民法改正前の判例
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不法行為の時から20年を経過したときの20年の期間について判例は除斥期間と解釈してきた。 除斥期間の性質をもつとする判例最高裁判所第一小法廷判決1989年(平成元年)12月21日 724条後段の不法行為に基づく損害賠償請求権に関する20年の期間制限は除斥期間であり、当事者が援用しなくても裁判所は請求権が消滅したものとして判断すべきである。 しかし、除斥期間と解釈すると被害者の相続人が被害者の死亡を知らないまま20年が経過した場合など保護されず不都合である。除斥期間の性質から生じる不合理性を回避するため次のような解釈が判例で示されてきた。 除斥期間の進行の停止に関する判例最高裁判所第二小法廷判決1998年(平成10年)6月12日 724条(不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)の20年の期間制限について158条(未成年者又は成年被後見人と時効の停止)の法意から期間延長を認めた判例(最判平10・6・12民集52巻4号1087頁)。 不法行為の被害者が不法行為の時から20年を経過する前6箇月内において右不法行為を原因として心神喪失の常況にあるのに法定代理人を有しなかった場合において、その後当該被害者が禁治産宣告(現在の成年後見開始決定)を受け、(成年)後見人に就職した者がその時から6箇月内に右不法行為による損害賠償請求権を行使したなど特段の事情があるときは、158条の法意に照らし、724条後段の効果は生じない。 最高裁判所第三小法廷判決2009年(平成21年)4月28日「足立区女性教師殺人事件」 26年前に失踪した女性が、加害者の自首により26年後に遺体が発見され殺害が判明した事案で、死亡の事実を知りえない状況を殊更に加害者に作出され、相続人がそのような事実を知ることが出来ず、相続人が確定できないまま20年が経過した場合に、その後相続人が確定した時から6ヶ月以内に、損害賠償請求をしたときは、160条の法意に従い、特段の事情があり、除斥期間の効果は生じず、相続人が確定した時から6月経過するまで時効は完成しないとした。 除斥期間の起算点に関する判例熊本地方裁判所判決2001年(平成13年)5月11日「らい予防法違憲国家賠償訴訟」 違法行為終了時において、人生被害を全体として一体的に評価しなければ、損害額の適正な算定ができない。本件において、除斥期間の起算点となる「不法行為ノ時」は、らい予防法廃止時(平成8年4月1日)と解するのが相当である。 最高裁判所第三小法廷判決2004年(平成16年)4月27日「三井鉱山じん肺訴訟」 民法724条後段所定の除斥期間は,不法行為により発生する損害の性質上、加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する場合には、当該損害の全部又は一部が発生した時から進行する。 最高裁判所第二小法廷判決2004年(平成16年)10月15日「関西水俣病訴訟」 水俣病による健康被害につき、患者が水俣湾周辺地域から転居した時点が加害行為の終了時であること、水俣病患者の中には潜伏期間のあるいわゆる遅発性水俣病が存在すること、遅発性水俣病の患者においては水俣病の原因となる魚介類の摂取を中止してから4年以内にその症状が客観的に現れることなど判示の事情の下では、上記転居から4年を経過した時が724条後段所定の除斥期間の起算点。 最高裁判所第二小法廷判決2006年(平成18年)6月16日「北海道B型肝炎訴訟」 乳幼児期に受けた集団予防接種によって、B型肝炎ウイルスに感染しB型肝炎を発症したことによる損害につき、B型肝炎を発症した時が、724条後段所定の除斥期間の起算点となるとされた事例。
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