演奏機構(アクション)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/26 05:39 UTC 版)
「グランドピアノ」の記事における「演奏機構(アクション)」の解説
演奏機構(アクション)は鍵の力をハンマーへ伝達し、ハンマーが弦を打つ。ハンマーは木製の芯と長繊維羊毛で作られた圧縮フェルトから成る。ハンマーは下側から弦を打つ。ダンパーはハンマーが打弦する直前に弦から持ち上げられる。鍵を放すと、ダンパーは開始位置に戻り、音を減衰させる。グランドピアノのアクションの部品はセイヨウシデ(英語版)、カエデ、カバ、合板、また時にはプラスチックで作られている。 1700年頃、バルトロメオ・クリストフォリは初めてチェンバロの撥弦機構をハンマーによる打弦機構に置き換えた。これにより飛躍的に小さな音量(ピアノ)から大きな音量(フォルテ)を使った演奏が可能になった。これがピアノフォルテ(またはフォルテピアノ)の発明である。1825年、セバスチャン・エラールは最小限の鍵の動きで反復的な音を可能にするいわゆるレペティション機構を作った。レペティション機構は今日までグランドピアノにほぼ例外なく搭載されているが、アップライトピアノではめったにない。これ以後、グランドピアノの機構の改良はごくまれにしかなされていない。 ブナ材から成る鍵は、まず板目材を接着し鍵盤の大きさの一枚板に加工し、その後帯のこで単一の鍵へと分割される。鍵の下にある鍵盤骨組は鍵を格納するために使われ、その上にアクション機構が組み立てられる。鍵盤骨組は棚板の上にあり、ウナ・コルダ機能のために横に動かすことが可能である。したがって、全体の演奏機構は、鍵盤カバーと両側の木製ブロック(拍子木)を何段階かの単純な工程で取り外した後に取り外すことができる。知らない人はこの工程に大変驚かされる。グランドピアノの演奏機構は約1万1千個の部品を含み、これは現代の自動車の部品の2倍である。 1870年、セオドア・スタインウェイは鍵の上に全てのアクション部品を格納するための管状金属製フレームを考案し、特許を取得した。真鍮製の管(アクションブラケットのレール部位)には木材が圧入され、さらにその上にハンマーバットとレペティションナットがねじで留められる。これにより(それ以前の機構と比べて)安定性が増した。真鍮製の管はフレームの突起にはんだづけされる。しかし、今日は木材の断面を増大させることによって、そして1960年代以降のアルミニウム材を用いた日本のグランドピアノ製造業者の仕事によって、これに匹敵する、また時にはそれを越える安定性を持つはずである。 1960年代以降、レペティション機構や持ち上げ機構、またはその中の部品に木の代わりにより新しい素材を使おうという広範な試みがなされてきた。ニューヨーク・スタインウェイは1962年から1982年までブッシングにフェルトの代わりにテフロンを使用した。しかしながら、木製部品とテフロンとで季節に伴う寸法の変動が異なるためカチっと音がする不具合を生み、購入者と技術者から不満の声が上がった。ニューヨーク・スタインウェイはこれを不具合と長年認めなかったが、20年たってようやくテフロンの使用を中止した。 1980年代以降、カワイはプラスチックの部品(一部は炭素繊維強化プラスチック)とアルミニウムレールを使ったグランドピアノのアクションを開発してきた。今日の「ウルトラ・レスポンシブ・アクション(日本国外での名称はミレニアム・アクション)」システムおよびヤマハの競合製品は市場でその地位を確立し、信頼できると考えられる。ヨーロッパの部品供給業者はフェルトと木製の部品を信頼し続けている。 ニューヨーク・スタインウェイは近年(2011年)自社でのアクションの製造を中止し、ハンブルク・スタインウェイと同じ供給元(鍵盤はレムシャイトのクルーゲ社、アクションはスタインウェイの構造を引き継いだレンナー社製、ハンマーヘッドはレンナー社製)から部品を入手するようになったため、グランドピアノの全ての部品、製造工程を完全に自社で行っている製造業者はもはや存在しないと言うことができる。アクションの部品は現在全て他の製造業者から購入されている。 鍵盤機構における最新の発展は炭素繊維強化プラスチックで作られたレペティションおよびハンマーである。この演奏機構は米国のWessell, Nickel & Gross社と中国のParsons Music Ltd. (柏斯琴行)がグランドピアノおよびアップライトのために提供している。
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