発生過程と原因物質
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/25 16:09 UTC 版)
「オフフレーバー」の記事における「発生過程と原因物質」の解説
オフフレーバーが発生するタイミングには、製造時、流通時、貯蔵・販売時、そして調理時に大別できる。 食品の原料として最も重要なものの一つに、水があげられる。水源に放線菌や藍藻が繁殖する事により生じる2-メチルイソボルネオールやゲオスミンは、「土臭さ」や「カビ臭」、「墨汁臭」と表現される匂いの原因となる。給水機のパッキンや穀物がペニシリウムやアスペルギルスに汚染されると、カビ臭の原因物質である1-オクテン-3-オールや3-オクタノンが発生する。食品製造ラインの洗浄に用いられる殺菌剤が食材と反応して生じる2,4-ジクロロフェノールや2,6-ジクロロフェノールは「カルキ臭」の原因となる。加熱工程で生じるフラン-2-イルメタンチオールやベンジルメルカプタンは、低濃度であれば好ましい焙煎香となるが、高濃度では「加熱臭」と呼ばれる異臭に変わる。 紅藻の一部には、海水中の臭素を採り入れ、ウニなどから自身を防御する摂食阻害活性物質として作用するブロモフェノールを産出するものがある。食物連鎖の過程で2,4-ジブロモフェノールや2,6-ジブロモフェノールとなり、魚介類の「消毒臭」として現れるケースがある。 消毒臭のクレームのあった漬物からは2,4-ジクロロフェノールが検出された。残留農薬のポジティブリストなどから、材料の野菜に使用された殺虫剤のプロチオホスのリン―酸素の結合が切れたことにより生じたものと推測された。コンテナ輸送時にジメチルトリスルフィドおよびジメチルテトラスルフィドによる臭気汚染が発生したケースでは、コンテナの輸送履歴を調べたところ過去に積載された硫黄系農薬が原因であることが明らかになった。異臭の原因物質はごく微量でも感じ取れるため、残留農薬においては毒性より異臭が問題となることがしばしばある。 食品の原料・製品・包装資材の輸送や、倉庫においてフォークリフトを使用した荷役を行う際には、木製のパレットが多く使用されてきた。このパレットに防黴剤として使用された2,4,6-トリクロロフェノールが、薬剤耐性を持つトリコデルマやフザリウムなどのカビの代謝によって発生した2,4,6-トリクロロアニソール(2,4,6-TCA)は1pptの嗅覚閾値を持つ強力な異臭物質で、食品業界は大きな打撃を受けた。このため、パレットは合成樹脂製に置き換えられることになった。2,4,6-TCAはワインのコルクからも発生し、「コルク臭」と呼ばれるオフフレーバーの原因ともなった。 貯蔵・販売の場面では、常温で貯蔵しためんつゆに香料として含まれるバニリンがアリシクロバチルス(英語版)によりグアイアコールに変換され、「薬品臭」が生じた事例や、家庭で防虫剤と近接して保管されていたカップ麺に、ポリエチレン製の包装材料を透過したパラジクロロベンゼンによる「移り香」が生じた事例がある。牛乳やビールを直射日光のあたる状態で保管すると「日光臭」呼ばれるオフフレーバーが生じることが知られている。牛乳ではメチオニンが3-メチルチオプロパナールに、ビールではイソフムロンが3-メチル-2-ブテン-1-チオールに変換されることに起因する。 調理の際の焦げは異臭の原因となる。かつて学校給食で出されたカレーに「薬品臭」がするとのクレームがあった。分析したところクレゾール類が検出され、調理時の焦げが原因であることが分かった。
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