活版印刷発明の影響
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/28 01:47 UTC 版)
印刷、特に活版印刷の発明は世界にいくつもの巨大な影響を与え、この影響を総称して「印刷革命」と呼ばれることすらある。まず直接的な影響としては、活版印刷によって本が大量に供給されるようになり、それまで非常に高価だった書籍が庶民でも手に入るようになったため、知識の蓄積および交流がそれまでの社会に比べ格段に進むようになり、宗教改革をはじめとする数々の社会的変革を引き起こした。 印刷はまた、書物の規格化をももたらした。写本の場合誤記や文章の欠落は珍しいことでは全くなかったが、活版印刷は事前チェックが可能であり、もし誤りがあった場合も修正が容易であるため、誤植の可能性を加味しても手書き本に比べはるかに正確な文章が記されるようになった。同時期に発達した版画と活版印刷の組み合わせは、元の情報の正確な反復を可能にし、信頼できる正確な図版および文章の蓄積は科学革命の基盤となった。印刷によって書籍に整った文字が並ぶようになったことは、それまでの手書き本に比べて読解を容易なものとし、識字の有用性をより高めることとなった。こうした書籍の氾濫は、貴重な本を一人の人間が読み上げそれを周囲の大勢の人間が拝聴するという形で行われていた知識の伝達システムを変化させ、聴覚に代わり視覚が優位に立つ新しい方法が主流となった。 このほか、それまでの写本時代にはほとんど考慮されていなかった著作権が、活版印刷の開始後ほとんど時をおかずして各国で次々と保護されるようになっていったことも印刷の大きな影響のひとつである。活版印刷の発明以前においては写本自体が写字生の確保などで非常に高コストなものであり、本自体も手書きのため発行量が非常に少なく、著者に写本の際なんらかの報酬が入ることはほとんどなかった。しかし活版印刷によって大量の書籍が一度に生産できるようになると、他者の出版物を無断で複製し再出版することが横行するようになり、著者並びに出版業者に対する権利の保護が急務となった。1518年にイングランドにおいてヘンリー8世が出版業者のリチャード・ピンソンに対し彼の出版物の他者再刊禁止を認めたのは、こうした動きの初期の例である。
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