタル曲を収録し、父・植木に贈呈する場面が登場するが、試聴後には「嬉しいねぇ」と一言呟き、目を潤ませている。 その一方で末娘の植木裕子がバレリーナとなり、ドイツを中心に活動して日本で娘が公演する時は舞台をよく見に行ったり、娘と一緒に舞台を見に行くことを関係者に語ったりしていたという。
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