空港の対応
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 03:22 UTC 版)
航空交通管制では後方乱気流を考慮した飛行間隔を決定する際、最大離陸重量で区別しており、 通常300,000ポンド(136t)以上をヘビー(Heavy)として扱うが、A380の登場によりスーパー(Super)のカテゴリーを新設した。このため空中で着陸の順番待ちや離陸滑走において747などの従来の大型ジェット機以上に間隔が必要となり、空港の利用効率化にはネックとなる。 国際民間航空機関(ICAO)では、A380型機などの新大型航空機に対応する新たな飛行場等級「コードF」を設定し、滑走路や誘導路など基本施設の整備について細かな基準を設けている。それまではボーイング747-400型機などの大型ジェット機を想定したコードEが最高ランクであった。 旅客取扱施設においては、総2階建てという新型機の特性から、固定ゲートを利用して航空機に搭乗する際のPBB(パッセンジャー・ボーディング・ブリッジ:搭乗橋)の運用が大きな課題となる。エアバス社によれば、現在世界の空港で広く採用されている、1機あたり2本のPBBで十分対応可能であるが、メインデッキ2本使用で140分、アッパーデッキ、メインデッキ各1本、計2本使用で90分のターンアラウンド(便間作業)タイムを設定している。アッパーデッキ1本、メインデッキ2本、計3本のPBBが使用出来れば、さらに乗降に必要な時間や機内清掃など作業時間なども短縮されるため、乗客の利便性がさらに向上するとしている。このほか、ゲートラウンジの拡張や、駐機中の航空機に電気や空調を供給する地上動力装置(GPU)の能力アップなどが必要となる。 日本の空港では、成田国際空港が2020年時点で第1ターミナルビルの15番・26番・45番・46番・54番、第2ターミナルビルの66番、96番が対応している。東京国際空港(羽田空港)は、第3ターミナルの107番スポットが該当する(ただし、混雑する昼間の定期乗り入れは後方乱気流の問題から、国土交通省は認可しない方針だが、成田空港閉鎖時の代替着陸による緊急運用を見込んでいる。詳細は羽田空港発着枠を参照)。関西国際空港は第1ターミナル国際線の11番、31番が該当する。首都圏以外でも、2014年11月時点で中部国際空港、新千歳空港が運用可能空港となっている。但しチャーター便での貨物未搭載、国内短距離飛行による燃料削減などの機体重量制限のうえ滑走路タキシーダウン運用し駐機場周辺支障の少ないオープンスポット限定という変則運用で那覇空港や下地島空港でも運航可能となっている。 シドニー国際空港などではA380に対応するため、地盤を固めたり、ボーディングブリッジを減らしたりなどの処置を行った。そのためスポット運用がぎりぎりになり、他機がスポットが空くのを待つという光景も見受けられた。 また、ブラジルで2014 FIFAワールドカップが開催される際、エールフランスが大会期間中に需要の増加が予想されるサンパウロ国際空港へ同型機の就航を計画していたが、ブラジル政府航空当局が事前に同空港を調査したところ、前述の飛行場等級コードFの規定を一部満たせていない可能性があり、改修工事の目途も立たないことから、当局が大会期間中の同型機の同空港への就航は認可しない方針(大会後改修対応)を明らかにするなど、充分に対応しきれない空港もある。 A380(その他総2階席を持つ旅客機)を発注する航空会社が増えれば、空港側の施設改修も期待できるが、航空会社側では空港が対応しない限り就航路線が増やせず、空港側も単なる見込みで費用をかけて改修するわけにはいかないため、本機への対応改修を実施するのは、国家を代表する国際空港や国際線のメインハブ空港に留まっている。A380の登場以降は燃費の良い双発中型機が主流となっており、ボーイングがA380と777-300ERのギャップを埋めるべく開発した747-8ですら、発注がないほど低迷していた中、2019年2月になってA380の生産中止を発表した。 生産中止になったことから、今後A380の運用の増加が見込めず、運航効率の良い中小型機やA380のような3クラス500席級の4発エンジン大型機ではなく、B777やA350のような3クラス300~400席級の大型機がトレンドとなっている航空情勢下で、A380を凌駕する超大型旅客機が登場する可能性は極めて低いため、空港側が新たにA380のような超大型機に対応できるように改修する可能性も極めて低い。
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