活版印刷の出現と著作特権の出現
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/10/01 05:45 UTC 版)
「著作権の歴史」の記事における「活版印刷の出現と著作特権の出現」の解説
大量に書籍の複写を作成できる印刷機の出現は、文学作品の出版がお金になり、それらの作品の作成がお金になるという可能性を生じさせた。しかし、同時に多数の印刷機が同時に、制限なく様々な作品の印刷を始めるため、競合する印刷物の作成や、無許可での複写が行われるようになった。この状況は、本来の作品の作者、編集者、印刷業者の利益の減少だけでなく損失も引き起こし、更なる事業の継続を断念させるものでもあった。印刷機による複写は、これまでの筆記者や代書者が行なっていたような、時間、お金、能力が必要なものではなく、印刷機といくらかの技量があればできるものであったからである。 この当時、作家やその後援者などの代理人への権利の保護は、作品ごとに特許の請求として行われた。エリザベス・アームストロング (彼女は、1965年にゴードン・ダフ・プライズ (Gordon Duff Prize) をボドリアン図書館の管理人より受けた人物で、16世紀の、フランスと低地諸国における印刷業者の特権と著者の特権に関するエッセイを書いた) によると、「ヴェネツィア共和国は1486年に、その最初の特権をある本に与えた。これはこの町の歴史、マルクス・アントニウス・コシウス・サベリカスのRerum venetarum ab urbe condita opusによると珍しいケースであった。」「ヴェネツィアは1492年に特定の本に対して特権を与え始めた。最初は、その年の1月3日に、パドヴァ大学の教会学の教師であるペトルス・フランシスカス・デ・ラベンナに与えられた。彼は記憶力を鍛える方法を提案し、それをFoenix77と言う題名の本に書いた。」 最初に著作権法を制定したのは、このイタリアのヴェネツィアであった。ヴェネツィア共和国において、フィレンツェ公爵とレオ10世教皇や他の教皇は、古典的著者の作品に特定の期間 (稀に14年を越え)、特定の印刷業者に、印刷を行う排他的特権を何度か与えた。これは印刷業者の利益を大きく守るというものではなく、どちらかと言うと公共の利益、すなわち、一部の編集者と印刷業者が文学的な投資を行うことを促すためのものだった。 イングランドにおける最初の著作権特許は1518年に与えられ、リチャード・ピンソン、王室の印刷室である、ウィリアム・カクストンの後継者に与えられた。この特許は2年間の独占を与えた。この日付は、フランスで最初の特許が与えられてから15年後のことであった。初期の著作権特許は、「独占権」(monopolies) と呼ばれ、特にエリザベス女王の治世に制定された。彼女は、塩、皮、石炭、石鹸、カード、ビール、ワインなど一般的に使用されるものに独占権を頻繁に許可した人物である。この慣習は、一部の例外を除き、1623年に独占権の法律が制定されるまで続いた。その例外の例が、特許 (patent) である。1623年以降、出版社に許可されていた文字の特許は大衆に解放された。最終的に出版業の独占は1710年のアン法により終了し、この法律はイギリスの植民地にも影響を及ぼし、将来のアメリカ合衆国に影響を与えた最初の著作権に関する法律であると考えられる。 イギリス以外の国においても著作権特許が使用された。ドイツにおいては、記録上明確なものとして、1501年に、Sodalitas Rhenana Celtica の名の団体に対し、御前会議で、ガンダースハイムのロスヴィータの戯曲の出版物に著作権特許が与えられた。また、1512年に帝国の特権は歴史家ジョン・シュタディウスが出版する (予定の) もの全てに対して与えられた。この例では、既存の出版物のみでなく、まだ出版されていない書籍の保護のために特許が出された最初のものである。1794年に、ドイツにおける著作権の法律が、プロシアの議会で制定された。このプロシア議会はヴュルテンベルクとメクレンブルクを除いて承認されていたため、この法律の下で、全てのドイツの著者とフランクフルトとライプツィヒにおけるブックフェアーに参加している出版社により紹介された外国の著者の作品は、ドイツの国内全体で、無許可の再版に対して保護されることになった。このベルリンでの法律の制定は、国際的な著作権の最初の一歩であると考えることができる。少なくとも1815年まで、国家間の法律の条文の施行は、難しいことがわかっていた[要出典]。
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