海外の「LEVEL」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/24 14:40 UTC 版)
「ステージ (コンピュータゲーム)」の記事における「海外の「LEVEL」」の解説
海外では後によく使われる「level」という表現も、1980年台序盤のアメリカではまだ一般的ではなかったらしく、1981年末に出版された、トム・ハーシュフェルドによるアーケードゲームの攻略本『How to Master The Video Games』の冒頭に初心者向けの説明が設けられているが、その中で「面」にあたる概念の説明にまず出てきたのは「screen」だった。これは日本における「1画面目」が「1面」になったのと同様の発想からと思われる。その後に他の呼び方についても述べられているが、「round」、「mission」、「sector」、「attack」、「wave」はあるが「level」は無い。一方で同書の『パックマン』の攻略に、「SYMBOL OF LEVEL」という見出しがある。パックマンではボーナスとなる「フルーツターゲット」が、区切りである「ラウンド」を進めると変化していき、フルーツの種類が要求される腕前のシンボルとなるという趣旨だった。1982年出版のパソコン用アクションゲームの作り方の解説書では、『パックマン』の優れた点について、以下のように紹介している。 「The game also offers the visual feedback of the number of remaining dots to be eaten at each level. And since clearing each individual level is an immediate goal, even beginners believe a level can be cleared.」「このゲームはまた、そのレベルで食べるべきドットがあといくつあるかを、視覚的に示している。そして、それぞれのレベルのドットを食べ尽くすのが当面の目標であるので、初心者でもレベルをクリアできると考えられる。」 — ジェフェリー・スタントン、『Apple Graphics & Arcade Game Design』 このような「level」の使い方は、1980年末からアーケード版の『パックマン』をアメリカで正式に販売したミッドウェイ社のチラシには無かった。ここから、『パックマン』の面を「level」とする表現は、1981年から1982年ごろに、プレイヤーたちの間から広まり始めたと考えられる。 1981年秋に登場したアタリ社のアーケードゲーム『テンペスト』では、スタート時により難しい場所を選ぶと、終了時により高いボーナス点を得られるというシステムになっていた。同作の画面上ではその場面のことを「LEVEL 1」、「LEVEL 2」と表示していた。業者向けの説明書やチラシでは、この仕組みに関する説明で、「levels of play」あるいは「skill levels of play」などと表現されており、これは「難易度」に近い意味の言葉として使われたことがわかる。同年エキシディ社から発表され、翌1982年初頭に発売されたアーケードゲーム『Venture』は、ダンジョン探検型ゲームの最初期のものであり、一つ下の階に行くごとに画面上の表示が「LEVEL ONE」、「LEVEL TWO」と一つずつ増すようになっている。ここで言う「level」は、「ダンジョンの階層を数える数詞」と考えられる。英語の「level」には「平らな」、「同じ水準」といった意味があり、同じ階層を「level」と表現することは普通に結びつくもので、1980年台序盤のコンピュータRPGの急激な広まりに加え、前述の難易度としての表現が複合的に影響しあって、『パックマン』の面を「level」とする表現につながったと考えられる。 1982年末にBig Five Software社から登場した『Miner 2049er』では、最初に開発されたAtari 8ビット・コンピュータ用では、ステージ名は「STATION」となっていた。これは、鉱山をモチーフにしていたことから、鉱夫の詰め所になぞらえた表現と考えられる。一方で、他社によって移植されたApple II用では、「LEVEL」となっていた。この2つは説明書にも違いがあったが、どちらも「1つの画面内の足場の高さ」を「level」と表現している部分があり、「水平な通路」という表現が噛み合わなくなってきている。1983年春には、アクションパズルゲーム『ロードランナー』がApple II用に登場する。同じ鉱山をイメージさせ、いくつもの足場があるなど似た部分もあったが、そこでは最初から「LEVEL」表記になっていた。大量のステージがあることも特徴だったが、ジャンル的に必ずしも後のステージに行くほど難しいとは限らず、「同じ階層」や「難易度」とも異なる、日本で言う「面」のような使い方が生じてきたと考えられる。 とはいえすぐに「level」が定着したわけでもなく、1984年に登場したアクションパズル『バルダーダッシュ』では、「level~」が全てクリアした後の「~周目」といった意味で使われている。1985年には海外版ファミコンNintendo Entertainment System(NES)が発売されるが、初期のソフトの説明書には「ステージ」という意味での「level」というものは見られず、ほぼ「round」か「screen」に限られていた。しかしその後、北米任天堂以外からもNES用ソフトが発売されるようになると事情が変わってきたらしく、例えば『バブルボブル』では、画面上にはアーケード版と同じく「ROUND」と表示されるのに、説明書では「level」が使われた。また1987年の末には、徳間書店の『スーパーマリオブラザーズ完全攻略本』が英訳され、北米任天堂の公式ファンクラブ向けに配布されたが、元の本では「ワールド1/エリア1」と書かれているところが、英語版では「WORLD 1/LEVEL 1」となっていた。この頃にはアメリカのプレイヤー達には「level」の方が定着していたとみられる。『スーパーマリオ』にしても、平面的な横スクロールのゲームでありながら、地下や雲の上など立体的な広がりを印象づけた作品でもある。日本でいう「面」と英語圏の「level」は、それぞれ出どころは異なる言葉なのに、やがて3次元的なゲーム空間についても普通に使われるという、互いによく似た変化を遂げたと言える。
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