現在のイスラム教徒と異教徒との関係
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「イスラム教と他宗教との関係」の記事における「現在のイスラム教徒と異教徒との関係」の解説
現在ムスリムが、非ムスリムが多数を占める地域でまとまって居住しているのは欧州やインドなどである。欧州においては長らくキリスト教至上主義が強くヴェストファーレン条約以降も完全な信教の自由が保障されたのは原則としてキリスト教内部の各宗派に対してのみであったが、20世紀に入ってユダヤ教徒やイスラム教徒など他宗教をも含めた完全な信教の自由が実現し、民主主義の一応の完成を見た。故に欧州に居住するムスリムは法的には何ら差別を受けない。しかし現実には民間レベルでの差別が根強く残存しており、またそれに反発してイスラームに縋る若者がテロに走るなどの問題も起こっている。インドの憲法において信教の自由が完全な形で保障されているが、現実にはヒンドゥー教徒のイスラム教徒、シーク教徒への圧迫が存在しており、何度か三者間での大規模な騒乱が起こっている。またビルマでは仏教徒の勢力が強く、イスラム教徒やキリスト教徒は二級市民としての扱いを受けている。仏教への改宗圧力が存在し、モスクの新設や修理にも強い規制がある。 ムスリムが多数派を占める地域での非ムスリムとの共存も大きな問題を抱えている。前述のとおりイスラム法ではイスラームの絶対的な優位が規定されており、イスラム教徒が多数派を占める地域のイスラム法学者は現在でもイスラム教徒が多数を占める国家では異教徒の人権は制限されて当然であるという考えを持っている者が多い。無論リベラリストのムスリムはこれらの地域にも存在しており、これらの不平等を批判しているが主流からは程遠いとされる。[要出典]これらの国々における異教徒への不平等な取り扱いは非ムスリムから強く批判されている。 イスラム教国の中でもっとも異教徒への人権侵害が激しいのはイラン、サウジアラビア、アフガニスタンなどであり、これらの国々では未だに異教徒はズィンミーさながらの扱いを受けているとの主張もある。日本発の新宗教団体として最大の海外組織を持つ創価学会もアラビア半島ではアラブ首長国連邦のドバイに本部を置く「湾岸創価学会」が周辺諸国を兼轄する形になっているが、これらの国では事実上活動できない状況に追い込まれている。 詳細は「創価学会#他の宗教との関係」を参照 一方イスラム教国・準イスラム教国であっても非正統派が権力を握るシリアや政教分離が徹底したトルコ、アルバニア(キリスト教徒の勢力も強い)、キリスト教徒とイスラム教徒の勢力が拮抗したレバノンなどではおおむね信教の自由が保障されている。 ムスリムと非ムスリムの婚姻も地域によってその可否が分かれる。西ヨーロッパ、中央アジア、インド、トルコを含むバルカン諸国などのムスリムは必ずしもイスラム法の規定にしたがっておらず、イスラム法で明確に禁止されているムスリム女性と異教徒男性との結婚も存在している。但し地域による違いもあり、保守的なムスリム家庭の場合駆け落ちを強いられることがある。 イスラム法の厳格な適用が行われる中東では、男性のみならず女性も結婚に際しイスラムへの改宗を強制される。これはリベラル派のイスラム教徒と非ムスリムから重大な人権侵害であると指摘されているが、保守派ムスリムの抵抗が根強く法改正にはほど遠い。 日本は憲法において信教の自由が保障されており、いかなる形であれ宗教の強制は許されない。しかし現実には日本でもイスラム教徒が結婚に際し相手側に改宗を強制することがある。日本のイスラム教徒は主としてパキスタンなど、イスラム原理主義的な思想を持つ国から来ている場合が多いためである。また、このような場合子供の信教の自由も制限されるという意見もある。
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