河川局長通達による分類
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「日本のダム」の記事における「河川局長通達による分類」の解説
指定ダムの詳細については電力会社管理ダムを参照。 もう一つは1966年(昭和41年)5月17日に当時の建設省河川局が実際の河川管理を行う各地方建設局と都道府県知事に宛てて通達した、建設省河川局長通達・建河発第一七八号がそれである。この通達においては河川法で規定された「ダムに関する特則」の運用規定をより細かく定め、河川法第26条の許可を受けて設置される高さ15.0メートル以上のダム、すなわち利水ダムについて具体的なダム名を挙げて分類している。分類については前述の河川法施行令第23条を基本に、放流による下流への影響度、堆砂による上流への影響度、及びゲート運用など放流操作の複雑さに応じて第一類から第四類までダムを分類している。 詳細については下記の表に記す。おおむね第一類は大容量貯水池を擁する発電専用ダムが、第二類は大河川の中流部に建設されているダムが、第三類はゲートの数が多いダムが対象となっている。なお第四類については小規模なダムのほか、多目的ダム・治水ダムといった洪水調節機能を有するダムが指定されている。以降、利水ダムは完成後いずれかの分類に指定されるが、ダムを取り巻く周辺状況の変化によっては分類指定が変更されることがある。例えば静岡県の天竜川に建設された秋葉ダムは通達発令当時には第一類に指定されていたが、現在は第三類に指定が変更となっている。この分類については各事業者がそれぞれの管理ダムにおける指定状況を把握しているが、日本全国にあるダム全てを明記した文献は明らかになっていない。 分類解説指定ダム第一類ダム 設置に伴い通常時に比べて洪水流下速度の増大などが発生し下流の洪水流量が著しく増加するダムで、結果発生する水害を防止するために増加流量を調節することができると認められる容量をダム湖に確保することで、洪水に対処する必要があるダム。 雨竜第一(雨竜川)、奥只見・田子倉(只見川)、須田貝(利根川)、奈川渡・水殿(犀川)、高瀬・七倉(高瀬川)、牧尾(王滝川)、御母衣(庄川)、畑薙第一・井川(大井川)、佐久間(天竜川)、風屋(熊野川)、池原(北山川)、長沢(吉野川)、上椎葉(耳川)、一ツ瀬(一ツ瀬川)などのダム。 第二類ダム 堆砂によりダム湖上流の河床が上昇したダム、またはダム管理者が貯水池の敷地として所有権を取得した土地面積の広さが十分でないダムで、洪水時にその上流の水位上昇による水害を防止するため、ダム湖の水位を予備放流水位として夏季に事前に放流して水位を下げ、洪水に対処する必要があるダム。 上郷(最上川)、新郷(阿賀野川)、片門(只見川)、泰阜・平岡・船明(天竜川)、落合・大井・笠置(木曽川)などのダム。 第三類ダム 貯水池の容量に比して洪水吐の放流能力が大きいダムか、あるいは洪水吐ゲートの操作方法が複雑であるダムで、ダム湖の水位を予備放流水位として夏季にあらかじめ放流し水位を下げ洪水に対処することが、水害の防災上において適切と認められるダム。 鹿瀬(阿賀野川)、黒部(鬼怒川)、二居(清津川)、宮中取水(信濃川)、稲核・生坂・水内(犀川)、菅平(神川)、畑薙第二・奥泉(大井川)、秋葉(天竜川)、浜原(江の川)、夜明(筑後川)、瀬戸石(球磨川)などのダム。 第四類ダム ダム湖の水位を常時満水位(ダム湖が満水になる通常の水位)として洪水に対処しても、放流による流域への影響がなく水害の防災上支障がないダム。 聖台(宇莫別川)、大鳥(只見川)、玉原(発知川)、間瀬(間瀬川)、黒又川第一・黒又川第二(黒又川)、カッサ(カッサ川)、野反(中津川)、田代(大井川)などのダム。および治水目的を有する多目的ダム・治水ダム。 この項目は冒頭に記され、指定ダムについては最後に記されている。残りの内容についてはおおむね河川法施行令と同一であるが、より細かい規定がされている。なお、こうした二つの規定により利水ダムは河川が持つ従前の機能を維持することが求められ、各ダム毎に操作規定を定めて対処する必要が生じた。積極的な治水の責任はないものの、多目的ダムなどと連携して洪水調節を行うことがある。 一例として2006年(平成18年)7月に長野県を襲った平成18年7月豪雨において、信濃川水系最大の支流である犀川の氾濫を防ぐため、特定多目的ダムである大町ダム(高瀬川)と東京電力が管理する犀川上流・高瀬川上流の発電用五ダム連携治水操作がある。犀川上流の奈川渡ダム(第一類)、水殿ダム(第一類)、稲核ダム(第三類)と高瀬川上流の高瀬ダム(第一類)、七倉ダム(第一類)は発電目的しか持たないが、犀川の水位が危険な状態に陥ったため河川管理者である国土交通省北陸地方整備局と長野県(当時の管理者は田中康夫長野県知事)の要請を受け空き容量を利用して上流からの洪水を貯留し特例の洪水調節を行った。この結果犀川流域では堤防決壊や越流による浸水被害をほぼ皆無に抑えている。
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