第X因子
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第X因子(だいじゅういんし、英: factor X)とは、血液凝固カスケードを構成する酵素(EC 3.4.21.6)の1つである。セリンプロテアーゼの1種であり、PA clan (英語)に含まれる。Stuart–Prower因子と呼ばれることもある。
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第Xa因子
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血液凝固系について1960年代に提案されたモデルでは、2つの経路が存在すると仮定されていた。1つは組織因子が関係する外因系経路であり、もう1つは内因系経路である。両者は共通の経路に合流して第Xa因子/第Va因子複合体を形成し、カルシウム存在下でリン脂質表面に結合する。そしてプロトロンビンからトロンビンを生成すると考えられたのである。 近年では、細胞を考慮することで、より適切に血液凝固の仮定を説明するモデルが提案されている。このモデルでは、凝固は3つの段階から成る。第1段階では、組織因子を発現している細胞において凝固が開始される。第2段階では、その細胞によって生成されたトロンビンによって前凝固シグナルが増幅される。そして第3段階ではトロンビン生成が血小板表面に伝播する。第Xa因子は、この3つの段階全てにおいて重要な役割を担っている。 第1段階では、まず第VII因子が細胞表面の膜貫通タンパク質である組織因子に結合し第VIIa因子となる。その結果として生じる第VIIa因子/組織因子複合体は第X因子および第IX因子を活性化する。これにより生じた第Xa因子は第V因子と結合してプロトロンビナーぜを形成し、細胞表面で少量のトロンビンを生成する。 第2段階では、トロンビンの増幅が行われる。充分量のトロンビンが生成されると、血小板および血小板関連補因子が活性化する。 第3段階では、最終的なトロンビンの生成が行われる。第XI因子は、活性化した血小板の表面において第IX因子を活性化する。そして第IXa因子は第VIII因子と共にテンナーゼ複合体(tenase complex)を形成する。テンナーゼ複合体は第X因子を活性化するため、正のフィードバックとなり「トロンビンバースト」を来たすのである。1分子の第Xa因子は1000分子ものトロンビンを生成できる。[要出典]このトロンビンバーストは、フィブリンが重合して血栓を形成する上で重要である。 今日行われている多くの坑凝固療法の機序は、第X因子の合成または活性化を阻害する、というものである。ワルファリンはクマリンの誘導体であり、経口坑凝固薬として日本やアメリカ合衆国などで広く用いられている。ヨーロッパの一部の国では、他のクマリン誘導体であるphenprocoumon(英語)やacenocoumarol(英語))が用いられている。これらの薬剤は、ビタミンK依存的な翻訳後カルボキシル化を阻害することで、生理活性のある第II因子、第VII因子、第IX因子、第X因子の合成を妨げる。 ヘパリンや低分子量ヘパリンは、アンチトロンビンに結合して第IIa, Xa, XIa, XIIa因子を不活化する。ヘパリン-アンチトロンビン複合体の各凝固因子に対する親和性はさまざまであるが、第Xa因子に対する選択性が高いほど抗凝固能も高くなる。[要出典]低分子量ヘパリンは、未分画ヘパリンに比して、第Xa因子に対する選択性が高い。また、フォンダパリヌクスは、ヘパリンのうち第Xa因子との結合およびコンフォメーション変化に必要な糖鎖からなる五糖類であり、第Xa因子を選択的に不活化する。こうしたヘパリン等による抗凝固作用は、アンチトロンビンの存在に依存していることから「間接的」な作用と表現される。 近年、より特異的に、かつ直接に第Xa因子を阻害する薬剤が開発されている。たとえばrivaroxaban, apixaban, betrixaban, LY517717, darexaban (YM150), edoxaban および 813893 である。これらの薬剤は経口的に投与できることに加えて、理論上、現在の抗凝固薬よりも優れていると考えられている。効果の発現は速やかであり、遊離型の第Xa因子とプロトロンビナーゼ複合体を形成している第Xa因子の両方に作用する。
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